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最上部にて…

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文化祭に招待された ⑨

 「あぁ~。しくじったぁー。」
 カズキやリョウ達と共に、合同パレードを見学しているイツキの呟き…。
 オミはイツキの陰に隠れるようにして顔を逸らしている。
 バトントワリング部が、イツキ達の正面で演技を行っているだけなのだが…。
 「なんでよぉ?素敵じゃぁん♥お姉さん達。」
 カズキは『キャッ』等と言いつつ顔を手で隠してはいるが、指の間からしっかり覗き見し、はしゃいでいる。
 「素敵って。キミねぇ…。」
 イツキがあからさまに顔を背けるのも失礼に当たるし、かと言って当たり前の顔で眺めるなど到底無理、と困り切った表情をしつつタメ息を漏らす。
 「ん百年だかコッチにいるのに…日本とだって結構関わってるんでしょ?なんで肌の露出がダメかなぁ…?」
 「見せろって言ってるんじゃないのにねぇ。」
 「見せるのに抵抗がある、って言うのはまだ理解できるけど…。見る側なのに…。」
 「いい加減慣れようよ。」
 リョウ⇒ヤスノリ⇒トシ⇒ヒロの順で遠慮なしに口にする。
 「見るのもダメッ!って言うか、平気で見せるってなんなの…?」
 呆れ口調でイツキが反論すると、ヒロが冷静にツッコミをいれる。
 「要所は隠してるし。それどころか見せてる部分って腕と足だけなんだけど…。」
 この程度がどうかしたか?と言外に匂わせている。
 「だ・か・らっ、身体のラインが丸分かりでしょうっ!」
 イツキ、精一杯の反論。
 「スタイル良いよねぇ、お姉さん達ってば。お兄さん達はどーでもいいけど。」
 『きゃ』と言いながら顔を隠しつつも、カズキが応じる。
 カズキのおませっぷりに対し、オミが目を瞠る。
 おませとは言うが、カズキは12歳。
 興味津々なお年頃ではある。
 恥ずかしがらないのは性格故か、家族構成故か…。
 上に、同年代の男より遥かにおませな女姉弟がいると、自然に免疫ができ、当たり前と受け入れられる下地が醸成されるとはいうが。
 ヒロはシッカリ見つつ冷静にツッコミを入れ、カズキはきゃっきゃっ言いながらも、シッカリ見ている。
 共通項として、二人とも『姉』がいる。
 他の一人っ子や男兄弟のみの者達は、少々バツの悪そうな嬉し恥ずかしな表情を見せてはいるが…。
 女姉弟の二人は全身から『こんな程度でテレたり困ったりして…。どうすんの?』と態度で表している。
 ナニやナニをナニでどうするのかは敢えて触れないが。
 「はしたないでしょっ。」
 堪え切れずにオミが口を挟むと、カズキが胸を張り堂々と断言する。
 「『はしたない』んじゃありませんっ。『素敵』なんですっ!」
 問答無用でミヅキにハタカれました…。

 「っはははー。それでそんな妙に疲れた顔してるのねっ。」
 キョウコのクラスの模擬店脇。
 ヒロやトシやカズキが、先ほどのパレード見学時のイツキやオミの様子を、売り子番のキョウコに面白おかしく説明する。
 「笑い事じゃないし…。」
 イツキが不満そうに呟く。
 「スカートで素足だって…ちょっとどうよって思うのに…。」
 「夏の半そでも…。」
 オミがボソっと付け足す。
 それらやり取りを聞いていた、キョウコと共に売り子番をしていたクラスメイトの女子達は、不思議そうに自分たちの服装をしげしげと見直したり、男子達は女子の格好を見直したり…。
 「それ…オミさん達に合わせたら、ホントに死ねるから…。」
 キョウコが言い捨てるように口にすると、ミヅキがウンウンと頷いて同意を表す。
 「膝下と肘先は…目を瞑っただろ?」
 「イツキさんは、ねー。」
 「オミさんは一瞥してプイってしたり、あったよね。」
 「男だろうと女だろうと、他人に見せて良いのは足先と指先と頭部だけですっ。」
 オミが大真面目に答える。
 他人にって言う辺り意味深~。言わないけど…。
 その場に居合わせた、中学生以上の人達の心の呟き。
 「他人じゃなかったらいいのか…。」
 言っちゃうのは小学生のカズキ。
 カズキは直後に、オミから『こめかみグリグリ』を頂戴しました。
 「そんな…っぃっててて…てて…。言ってないし!オミサンとイツキさんが、他人なのか…家族なのか…疑問だ、なんて。カズキは言ってませんっ!」
 グリグリされながらカズキが訴えると、『言わなかった』人達が堪え切れずに吹きだす。
 「まぁ…なんだ、文化の違いって事位はわかってるから…、そちらも考慮してくれればそれで問題ないって話しでしょ。不必要に肌を晒さないでくれれば良いんだし。」
 「しつもーん。」
 キョウコが軽く手を上げる。
 「男でも女でも肌を晒すのははしたないって考えは…まぁ分かります。オミさん見てるし、何度も聞いていますし、そうゆう考え方もあるんだな、と。でも、なんか説得力に乏しい気がするんだけど…?『はしたない』ってだけで、そこまで抵抗感を示すのって、どぉなんでしょ?」
 キョウコの提示した疑問に、その場に居合わせている全員が同意を示す。
 「ぅーん…、結局は『文化の違い』なんだけど?」
 「具体的にどう違うの?『はしたない』だけだと、漠然とし過ぎてて良くわからないんですが…。」
 キョウコが尚も食い下がる。
 「言っちゃって良いのかねぇ…。」
 イツキが真剣に困った顔を見せるが、周りの人たちからは『教えてくれないと分からない』な雰囲気が漂ってくる。
 「差別的な考えになっちゃうから。」
 「じゃ、差別的な考えだから大きな声で言うワケにはいかないけどって事で教えて。」
 「小さい声で。」
 トシやヤスノリまでが食い下がる。
 「じゃぁ…内緒にしておいてね。『アチラ側で俺達が居た地域では』って事だからね。」
 イツキに念を押され、その場に居た全員が力強く頷き同意を表す。
 「『身体を売る人』と同列に捉えちゃうんだよ。」
 
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文化祭に招待された ⑧

 団体は確かに礼を言いに来たのだが、同行者の一人がイツキやオミに気付いたようで、礼を言っていた代表に小声で囁く。
 囁かれた代表、イツキやオミが目で追った当の本人が、驚いた表情で辺りを見回し、二人を見つけると、にこやかに微笑みながら近付いてくる。
 「こんにちは。ご無沙汰しています、お二方。凄い偶然ですね。」
 「こんにちは。名代殿…っと、今だと次代殿ですか。夏の儀式以来ですね。その節はお世話になりました。」
 イツキが返すと
 「いえ、とんでもない。お世話になっているのはこちらの方です。ありがとうございます。」
 律儀に頭を下げてくる。
 「今日はどうなさったんです?こんな遠方の学校へいらして…。」
 「先日教えていただいた件と…、進学の件で。こちらの学校で午後から進学相談会があると知ったものですから。」
 自分が場違いな所に同席しているのでは、とカズキが困惑していると、オミが悪戯っぽく口を挟む。
 「例のパズルの件、覚えていらっしゃいますか?」
 「えぇ。完成しましたか?」
 小年がうれしそうに尋ねると、オミは顔を曇らせ
 「……まだです。」
 小さい声で答える。
 オミの姿に苦笑しながら、イツキがカズキを示しつつ言い添える。
 「あのパズル、この子の店で買ったんですよ。」
 「えっ。本当ですか?」
 カズキへと勢い込んで尋ねる。
 「え?え?パズル?って?」
 突然自分に話題が振られた事に対応しきれず、困惑するカズキ。
 「オミが土産代わりに買った、大物パズルだよ。」
 イツキが助け舟を出す。
 「あ、あぁ…。はい。ウチから、買って頂きました。」
 動揺しつつも懸命に答える。
 「あの、お尋ねしたい事があるんですが…、構わないでしょうか?」
 「なんでしょう?」
 年上の、それもどこをどう見てもお育ちの良い坊ちゃまが、自分に対し丁寧に接してくるので、カズキはどうしても心理的に身構えてしまう。
 「どちらから仕入れられたんでしょう?ご存知でしたら教えて頂きたいのですが。」
 仕入れ先を訊かれるとは思っていもいなかったカズキの動揺は一段と増し
 「し、仕入れ…先は…その…え…っと。」
 しどろもどろとなる。
 リョウ達が面白がって眺めていると
 「仕入れは父に訊かないと分かりません。」
 キョウコと共に、後から合流したミヅキが脇から答える。
 「横から口を挟んで申し訳有りません。仕入れなどは両親に尋ねないと分からないんです。ご期待に沿えず済みません。」
 軽く頭を下げ、自分達では把握できない旨を伝える。
 少年の周りには、オミやイツキの事を伝えた者とは別に、護衛と思える人物が数人待機しているが、ミヅキに関しては、先の入場用の券の融通を受けたキョウコに同行して現れた為、警戒対象外と判断しようだ。
 カズキは姉の言葉に同意を表すべく、コクコクと頷いて見せる。
 「そう…ですか。残念です。」
 「何故、仕入先を?」
 僅かに落胆の表情を見せる少年へ、イツキが声をかける。
 「まだ在庫があるようでしたら、ウチの方の店にも卸して頂けないかと思いまして…。学校等で購入すれば、多少値段が張っても支払えるだろうと思うので。」
 「パズルを学校で…?」
 カズキが不思議そうな顔をする。
 「ええ。だって10000ピースの大物なんでしょう?うちの方は、一学年の人数がこちらに比べ少ないと思われるので、皆で協力して完成させたら楽しいのではないかと思うんです。」
 「はぁ…なるほど…。」
 少年はにこやかに答えるが、カズキの表情は言葉とは裏腹に、納得していないと察せられる。
 でも、なんでオミさんが買ったパズルを気にするの?皆で協力して完成させるならパズルじゃなくても良くない?仕入先が分かったら交渉するつもり?でも、だって、兄ちゃん達と同い年位じゃね?大体なんでそんな事考えるの?
 疑問が頭を駆け巡るが、尋ねてしまって良いものか流石のカズキでも躊躇する。
 「あのね、カズキ君。あのパズルの風景ね、こちらの方の地元を撮影したものなんだよ。」
 オミが、カズキの疑問を見透かすように口にすると、その場に居た全員が、理解を示す様子を見せる。
 「あー。なんだ、そっか。だからかぁ。」
 カズキ、破顔一笑。
 「それじゃぁ、ちょっとばかり執着しても仕方無いか。」
 「地元が撮影地じゃぁねぇ。」
 「あの場所が地元かぁ。」
 「1000ピースだったら、迫力だろうねぇ。」
 「それじゃぁねぇ。地元の人たちにも知って貰いたいし、教えたいよねぇ。」
 その場に居たキョウコやリョウ達が、ワヤワヤと賑わいだす。
 「別の季節ので良ければありますよ。」
 カズキが爆弾発言をすると、護衛以外の全員の目がカズキに集まる。
 「ほんとに?」
 少年がダメ押しで尋ねる。
 「はい。夏と春と冬が、一つづつ。四季が揃ってたみたいで。倉庫を探ったらありました。」
 「それ…。」
 「だめーーーっ!」
 少年が口を開きかけると、オミが咄嗟に大声で制する。
 「オミが買うからダメ!オミが買う!オミが買うよぉっ!」
 まるで駄々っ子。
 「でも、オミさん。お財布はイツキさんが握ってるんだよね…?」
 カズキに冷静に指摘され、一瞬固まるオミ。
 「ウチは、商売だし?買って頂けるんなら、特に『誰に』ってこだわったりはしないワケで…。確実にお支払い頂ければ、それでいいんだし…。」
 カズキが天秤に掛けるような事を口にする。
 オミはまんまとそれに乗せられ、イツキの方へ向き直って訴える。
 「キーちゃん、買って!」
 イツキは全てを諦めたように溜息を一つつき、
 「カズキ君、それ、煩いからオミに売ってやって。で、次代殿、申し訳ないんですが、カズキ君のご両親から仕入先を教えて貰って下さい。」
 「そうですね。僕の方はそれでも別に構いませんし…。」
 次代と呼ばれた少年は、『煩い』と言われ不貞腐れるオミを見て、微苦笑しつつ応じる。
 「じゃぁ、カズキ君達が帰るときに一緒に行けばいいですね。時間と場所を決めて落ち合って。」
 

文化祭に招待された ⑦

 イツキ達はカズキに案内されながら各教室の展示をまわっていく。
 『ビーチボールでフリースロー』では3人共、とことんゴールリングに嫌われ、『パタパタパタァゴルフ』では、なによりもタイガーに邪魔をされ、『錯覚の部屋』では目を回す。
 お手玉、けん玉、独楽ではオミが不器用っぷりを(不本意ながら)披露し、めんこではイツキがちびっ子相手に半ば本気になる。
 投扇でオミが汚名挽回した後の『お化け屋敷』では、カズキとオミが悲鳴を上げイツキにしがみつき、タイガーがお化けに喧嘩を売る。
 おまけにカズキは行く先々で、キョウコやシン、マサトの以前からの知り合いに声をかけられ、いじられる。

 「そろそろ集合場所に行った方がいいか。」
 全力で楽しみつつも、時間を気にかけイツキが言う。
 「あ、そだね。シンちゃん達のトコは混みそうだし、行こうか。」
 「場所はどこだ…?外だったよねぇ?」
 「うん。あのクラスが教室で模擬店やったら、昼時の混雑がハンパ無いんで。だぁれも教室から出て行かないだろうから。」
 「?」
 二人は不思議そうな顔をするが、カズキに促がされ校庭へと向かう。
 校庭へ向かう階段から外を見ると、何箇所かやたらと混雑してる場所がある。
 「あの混んで居る所の、1箇所がキョウコ姉のトコで、もう1箇所がシンちゃん達のトコなんだよ。」
 「なんで言い切れちゃうの?」
 イツキが不思議そうに訊ねると
 「だって3人共、やたらとモテるから。」
 あっさりとカズキが口にする。
 やっぱり、カズキ君も気付いてたんだね…。

 混雑の1箇所、シン達のクラスの模擬店近くへ着くと、シンやマサトら数名の生徒が、鉄板を前に調理や販売に励んでいる。
 「バレーボールの後だって言うのに…頑張るねぇ…。」
 イツキが、感心したというよりも呆れた様な口調で呟くと
 「稼がないと、だしね。」
 カズキが自分に言い聞かせるように言い、二人の元へと近寄って行く。
 イツキもカズキの後を追うが、オミは途中で立ち止まる。
 どうやら模擬店で提供している料理(焼きそば)の、具材と言うかトッピングに気付いたタイガーを、連れて行くわけにはいかないと判断したようだ。
 対して、タイガーは、自分の好みの匂いが、料理の匂いと共に風に紛れて流れて来た為、あちらへ行く・連れて行け・放せと必死のアピールを行う。
 「タイガーはナニを騒いでるんだ?」
 騒ぎに気付いたマサトが不思議そうな顔をする。
 「んーーー…?」
 カズキは理由が分からず首をひねる。
 イツキが、材料や調理を一通り眺め答えをはじき出す。
 「あ、分かった。かつお節だ。」
 あーー、なぁるほどぉ。ネコだもんねぇ。
 その場に居た全員が納得する。
 「オミ、絶対離すんじゃないゾ。」
 イツキが、タイガーを必死に抑えているオミへと声をかけるのとほぼ同時に
 「兄ぃーー。」
 リョウの声が聞こえて来る。
 見ると、リョウとヒロの二人が走ってきている。
 「チケット余ってない?8枚程。」
 駆け寄るなり尋ねる。
 「んー?無い…なぁ…。」
 シンは模擬店の客の相手をこなしつつ、記憶を探り答える。
 「俺も無い。」
 目で問われたマサトも答える。
 リョウとヒロが悔しがりつつ、次の手立てを思案していると
 「おれ2枚ならあるぞ。いるか?」
 いるいる、要ります。下さいマセ。
 「アタシ1枚余ってるよー?」
 是非是非。お願いします。
 「あたし2枚あるー。」
 なにとぞぉ。
 模擬店内で当番についている生徒達から、僅かづつ分けて貰う二人。
 提供してくれた生徒たちに礼を言い
 「俺、ダメ元でお姉ぇに訊いてくるわ。リョウちゃん、先に門のトコ行ってて。」
 「おぅ。分かった。頼む。」
 手分けして対応する。
 「風の様に来て、風の様に去って言ったねぇ。」
 イツキが二人のフットワークの良さに感心する。
 「ぅーん、なんだったんだ?一体。」
 マサトが首をひねると
 そーいや、説明無かったね。
 カズキが応じる。
 「大方、当日券が終わっちゃって入れなくなった人を見兼ねたんだろ…。」
 シンが客に商品を手渡しつつ推測を口にする。
 「当日券とか…、入場制限があるんだ…?」
 「うーん…一応?盛況なのはいいんだけど、事故も起こりやすくなるからでしょうねぇ。」
 イツキの疑問にマサトが答えると
 「迷子とか、はぐれちゃったとか結構いるみたいだし。」
 カズキが補足する。
 なるほどねぇ。
 「でも、招待券が全部はけるワケじゃぁないし、招待券を受け取った人が全員来るワケでも無いんだけどね…。」
 なるほど、なるほど。
 イツキが感心していると、カズキが、あらかじめ取り置きしておいて貰った商品を人数分受け取り、模擬店の裏側、少々離れた位置をイツキ達へ指し示し、そこへと向かう。
 暫らくすると、リョウ達が門とは別の方角、先程ヒロが向かった方向から、団体で歩いてくる。
 融通した券の相手が礼に来たのであろうか、それ位の人数がいる。
 イツキがその団体の一人に気付き、微苦笑しオミに目で合図を送る。
 タイガーを抑えつつ、サービスで大盛りになっている焼きそばをつついていたオミが、イツキの合図を受け団体に目を向けると、そこには見知った顔がある。
 オミは驚き、目で団体を、正確には団体の中の一人の姿を追う。
 「ここに来たのは偶然だろうし、リョウ君達との関わりも偶然だろうけど…。恐ろしい程偶然を引き寄せるね。」
 イツキが苦笑混じりに口にすると、話を耳にしていたカズキが不思議そうに尋ねる。
 「知ってる人?なんか、色々スンゴイ人みたいだけど…。」
 「うん、知ってる人。で、スンゴイ人。」
 「イツキさん達がスンゴイって言う位だから、ホントーに凄いんだねぇ。」
 カズキがしみじみと言うと、しみじみっぷりが可笑しかったのか、納得する理由が可笑しかったのか、イツキがにこやかに笑いながらカズキの頭をガシガシとなでる。

文化祭に招待された ⑥

 バレーボールの試合は、2対1でシン達混成チームが勝ちを収める。
 選手達は汗だくの為、終了の挨拶の後シャワー室へと引き上げて行く。
 イツキ達は、自分のクラスの手伝いに入らなければならないキョウコや、友人達との約束があるミヅキやリョウ達と一時的に分かれ、カズキと行動を共にしている。
 「カズキ君にちょーーーっと訊きたいんだけど…。」
 イツキが周りを憚るように声を潜め訊ねる。
 「?なーに?」
 「まさか、カズキ君…友達いないなんて事は…ない…よね?」
 あんまりな問いかけに、カズキが不満を露わに答える。
 「い・ま・す。」
 顔を合わせたりしていないみたいだけど…?
 イツキがヒソッと訊くと
 「だって、ここ高等部なんだもん。大抵の子は高等部には用が無いよ。家が近いって人なら来るだろうけど。」
 カズキが付け足す様に答える。
 カズキは初等部に在籍している為、友人は同じ初等部の子が占めている。
 ミヅキやリョウ達は中等部なので、高等部への進学等を考慮した友人達が文化祭を見学に来る事があるが、初等部の子達には、カズキの様に親しい人が居るならまだしも、高等部の文化祭は興味の対象にはなり難いのだろう。
 なので、カズキが友人と顔を合わせることも滅多に起こらない。
 「でね、イツキさん達に付き合えって言われた。カズキは、高等部にはキョウコ姉が1年の時からチョコチョコって来てて、校内の事知ってるし。」
 「なる程ね。ま、助かるよ。」
 そーでしょ、そーでしょ。
 『助かる』が社交辞令であろうと察してはいても、大人しく、誤魔化されているフリをするカズキ。
 「で、どこ行く?シンちゃんやマーちゃんのお勧めは…写真部と美術部と手芸部が協力してやる『実写版なりきり写真館』と『叩いてかぶってジャンケンポン』と『ビーチボールでフリースロー』、大真面目なやつで『錯覚の部屋』と『自転車発電』、発表物の『避妊法と効果』あと『大災厄からの復興』、それと講堂でやる、男心をくすぐる『新体操部 模範演技』、レオタードが素敵♥って言ってた。」
 避妊法!?レオタード!?いやいや…それはちょっと…。
 イツキとオミが力いっぱい辞退する。
 「あとは…学校推薦の『遊びも文化だ!』。これはカルタと投扇、お手玉、けん玉、めんこ、独楽を体験できます。」
 「学校が推薦しちゃうんだ…。」
 とはオミ。
 「投扇ってなに?」
 「推薦しちゃうんです。っていうか、ここの遊びって大人の人が燃えてたりするよ。午後から体育館でやる、進学相談会に参加を兼ねて来た中学生の付き添いの両親や、近所に住んでいて学校のお祭り見学大好きな人とかが燃えてたりする。でね、投扇はすっっんごく昔、大災厄前のお座敷遊びだって、案内に書いてあった。」
 「そんなの伝わってるんだ…。」
 イツキやオミが感心すると
 「良く残ってたよねぇ。って言うか、絶対、一度は途絶えたよね。良く復活させたよねぇ。」
 カズキも感心する。
 「なんかさ、カルタとかお手玉とかけん玉、めんこ、独楽は、なんか分かるんだけどね、残って伝わっても。投扇は不思議だよね。」
 カズキがしみじみといった風で感心する。
 「後ね、ピンポン球ボーリングとパタパタパタァゴルフが、むかつくんだけど燃えたって言ってた。」
 「むかつくぅ?」
 「うん、ピンポン球ボーリングは発射台付きなんだけど、難易度があって、難易度別に『お邪魔し隊』がお邪魔ゾーンで団扇で扇いで邪魔するんだって。」
 「ピンポン球だからなぁ…。」
 イツキが呟くと
 「で、パタパタパタァゴルフもピンポン球を使うんだけど…。こっちはピンポン球にパラシュートの傘みたいなのが凧糸で付けられてて、そこに団扇で風を送って、ゴルフのカップに見立てた篭に入れるゲームらしいんだけど、思うように動いてくれないんだって。」
 ちなみに二人はサンプリングに協力させられたって言ってた。
 カズキが付け足す。
 「後は鉄板の『お化け屋敷』と『迷路』、迷路はちびっ子向けかな。ご近所の方が、お手軽なお出かけって感じで来てたりするし。ちびっ子向けエリアもあるしね。で、時間がちょっとかかるけど『クイズラリー』、放送部の『クラシックでイントロドン』、午後の2時頃やるウィンドバンド部とバトントワリング部とフラッグバトン部の合同パレードは、毎年やるんだけど、必見の価値有りです。」
 「お勧めを全部回れるかなぁ?」
 イツキが心許無さそうに言う。
 「お昼までにパレード以外?うん。無理。」
 キッパリ断言する。
 「んーー…と、写真はお二人は珍しくないだろうからパスして、叩いてかぶっても後々大変そうだから外して…。『ビーチボールでフリースロー』に行こう。近いし。超能力なしで。」
 「その手の事に超能力なんて使いませんっ!」
 カズキに手を引かれながらイツキがきっちり否定する。

文化祭に招待された ⑤

 「混成チームのセッターさん、巧いねぇ。打ち易そうだ。」
 「あの人元バレー部で現バスケ部さん。昔を思い出してトスを上げてるんだそうで…。」
 イツキがあぁという顔をすると
 「ただ、最近は、ボールを持っちゃいそうになるとか…。兄ぃが言ってました。」
 リョウが苦笑しながら説明する。
 「バスケ部じゃぁ…そぅだろうねぇ…。」
 「流石に元バレー部だけあって、緩急高低お手の物とか。あの身長で、ジャンプしながら高い位置にトスを上げられちゃうと、相手はホントに困っちゃうでしょうねぇ。ヘタしたらブロックの上を越しちゃうでしょう、兄ぃ達も背高いしジャンプ力あるから。」
 「ジャンプしてって、ボールコントロール効くのかい?」
 「元バレー部っていうのも関係してるのかもしれませんけど…。でも、バスケってドリブルしながら走り回るし、ジャンプしながらパス出してたりしますしねぇ…。投げているわけですが。」
 「そ・だったね…。」
 「あの身長でジャンプして、スパイク打たれるのも、怖いから遠慮したいですけどね。」
 「文字通り、床に突き刺さりそうだねぇ…。」
 イツキが苦笑混じりに応える。
 イツキやリョウ、ヒロが暢気に話している間も、ビビリーオミは怖がってイツキの袖を掴んでいたりする。
 タイガーは既に、オミの上着の中に隠れているが…。
 と、突然前触れもなしに会場が沸く。
 オミが一層怯えた表情を見せながら、疑問を口にする。
 「え?え?なんで盛り上がるの?強いの打ったワケでもないのに…。」
 「今のフェイント?相手の真ん中に落とした?」
 リョウが尋ねる。
 「フェイントだろうね。相手の守備の隙間にマサト君が上手い具合に、ポンって感じで落としたよ。」
 イツキが冷静に説明する。
 「それで、どーして盛り上がるの?」
 半べそでオミが訊く。
 「頭脳プレーだからね。相手の様子をきちんと見てないと出来ない事だから。直前までラリーの応酬だったから尚更だね。」
 選手の冷静なプレーに対して、見てるだけの観客が、興奮して大声出すなんておかしくない?オミは絶対認めませんからね。
 と表情にありありと表す。(早い話しが不貞腐れたワケだが。)
 「セッターが緩急自在なら、他の選手も緩急自在かい、可愛くないねぇ。」
 イツキが呆れたように憎まれ口を叩く。
 「生意気とは良く言われます。俺達も含めて。」
 リョウがあっさり認める。
 と、床が震えるように響く音が、一瞬の後観客の歓声が響き渡る(オミがピーピー訴える)。
 「兄ぃ…なんつぅ…。」
 「ホントに遠慮なく叩き込んだね。」
 リョウとヒロが呆気にとられる。
 「ぅーーん、バレー部、面子丸潰れだわね。」
 キョウコが冷ややかに呟く。
 「プレッシャーで固くなっちゃてるんじゃない?」
 イツキが一応フォローする。
 「この程度のプレッシャーに負けるようじゃ、公式戦で勝ち進もうなんて妄想だわね。」
 「えー…そこまで言っちゃう…?」
 ヒロが気遣わし気な顔を見せる。
 「キョウコちゃん、容赦ないねぇ…。」
 「でも、いくら部活に励んでいるからって半年程度の子達が、勝って当たり前とも思わないけど。」
 なる程。
 「それと同時に、たかが半年程度で、部活で頑張っている自分達は勝てて当たり前、って考えているんだとしたら、自惚れるのも大概にしろって思うけどぉ~。」 
 きっつぅーーい。
 「色んな理由で、スポーツを二の次にしている人は多いですからね。」
 リョウがフォローする。
 「君達みたいに家の手伝いとかかい?」
 「身体的理由とかも。」
 「部活って、やっぱり『大会で勝つ』を最優先しますからね。身体を鍛えたいって人には向かないし…。『好き』で『楽しみたい』って考えの人にも、やっぱり向かない。だから、そういう人は部活には入らないんですよ。」
 ヒロが説明する。
 が、この説明には穴があり、イツキがそこを尋ねる。
 「『大会で勝つ』を最優先してる人達が、それを二の次にしてる人達や『楽しみたい』って考えの人に押されるって変じゃないか?」
 「だって勝負って、力が拮抗してたら、後はオツムの中身の問題でしょ?」
 ソレはブカツちーむのセイトは○○ッテいッテルんデスカ?
 流石にイツキが、訊ねるに訊ねられずにいると
 「要は観察眼と多様化かしら、ね?バレー部クン達は、ちょっとワンパターンかなぁ…。」
 きっつい事を口にした本人がフォロー的な表現をしたので、イツキも騙される方を選ぶ。
 「成る程。避けるべきはワンパターンね…。」

文化祭に招待された ④

 オミがすっかりビビリーを曝け出していても、試合は進む。
 1セット目は僅差でシンやマサトの混成チームが先取し、2セット目は、これも僅差で部活チームの勝ち。
 「これって3セットマッチ?」
 イツキが今気付いたと尋ねる。
 「えぇ。他にも一応、体育館を使う予定がありますし、長くなると今日が何の日か分からなくなりますしね。」
 そーだった、今日は文化祭とかいう日だったね。
 エキシビジョン的で面白いんですけどね。
 イツキやリョウ、ヒロがわいわいと楽しげにしている中、オミはすっかり涙目状態になっている。
 「オミさん、泣きそう…。もう止めときます?ラストのセットだから燃えると思うけど…。」
 「燃えるって盛り上がるって事?」
 オミが尋ねると
 「えぇ。そりゃ、もぅ。」
 リョウが言い切る。
 「シンちゃん達は元より、相手チームも負けず嫌いが揃ってるみたいだし…。」
 お互い一歩も引かないだろうねぇ。
 ヒロが暢気に言い添える。
 それって…。
 オミが悩んでいると、甲高い笛の音がし試合が再開される。
 再開されてしまったら、もう席を外せない…。
 何しろ観客が大興奮状態なので、迂闊に動き回ると危険極まりない状況になっている。
 「オミさん、オミさん。」
 リョウが面白半分な様子で声をかけて来る。
 「オミさんは、どっちが勝つと思います?」
 「んー……、シン君達…?」
 半ベソ状態なのに律儀に答える。
 「それ、超能力抜きですよね…?」
 力を込めて二度ほど頷くオミ。
 「何か根拠とかあります?」
 ヒロが尋ねる。
 「部活チームはプレッシャーが強まるでしょ?勝って当たり前って。15・6歳で耐えられるかな?」
 「でも、そのプレッシャーって最初からあったハズでは?」
 「2セット目取ってイーブンになったから、嫌でも意識しちやうかなって…。」
 「でも、プレッシャーでダメになるなら、2セット目だって結構なプレッシャーだったんじゃ…?」
 「プレッシャーがどっか行っちゃうくらい集中してたんでしょ?ストレートで負けるなんてイヤでしょう。」
 なーる程。
 「でもこれからは、イーブンなんだから意識しちゃうのでは?シン君達も遠慮は要らないんだし…お膳立ては整ったって考えてるかもだけど…。」
 うん?遠慮?お膳立て?
 ヒロが尋ねようとすると、一際大きくボールの叩き付けられる音が響く。
 会場が一瞬静まり返り…、
 次の瞬間、揺れんばかりの大歓声があがる。
 シンの放ったアタックが、相手コートに叩き付けられた音である。
 オミが堪え切れずにイツキの腕にしがみ付く。
 泣くよ?オミ泣くよ?泣いちゃうからね?
 涙目でイツキに訴える。
 「大丈夫だから…。そんな怖がるなよ。」
 苦笑しながら宥める。
 タイガーも怯えてミーミー鳴いているのを、イツキが撫でて落ち着かせようとする。
 カズキ達かぶり付き組は、すっかり盛り上がり大きな声で声援を送っている。
 観客が大盛り上がりをし、オミが怯えまくっていても試合は粛々と進められる。
 「おや、まぁ…。随分と不敵な表情だこと…。」
 チームメイトとなにやら確認を取り合っているシンやマサトの、意外なほど冷静な表情を目にし、イツキが呟く。
 「あんなアタック決めといて…冷ややかだね。」
 「ぅー…、相手の覚悟の見極め用だったんでしょ…さっきの…。」
 「覚悟の見極めって…。」
 「じゃなきゃ…宣戦布告…。」
 物騒だな。
 「遠慮はしないって宣言かい。」
 呆れたように呟く。
 と、今度はブロックでシン達混成チームが止める。
 止められたボールは、部活チームの選手間の隙間へポテッと落ちる。
 再び上がる歓声。
 「これ、どっちが点取っても盛り上がってるんじゃね…。」
 イツキが小声で言うと、リョウがシーと口の前に指を立てる。
 「言っちゃダメッ」
 

文化祭に招待された ③

 時間になり試合が開始される。
 カズキがかぶり付きで、イツキは興味深そうに見ているが、オミは興味が有るのか無いのか…。
 オミは、ボーっとボールの動きを目で追っている。
 選手同士がかけあう声。
 ボールを追って走る足音。
 ボールを受ける音。
 それらの音を耳にしつつ、目でボールの動きを追う。
 ボールがコート中央のネットを挟み、右へ左へ。
 何度目かの応酬の後、一際大きく響く音。
 ボールが床に叩き付けられ、大きく弾む。
 カズキやミヅキ、ヤスノリ等が
 「おーーーーっ!」
 と歓声を上げる。
 が、オミは怯えた表情を見せる。
 「なんか、凄い音した…。」
 イツキの服の袖をつまみながら、小さい声で呟く。
 「うん、点を取りにいったからね。」
 「ボール破裂しない?」
 「しない、しない。」
 イツキが落ち着かせるように、笑いかけながら保証する。
 試合はオミの動揺などそっちのけで進んでいく。
 再び響く大きな音。
 盛り上がる観客。
 怯えるオミ。
 「ホントのホントに破裂しない?」
 「ホントのホントにしないから。」
 オミのその怯えっぷりに気付いたリョウが
 「オミさんて、この手の事苦手?単なるスポーツだけど…。」
 「突然響く破裂音が苦手なんだよ。仕事でもっとド派手な事してるのにな。」
 ここで又響く。
 怯えるオミ。
 オミが何度も怯えるからか、オミの膝上のタイガーも怯えた様子を見せ始める。
 イツキがタイガーを撫でて宥める。
 「兄ぃもマーちゃんも、結構馬鹿力だからなぁ。」
 リョウが呆れたようにタメ息を漏らしながら呟く。
 「シン君達の攻撃もすごいけど、それより守備が上手いねぇ。良く拾って繋げるワ、ホント。」
 前面でかぶり付き状態のカズキやヤスノリ、トシから歓声が上がる。
 シンのチームの一人が、相手のブロックでネット際に落とされたボールを素早く受け、味方に繋げている。
 「うーん、これは…相手が辛い…。あれを拾っちゃうかぁ…。」
 「今のスゲェ…。」
 「生きてるし、繋がったし…。」
 リョウやヒロまでが感嘆する。
 オミまでが釣られて身を乗り出す。
 右へ左へ、ボールが応酬される。
 「お互い意地で拾ってないか?」
 イツキが思わず零すほど、両チームがとことん拾いまくる為ラリーが続く。
 走る足音。
 かけ合う声。
 ジャンプをする為の踏み切る音。
 叩き付けられるボール。
 驚いてビクッと身を震わせるオミ。
 着地音。
 「オミさん、本当に苦手なんですね…。」
 同情するようにヒロが言う。
 「床…穴開かない…?」
 「「「開かない、開かない。」」」
 リョウ、ヒロ、イツキが口を揃えて否定する。
 

文化祭に招待された ②

 ミヅキやキョウコに勧められるまま席に座るイツキとオミ。
 カズキやリョウ、ヤスノリ、ヒロ、トシ等も直ぐ後から集まってくる。
 「カズキ君、結構足速いねぇ。」
 「フッフッフ。鍛えてますから…。主に逃げる方で。」
 にげ?
 「悪戯ばっかりするからだろ。」
 あー、お兄ちゃん達から逃げてるのね。それは鍛えられるね。
 「えーと、試合って聞いたけど?」
 話しを逸らすイツキ。
 「あぁ。シンちゃんやマーちゃんのいるチームが、バレーで男子バレー部の一年と試合するんです。」
 ヒロの説明に、イツキが驚き尋ね返す。
 「バレー部とバレーで試合?」
 「えぇ。生徒の賛成多数だったとかで…。」
 「体育館での催しを決める際に、幾つか案が出てたんですけど、その中の一つがコレで。大勢の生徒が面白がっちゃって。決を採ったら、あっさりと決まっちゃいました。」
 キョウコが事情を説明する。
 確かに、賛成多数と言われれば納得の、見学者数ではある。
 中々に広い体育館内にたっぷりと人が詰め掛けている。
 立ち見も随分確認できる。
 カズキ達までが妙な場所に陣取っているくらいだし…。
 ちなみに、カズキとミヅキはイツキやオミの前で足元に座り込み、ヤスノリとトシはミヅキの隣でオミの斜め前方、オミの脇、階段状になってる所へリョウとキョウコ、その後ろにヒロが座り込んでいる。
 床抜けるんじゃ…?
 不安気な顔を見せるイツキに、リョウが
 その時はヨロシク、超能力者サン
 と応じる。
 「ばれーって、ボールの方?踊る方?」
 オミがキョトンとしながら尋ねる。
 「ボールの方。ルール知ってます?」
 リョウが心配気に聞いて来る。
 「うん。一応は知ってる。どっちだろって思っただけだから。」
 オミの人見知りも、随分と緩和されたようで…。
 「賛成多数って、なんでそんなに面白がられたんだ?」
 イツキが至極尤もな疑問を口にする。
 「あー。それは…。」
 「ウチの学校って、新年度に球技大会を行うんです、って言ってもバレーかバスケなんですけど…。主に新一年生の親睦を目的にしてまして。全校参加ではあるんですが、三年は大抵手を抜いて行うので、半ば本気で参加しているのは、二年と一年なんです。で、通常は、体格の良い二年が勝つんですよね。普通なら。なのに今年は一年が勝っちゃったんです。シンとマサトの居るチームが。」
 「で、それを憶えていた生徒が提案した、と?で、皆が思い出して、ついでに面白がって、決まっちゃった?」
 キョウコの説明の後を受けるようにイツキが尋ねると、揃ってウンウンと頷く。
 「一応対戦相手は、男子バレー部とは言え一年生のみの構成なんですけどね。」
 一年生のみとはいえ、バレー部員ならば朝練もあれば夕練も有り、場合によっては昼練もあったりするワケで…、そんな生活を春から今時期の、秋の終わりまで続けていた生徒達が相手とは…。
 「シン君達のチーム構成って?」
 「バスケ部、サッカー部、各文化部、帰宅部。当たり前だけど全員男子。」
 「運動部は、まだなんか分かるけど…。」
 帰宅部?文化部?スポーツ苦手なんじゃね?そのメンバーで勝っちゃったの?球技大会?
 イツキとオミの頭の中に『?』が山盛り並んだ時、体育館内に甲高い笛の音が響く。
 どこぞでアップに励んでいたらしい、体操服姿の生徒達がぞろぞろと体育館中央へ集まってくる。
 「帰宅部って言っても、家の仕事を手伝うって生徒が多いから…。」
 ヒロが、試合の説明等を行っている放送の邪魔になら無い様、声を少々落として説明する。
 確かにシンやマサトは家の手伝いに励んでいるが…。
 「中学のときにバレーやってて、高校で違う部活に入ってる人ならバレーに参加できますし。」
 あ、その手があるか。
 「でも、シンちゃん達のチームで、それに該当する人ってバスケ部の人らしいんですけどね。」
 ダメじゃん。
 トイレ休憩を含み五分後に開始する旨放送が入ると、選手の生徒たちが時間を確認しつつ散って行く。
 その中の二人、シンとマサトが、イツキ達の席近くまで来て手を振ってくる。
 「間に合ったみたいですねー。」
 「おー、チケットありがとねぇ。」
 「いえいえ。試合頑張りますから楽しんで下さいね。」
 「シンちゃん、マーちゃん頑張ってねー。」
 コレはカズキ。
 席の前、イツキの足元に座り込み、転落防止用に設置されている柵に掴まっている。
 「カズキ、あぶねーぞ。もぅちょい下がってな。」
 「ミヅキまで、そんなトコに座り込んで…。」
 等々やり取りをし、選手の二人が他のメンバーに呼ばれて離れていくと、イツキがボソッと呟く。
 「シン君もマサト君ももてるだろ?」
 「あー、やっぱ分かります?」
 ヒロが応じる。
 「まーね。結構な人数の女の子が、二人の動きを目で追っていたし。」
 「でも、兄ぃは彼女いるんだけどねぇ。マーちゃんはフリーだけど。」
 「あー、前に言ってた娘?まだ続いてる?」
 イツキが尋ねる。
 「そりゃぁ…。」
 リョウがニマニマしながら答える。
 

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