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最上部にて…

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よろしくネ 19

 イツキに強くお願いされた翌日。オミの天気予報どおり、カズキ達の町では雨が降っている。
 イツキに連れられ、いつもの様に人目に付きにくい場所にテレポで移動してきたルーヴは、未だ『雨降り』を珍しく感じるらしく、空から降る細い銀糸のような水に目を輝かせている。
 傘の中から右を見左を見、振り仰いで空を見…と、キョロキョロするルーヴの姿に
 「完全防備で正解」
 と内心で呟く。その呟きどおりにルーヴは、レインコートを着、幅広の鍔の付いたキャップタイプの帽子を被りその上にレインコートの帽子を被り、長靴を履き傘を差している。確かに完全防備。…ではあるが、悲しいかな顔や手は少々濡れている。
 傘の差し方や水溜りへの注意をあらかじめイツキから受けているとはいえ、気を抜くとすぐに傘から手を差出してみたり、傘ごと振り仰いで空を見ていれば、そりゃぁ濡れるでしょうとも…。濡れてから思い出して、手を引っ込めたり正面に向き直ったりを繰り返すルーヴを、イツキは怒りもせず、逆に愉しげに微笑を浮かべながら眺めている。

 待ち合わせの図書館に着くと、既にカズキを始め『お姉ちゃん達とお兄ちゃん達』が揃っている。
 図書館の入り口脇に待機していたカズキは、レインコートを着て傘も差していたと見て取れるルーヴが何故(?)か濡れているのを不思議に思い
 「風、強くなってる?カズキ達来た時は、そんなでも無かったけど…。」
 と声を掛ける。ルーヴの後に続いて、入り口から中へと入ったイツキが苦笑しながら
 「雨が…まだ珍しいらしくて、ね。」
 と、ルーヴの濡れた顔や手を、内緒で持って来ていたタオルで拭いてやる。イツキにとっては、ルーヴが濡れるのは予想の範疇だったようだ。
 カズキはイツキの返事を聞いて
 「はぁ…ルーヴの故郷は水が少なかったって聞いてたけど、雨が珍しく感じられる程なのか…。って、総本部にも居たんだよね?総本部の方も、雨ってあんまり降らないの?」
 記憶を刺激されたらしく、素早く問いかける。
 「んー…時期による?こっちの梅雨時みたいに降る時もあるよ。ルーヴはその時期を外しちゃってたから。ま、数回?は経験してるだろうし、ウチの方でも一応雨降りの経験はあるんだけどね。」
 答えながらイツキの脳裏ではイヤな予感が駆け巡る。
 (あれ?俺もしかして失敗した?お兄ちゃん達が揃ってるんだよなぁ…?)
 在りし日の質問攻めが、嫌でも思い起こされる。

 イツキの危惧したとおり、未だ建物の入り口から中へ2・3歩入っただけだというのに、カズキの声を聞き拾って出迎えに顔を出したお兄ちゃん達やお姉ちゃん達から、細々と質問が繰り出される。とは言え、主に『ルーヴに向けて』であるが。
 お兄ちゃん達にしたところで、コチラへの訪問理由をカズキから聞いて分かっているので、主な目的である『言葉数を増やす』と言った点に協力すべく、簡単な単語を使用しての話しかけ・問い掛け・確認を繰り返す。
 誰かがルーヴに問いかける ⇒ ルーヴがたどたどしくも知っている単語で答える ⇒ 別の誰かが表現を少し変えて確認を取る ⇒ ルーヴが困った表情をする ⇒ 表現を変えた部分の説明を別の誰かが行う ⇒ ルーヴが理解し、肯定又は否定する を幾度か繰り返す事で、ルーヴが『別の表現として知った単語量』を増やしていく方法を取っている。ついでに何度も会話を繰り返す事で、お兄ちゃん達の顔や声、話し方等の違いや背格好、髪型の違い服の好み等を伝えることで、相手(お兄ちゃん達)を区別して認知させている。

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よろしくネ 18

 カズキはシンから、モトザネの実家が広大で迷子になる程だと教えらえ興味を示しながらも、煮え切らない態度を示す。てっきり食いついて来ると思っていたシンは意表を突かれ、不思議そうに尋ねる。
 「あれ?お前、興味無さそうだねぇ?『家の中でリアル迷子』とか『個人の庭でリアル迷子』とか…好きそうだと思ってたけど?」
 「別に好きで迷子になってたワケじゃぁ無いしっ。好奇心と冒険心に比べて…ちょっとだけ記憶力が足りてなかったダケだしっ!」
 あんまり自慢にはならないけれども、気にせず堂々言い放つ。そこへイツキが横から、海あるよー山もあるよー、海の幸も山の幸もウマウマだよー米どころだよー等と口を挟むので、カズキは少々困ったような表情をしつつ
 「モトちゃん家も気にはなるけど…今は、ルーヴの水着が…。」
 イツキの様子から、二の次三の次にしてしまっても良いんだろうかと悩みながら口にする。
 「あぁ、それは…。」
 カズキが気に掛けていたとは考えもしなかったイツキが軽く応じる。
 「やっぱり『総本部』まで行かないと今時期は無いみたいね。買いに行くのに…皆で付き合って貰えるかい?」
 受験生組も気分転換になるんじゃない?と、今この場に居ない者達も気軽に誘う。
 が、それを聞いたカズキが表情を強張らせて
 「あんなハイソな所へ行けと?」
 と、拒否反応を示す。
 「大丈夫、大丈夫。オフィスエリアは確かにチョットお高いかも?だけど、市街地に出ればリーズナブルなお値段の店もあるから。テレビで放送されるのは大抵オフィスエリアのショップだから。」
 気軽な態度で手を軽く上下にひらひらさせながら、安心させる様に説明する。
 「水着だとねー…俺達は店に近寄りたくないんだよね。サイズ合わせたり、デザインを選んだり…是非ともお願いしたい。」
 「水着、なニ?」
 分かっていないルーヴは、キョトンとしながら誰に言うともなく尋ねる。
 「水遊びとかをする時に使う…『濡れても良い恰好』のヤツ。男の子用は、別名『海水パンツ』って言います。」
 要所だけ隠すんだよー、とカズキが説明する。
 「川で遊んでイル人ガしてル…『パンツだけどパンツじゃない』やつ?」
 「そーそー、それそれ。ルーヴ持ってないんだって?イツキさんが買ってくれるって。良かったねー。」
 カズキがコソっと、ハイソなエリアへのお出掛けから逃れようとイツキに丸投げしようとするが
 「カズキ君が選んでくれるって。一緒にお店を見て回るといいよ。」
 あっさり投げ返される。二人とも、別にルーヴの買い物を嫌がっている訳ではないし、勿論押し付け合っているワケでもない。只単に、お互い面白がっているだけだ。
 と、そこへ、今まで全くと言って良いほど会話に参加していなかったオミが唐突に話し出す。
 「あー…明日、雨だ。明け方からかな?降り出して…昼過ぎ迄かな?弱めのがシトシト降るね。」
 「えー…っ。」
 オミの天気予報を疑わないカズキは不満げな声を漏らすが、すぐに気を取り直して
 「じゃぁ、明日はそこの図書館で。宿題する?絵でも描く?ぬり絵とか…図書館なんだし本読むとか?」
 なにしよっか?楽しそうに提案する。

よろしくネ 17

 ここ数日使用しているテーブルで、イツキが冗談なのか本気なのか判断に困るようなことを愉しげに口にし、それを聞いたシンが軽く考え込むと、テーブルに置いたシンの腕をタイガーが前足で軽く押してくる。
 「ミー」
 オミが、テーブルに乗って行儀が悪いと叱る前に、タイガーがシンへ訴える様に声を掛ける。
 「なに?どーした?タイガー。」
 考えるのを一旦中止し話しかけるシン。
 「ミーミーミーミ-。」
 大真面目な表情で必死に声を掛けるタイガー。

 暫くすると、カズキとルーヴが頬を赤く火照らせながら戻ってくる。
 「ただいまー。」ハヒーアツーイ。「シンちゃん、お帰りー。」
 身体の火照りを冷ます為か、上着の裾をパタつかせながら挨拶するカズキ。後に付いてきたルーヴもカズキの真似をして、上着の裾をパタつかせ
 「ただいま。…と…お帰りなさい…?」
 シンと初対面なので少々困惑した表情をしながらも、『つい』カズキに釣られた形で挨拶をしてしまう。
 「ただいま。は、脇へ置き。カーズーキィー。行儀悪い事をしてんじゃないよ。コッチの行儀が分からなかったら、そのまま真似しちゃうだろ。『行儀の悪い事』って知らないまま覚えちゃったらマズイだろ。」
 シンは『上着の裾をパタつかせ』て火照りを取ろうとするカズキの行為を窘め、ルーヴへ向かい
 「ただいま。」
 律儀に挨拶を返し
 「と、初めまして。」
 こんがらがっちゃっても仕方ないね。使い始めたばかりなんだろ?と訂正しつつ、にっこり笑い掛ける。
 「は、初めまして。ルーヴって言います。」
 そっちだった!と慌てて言い直すルーヴへ、窘められてもヘッチャラなカズキがテヘヘと笑いながらシンを紹介する。
 「この人ね、『シンちゃん』。幼馴染の…二人いる『おっきいお兄ちゃん』の一人。ちょっと怖いトコあるけど、ホントは優しいから。」
 今は特に、頭の上的に…。とは口に出さず、視線で訴える。




 

よろしくネ 16

 「そう…。」
 イツキとオミは視線を交わし
 「まぁ…うん、ちょっと不思議ではあるよね。受験前の夏休みにって…。」
 言葉を濁しながら答えることで時間稼ぎをし、その僅かな時間で伝え方を思案するイツキ。
 「ただね、彼の所はさっきも言ったけど『規模』が違う。歴史的な物から経済的なものついでに…敷地面積なんてのも格段に違う。大体、世間一般的なことは金を使えば結構どうとでもなるんだよね。規模の違う人たちは一般的な考えとは一線を画していても不思議じゃないよ。」
 イツキが『金持ち』を少々揶揄するように表現すると、シンは眉間に皺を寄せ考え込む。
 「まさか『裏口』とか言いませんよね?少なくとも彼は、その辺りは一般的な考えを持っているようですが…。」
 シンが辺りを憚る様に声を潜めて言うと、イツキとオミは小さく笑いながら否定する。
 「いやいや…そっちじゃなくて…『大して会った事も無い相手を』の方。知る方法は幾らでもあるよね?金が使えるなら。人も使えるし。」
 「は?それって…?」
 「『身辺調査』。多分…パズルの件の数日後には入ってるよ。親しくしているのを、同行していた秘書サンが知っているんだし。報告するだろうしね。対象者の特定は秘書サンが立ち会えばすぐに可能だし。」
 「その報告に問題があれば、それとなく匂わせて距離を取らせるだろうねぇ。」
 自身が気付かないうちに、自分達の事を調べ上げられていた可能性を示され、渋い表情をするシン。確かに愉快な気持ちではいられないだろう。
 「ただ…まぁ、止められた様子も無ければ、ヤな顔をされた訳でもなさそうだし?問題無しと判断されたんだろうねぇ。第一君は、彼の元許嫁サンとお付き合いを継続しているぐらいだし?それと…君とマサト君は実際に通っているんだし?キョウコちゃんは同じ学校を卒業して、系列の上の学校に進学しているし?4人は同じ学校を目指す同輩だし?ミヅキちゃんとカズキ君は、可愛い後輩になるかも?だし。全員、彼が進学を希望する学校の地域で育った子だし?距離を取るより親しくした方が断然お得って考えられる程度には、問題点が無かったんじゃない?」
 なんかとっても失礼な物言いをされた気がするが…それは脇へ置き
 「だからって…受験生にとって一番重要とされる夏休みですよ?」
 「だから『受験勉強合宿』なんだろ?調査を入れたんなら、君たちの成績なんかも知ってるだろう。色々免除受けてるんだろ?」
 「もしかして…勉強仲間と家庭教師役?」
 シンが顔色を伺うように上目使いで尋ねると、イツキが頷いて同意を示しつつ冗談として尻馬に乗る。
 「ミヅキちゃんとカズキ君は気分転換役だろうねぇ。」

 「用事があって動けないなら話は別だけど…そうじゃないなら、一度行ってみると言いよ。スゴイから。」
 イツキが半ば面白がって勧めるのを
 「はぁ…どうスゴイんです?」
 シンが疲れた様子で尋ねる
 「兎に角『広い』。家の中で迷子になれるぞ。」


よろしくネ 15

 シンはカズキが無茶をせず、させず遊んでいるのを確認して一安心し、イツキやオミへ態度を変えて声を掛ける。
 「あの…ちょっと相談したいことがありまして…チョッピリ時間いいですか?」
 「ん?まぁ、いいけど…どうしたの?」
 イツキが、チラッとルーヴやカズキの様子を確認してから応じる。
 「モト君の事なんですけどね。」
 シンが真剣な態度で話し始めたので、イツキやオミも本腰を入れて聞くべきと姿勢を改め耳を傾ける。
 「先日…モト君から手紙が届きまして。『昨年度』の高等部入試問題の簡易版が売り出されたので、それを送った礼として手紙が届いたんですけど。」
 「昨年度の入試問題って、『今』一年生で…新入生として高等部に通っている子達が受けた試験の?もう出たの?」
 イツキが確認を取る。
 「えぇ、今『新一年生』として通っている子達が受けた試験で…外部受験者用の問題です。簡易版なんですけどね。出題用紙をそのまま綴った様な造りなんですけど。」
 シンの説明にフンフンと軽く頷き、目で先を促す。
 「で、そのお礼の手紙の内容に少々…。」
 シンが、ここから本題だと一旦切り、イツキ達の様子を見てすぐに話し始める。
 「『夏休みに、受験勉強合宿と称して泊りで遊びに来ないか?』って事が書かれていまして…。」
 微妙な表情をしつつ言い淀むシンに、続ける様に促すイツキ。
 「そんな…良いんでしょうかね?ぅーん、良いって言うか…どうなんでしょう?連絡はそれなり取っているとはいえ、顔を合わせた事なんて殆ど無い相手を…そんな気軽に誘うって。」
 どちらかと言えば、はきはきはっきりタイプの『お兄ちゃん達』の中でも、シンは特にハッキリした性格をしていて、年齢的に言葉を選ぶと言う事に考慮してはいても、語尾を濁すような話し方は滅多にしない。そんな彼が、今回は濁しっぱなしでいる。
 イツキやオミは、話題となっているモトザネの家の内情を、それなりには承知しているが…シンの気兼ねが奈辺にあるか定かではない状態で口を出すワケには行かないと、しらばっくれた態度でシンに先を促す。
 「そこまでコチラを信用するって…なんか不思議で。時期も時期ですし…建前上の理由にはうってつけですけどね。」
 イツキやオミの様子を伺いながら、確認を取る様に話すシン。
 「でも普通は避けるんじゃないでしょうか?大切な進学がかかっている夏休みですよ?雑音とは可能な限り距離を取って、受験に集中させるものでは無いんでしょうか?」
 責める様な口調ではなく、ただ淡々と事実を知りたいと全身で問い掛ける。
 「彼の家の事どれぐらい知ってる?」
 イツキが尋ねると
 「殆ど知りません。とんでもない程の『良いトコ坊っちゃん』位しか。後は…破談になった相手?」
 最後は自虐的に付け足すシン。
 「シン君なら…彼女さんに聞いて知っていると思ったけど…彼の所の規模とか。」
 「規模?」
 「うん『規模』。」
 「さぁ…?イツキさんやオミさんに依頼を出せる位…ですか?」


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