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最上部にて…

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子育て? ⑬

 イチゴ畑の最下段まで下りた二人と一匹は、端から順に実の様子を見ていく。尤も、少年はイチゴ自体目にするのは初めてなので、オミがざっと目を通して、赤く色付き収穫に適したものを見つけ出したら少年に教え、少年が収穫する形で作業を勧めている。
 オミに教えられながら幾つか収穫していると、じきに少年が不思議そうな表情をし、手に取ったイチゴをマジマジッと見つめるようになる。
 「どうしたの?」
 オミが何かあったかと声を掛けると
 「この…点々?粒々?なニでスか?ミんなに付いてるでス。」
 ルーヴが、手に持っていたイチゴを掲げ不思議そうに尋ねる。
 「種だよ。イチゴの種。それを上手に育てるとコレになるの。」
 微笑みながら答えるオミ。が、実はオミの脳内では、『委縮させるな』『緊張させるな』『気を使わせるな』と警告が渦を巻いている。そしてソレを『勘づかれるな』とも…。
 「…タネ。コレを育テる…。」
 少年は呆けた様にイチゴ畑を見回し、徐々に頬が紅潮しはじめる。
 「オミは…単に育てるだけなら得意だし?」
 微笑みかけながら、気を落ち着かせるように声を掛けると、ルーヴは視線を自分の手元と、笑顔を向けるオミの間で幾度も往復させる。暫く手元のイチゴを見つめ、次にゆっくりとオミの顔を見上げ、笑顔を返しながら力強く頷いて見せる。

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子育て? ⑫

 木々や草花を眺めつつ又、木漏れ日に目を細めつつ、愉しげに歩く少年を連れて目的地のイチゴ畑へ。
 段々に削られた斜面に、一段置きにイチゴの苗が並んで植えられている様子を目にし、少年は圧倒されて硬直する。
 「流石にねー放り投げた状態のままじゃマズいかなって思って。頑張って並べてみた。」
 自慢気に声を掛けるオミ。
 ほへーと…圧倒されている少年の目には、ズラーっと並ぶイチゴの苗なえナエ…。斜面を削って作られた畑なので、どの段にもタップリと日が当たっている。
 「オミは露地専門だから。で、段々にしておくと、どの段にもキチンと日が当たって美味しくなるんだよ。ただ、一段一段が低いから…普通に収穫しようとすると腰にクルけど…。」
 オミが自嘲気味に笑いながら呟くと、その呟きを耳にした少年が不思議そうな表情でオミを見上げてくる。
 「『普通』じゃない収穫ってナにデすか?」
 少年の問いに、今度は穏やかな微笑みを浮かべて答える。
 「ん?PKとかね。オミは超能力使っちゃう。」
 「どレ採ったら良いとかも、ワかるデすか?」
 「分かるよー。遠くないけど『遠見』使うとか、『エンパシー』も良いね。で、PKでサクサクサクーって。」
 オミの答えに、ほぅほぅと納得の表情を見せる少年。
 「で・も、今日はフツーに採るよ。第一ルーヴ、君は超能力使っちゃダメだったろ?使っちゃダメって言うか、使えない状態になっているっていうか…だから鋏を持って来たんだし。それに、君はPK下手っぴって聞いたし。」
 口調が、責めている様にならない様気を付けながら軽く言い、にっこりと笑いかけ
 「下の段から見てみよう。幾つか生ってるから。」
 と声を掛けながら、少年を誘って前を歩き、下の方の段へと誘導していくオミ。


子育て? ⑪

 少年とオミ(とタイガー)がゆっくりと話しながら、畑へと向かう。
 時折後ろを振り返り、木々の間から下方に見える『木々に茂っている葉』とは異なる色を指し示し、問い掛けたり、教えたり。
 歩いている細径の傍らに茂る草花の名を問いたり、答えたり。遠くから聞こえる鳥の鳴き声に耳を澄ましたり。
 鬱蒼と茂る木々が、アーチ状に枝を広げたその下を、顔を上向かせて、危なっかしい歩きかたをしながら、ルーヴは興奮を抑えきれない様子で進んでいく。
 「足元、デコボコしてるから気を付けて。躓いて転んじゃうよ。」
 少年の様子に微笑ましいものを感じながらも、オミが注意を促す。尤も、ルーヴは、注意されたその時だけ足元に気を配るが、直ぐに目線は上へ。生い茂る木々の、枝葉の間から零れる日の光を、顔全体、身体全体で受け止める。
 そんな少年の様子を目に、オミが歩きでは無くPKで浮かんで移動すれば良かったかと思案していると、おもむろに少年が口を開く。
 「好きナ場所ダから、大きクなって数も増えタの?こンナに大キクなったリ増エたリするノに、ドレくらイかカるの?スぐになル?」
 教わった事は直ぐに理解し、その延長に繋がることも考慮できると推し量れる問いを口にしたが…経験不足と知識不足も露わになる。
 「直ぐは無理だねぇ。そこの太い方の木で50年は経ってるよ。隣の、細い方で20年位かな。」
 困った様な、気の毒がっているような、微妙な表情を見せながらオミが答え、すぐに続ける。
 「ルーヴの言った『すぐ』は、1年とか2年でしょ?…木の生長は5年位を目安にしないと。」
 「5年…。」
 「今ルーヴが10歳なら、15歳辺りまでの期間だね。それでも『若い木』って言われちゃうけど…。」
 時間の長さに圧倒されかけた少年へ、オミがあっけらかんと具体的な期間を提示すると、それを聞いた少年は納得の表情を見せ、新たな問いを口にする。
 「モシ今、木ノ種をいっぱい植エたら、5年経っタ時に『林』ミたイになりマスか?」
 「んー…元気に育ったら。」
 「?」
 ぼかしのある返事に困惑するルーヴ。
 「病気とか虫に食べられちゃうとか、後、お日様が照り過ぎちゃうとか、逆に雨が降り過ぎちゃうとか。色々起こるかもしれないでしょ?そういった事が無ければ…『林』みたいにはなるよ。」
 オミは、相手が子供だからと言って安請け合いはするんじゃない、とイツキに教えられたらしく、問題点を幾つか挙げ『簡単な事だと思うな』と遠回しに伝える。

子育て? ⑩

 ひと段落が付いたところでイツキに勧められ、オミとルーヴは籠と収穫鋏を持ち散歩へ出る。
 家の周りをグルッと一回りした後は、少々高い場所に作ったイチゴ畑へと足を向け…。
 「イチゴの最盛期はもうすぐなんだけど…オミは農家サンじゃないから、採れたてを食べられたら良いよねーってカンジで始めたんで、適当なんだよねぇ。実はちゃんと付いてるから、熟してたら持って帰ろうね。」
 オミが話しかけると、ルーヴは不思議そうな顔をして尋ねる。
 「農家サンじゃないのに、果物とか育てるんですか?」
 「野菜も育ててるよー。…でも、育ててるって言うか…育ってるって言うか…勝手に育ったと言うか…なんだけどね。」
 オミの答えに首をかしげるルーヴ。
 (勝手に育つモノだっけ?)
 オミは少年の不思議そうな表情を目にし、慌てて言い繕う。
 「あ…と、えーと…オミね、って言うかオミの血筋はね、植物育てるのに向いててね、時々、見て回ってちょこっと手入れしてってしていると、スクスク育ってもらえるの。」
 ほへーと、分かっているのかいないのか感心した表情でオミを見上げるルーヴ。そのルーヴの表情を見て、一般的な説明もしなければ間違って理解してしまうかもしれない、とオミはやや真面目な表情を見せ
 「えー…と、植物自体もね、自分が育つのに適した場所じゃ無かったら、普通は育たないからね。寒い所が好きな植物を、暖かい所で育てようとしたって育たないからね。オミがやっても、一旦は育っても、一日や二日で枯れたりもするからね。」
 当たり前過ぎるぐらい当たり前の事を、ゆっくりと、少年の表情の変化を追いながら話して聞かせる。少年はと言うと、オミの話しを聞きながら、説明されている状況を思い描き
 「寒い所が好きなノは、暖かい所を『暑い』って感じちゃうの?『茹っちゃうー』ってクターってなっちゃう?」
 ジェスチャーを交えつつ、たどたどしい話し方で尋ねる。
 「そうそう。逆に、暖かい所が好きな植物を寒い所に植えても…やっぱり枯れちゃう。」
 「『寒いっ、凍っちゃう』?」
 「うん。そう。」
 少年のジェスチャー付きの問いに、『そのとおり、合ってるよ』と笑顔で肯定する。


子育て? ⑨

 晴れた日は朝4時に起きて、身支度を整え軽く食事をし、オミと共に畑へ行き収穫や簡単な手入れを行う。自分で何かを育てるのなら、その時に一緒に手入れをする。家へ戻って、重めのお茶菓子を摂りつつお茶休憩をし、家事の手伝いとして、イツキが予め洗っておいた洗濯物を干し、休憩兼勉強として読書、或いは元気が余っていたら、イツキと共に昼食準備の手伝い。午後は午睡を取り、起きたら洗濯物を取り込んで畳み、その後軽くお茶休憩を取る。日が傾くまでドリルなどの勉強をし、夕方風が出て来たら今度は別の畑へ。日が落ちる前に帰り、風呂を済ませ夕食を摂り、日記をつけて就寝する。等と前向きで真面目な生活予定を組む。
 が…その場に居た三人が三人共、眉間に皺をよせ首をかしげる。何しろこの時間割には『遊ぶ時間』が全く含まれていないのだから。川に行く時間も海に行く時間も無ければ、沼の朝霧を見る時間も取られておらず、滝見学すらない。
 大体、敢えて出掛けなくても遊び呆けるのが『子ども』という存在であれば、遊び時間の無い時間割など『大嘘』以外の何物でもないだろう。
 ならば、と現実的な方向へ修正を試みる為に、優先すべき事柄や雨の日に回せる事柄をイツキが書き出し始める。
 「取り敢えず…ドリルは少しずつでも毎日やる方が望ましいから、コレは天気に関係なく入れるだろ。家事手伝いは、雨の日に重点的にやればいいとして、畑関係は晴れた日限定で…。日記は天気関係無しで、読書はどうしようかねぇ…言葉の勉強になるから、少しずつでも毎日やるのがお勧めなんだけど…例え絵本だって、読まないよりは良いんだしな。後は…昼寝か。これは天気関係無しで、一日おきにでも取らないと。」
 イツキが振り分けながら書き出しているのを目で追いながら
 「学校に居た時は、昼寝なんてしなかったです。学校が休みで、寮にいる時に、時々寝たりしましたけど。」
 ルーヴが、それまでの生活習慣を伝える。
 「疲れちゃうよ。慣れない場所で、慣れない生活を続けてると。で、熱が出たりして、寝込んじゃったりってなり兼ねないんだ。寝込むのヤだろ?」
 イツキが穏やかな表情と声で諭す様に訊くと、少年は合点がいった表情でウンウンと頷いて同意を示す。
 結局、外遊びは晴れている日中にしか出来ないのだからと、晴れの日は遊び要素を多めに配し、勉強や手伝い等は雨の日へ重点的に振り分け、疲れを癒す為の午睡は一日から二日おきに取る、と大雑把に決める。
 数日はその大雑把な時間割で過ごし、不備等の対処が必要な事柄に気付いたら適時対応・変更する事とし、大きなドーナツ状の円には、何度でも書き直し可能な様に薄く書き込まれ、リビングの壁に貼り付けられた。


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