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お邪魔します ⑤

 上はキョウコから下はカズキ迄の9人とオミ、オミにしがみ付いているタイガーの一行は、イツキに勧められるまま付近を散策している。
 とは言え、道とは名ばかりの、普段オミやイツキが歩きまわっている部分が踏み固められただけの所謂『山道』で、横幅は大人の男性二人が少々余裕を持って並んで歩ける程度、足元は所々に大きな石や木の根などが張り出しデコボコしているし、すぐ脇には草や低木が生えている。
 「見るものなんてあったかなー?」
 オミが困惑していると、すぐ傍らをピョコピョコと歩くカズキが声をかけてくる。
 「ねね、あそこに生ってるのイチジク?」
 「うん、そう。」
 カズキの声に促がされるように皆がそちらへ眼を向けると、少々離れた陽だまりでたわわに果実を実らせた木が見える。
 「すげーいっぱい生ってる。」
 「食べる?ここら辺のなら別に採って食べても構わないけど…。」
 「食べるー。」
 と言って、勢い良く陽だまりへ突進しようとするカズキをオミが慌てて止める。
 「いやいやいや。そこ段差だし。危ないから。」
 「だってー。」
 採りに行かなきゃ採れないじゃん。とかーるく口を尖らせ抗議する。
 「ちょっと戻って回り込めば安全に行けるから…。」
 「ん?」
 戻って回りこむ…。
 地形を見つつ脳内でルートを辿るカズキ。
 「あ、ルート発見。行ってくるー。」
 「「俺の分もー。」」
 お兄ちゃん達が声をそろえて便乗する。
 「持てないよっ!」

 「この先に何があるの?」
 「んー、ちょっと広めの川がある。浅くてね、魚が結構泳いでてタイガーが狩りして遊んだりするんだけど。」
 「へー、タイガーちっちゃいのに生意気に狩りするんだ。」
 「ちーっちゃい魚を捕まえたりしてるよ。低い位置の岩の上とかからペシーッってして。」
 「ペシーッで獲れるんだ…。人間だと獲れないよねぇ…猫の手すげえ。」
 話題の主は、オミの胸元にしっかりとしがみ付いていたりする。
 この甘えん坊が泳いでいる魚を獲るぅ?不思議だ…。
 カズキが怪訝そうな表情でタイガーを見ていると、タイガーは何を勘違いしたのか、より一層甘えるようにオミに頭を押し付ける。
 「取んないから、タイガー。安心して。」
 手をヒラヒラさせながらタイガーに声をかける。
 「川なら手が洗えるね。果汁タップリだったからベタベタしちゃって…。」
 
 「ひゃーぃ。川。すげー水キレー。」
 カズキがヒョイと振り向き、入っても構わないかと眼で訊ねる。
 「いいけど…、あんまりズボンをたくし上げないでねっ。」
 オミの返事を耳にした全員が笑いつつ首肯して返事をする。
 「すげえ。川底までしっかり見える。浅いってのもあるんだろうけど…。」
 ヤスノリが感心して言うと
 「川床や川壁が石だからかな?」
 「てか、『ちょっと広め』って言ってたよね…?これで『ちょっと』?」
 「か~るく20㍍はありそうな…。」
 「で、やたら浅い。」
 トシが奥へ奥へと進むカズキの様子を見つつ呟く。
 カズキはそろりそろりと深さを確かめつつ川の中央へと歩を進めているが、その深さはカズキのくるぶしが隠れる程度で、少々深めの所でもくるぶしが15㌢も隠れる事が無い。
 「すごーい、浅ーい。あ、魚発見。って、大群でいるぅ。」
 カズキが興奮状態で報告すると
 「おぉー。なんかすげー。山ほどいる。」
 カズキの後を追って来ていたトシまでが興奮した様に口にする。
 直にあちらでもこちらでも
 「おぉ。すげえ。」
 「山盛りいる。」
 「綺麗な色してんねー。」
 口々に感想が零れ出す。
 キョウコやミヅキも混ざって賑やかに川辺でアレを見かけたのコレが居たのとやってる中、案内してきたオミはというと、少々離れた川岸で地面に下ろしたタイガーと水面を眺めている。
 オミは、川岸の特に浅い部分にいる川魚の動きを、眼で必死に追っているタイガーの姿を微笑ましく眺めながら、浅いとは言え足を滑らせでもしたら大事になりかねないので、周囲の様子にそうとは気付かれぬ様に気を配っている。
 「カズキィー、お前あんまり奥まで行くんじゃなーいっ。いっくら浅くても危ねーだろっ。」
 と、シンの声がオミの耳へ届く。
 あれ?オミが気にかけなくても注意してる人がいる。
 オミが不思議そうに顔をあげる。
 「コケても知らねーぞ。水の中の石は滑りやすいんだからな。」
 「着替え持ってきて無いだろぉ?」
 シンだけでは無くマサトも声をかけている。
 『おっきいお兄ちゃん』の言葉に耳を貸したか、言われたことの内容に納得したか、カズキがそろりそろりと岸寄りへと戻ってくる。
 「いっくら浅くても、コケたらずぶ濡れだもんねぇ。」
 「尻餅ついただけで情けない有様に…。」
 ヤスノリの科白を受けたようにヒロが言うと、その状態を想像したトシが吹きだす。
 「それは…哀しい…。いくらなんでも哀しすぎ…。」
 「カズキだけじゃなく、俺達もだけど、お前らも気をつけろよ。ずぶ濡れで歩いて帰らないとならないんだぞ。」
 シンがダメ押しに4人組へも注意を促がす。
 「「「はーい。」」」
 聞き分けよく返事をする4人。
 「ま、自分がコケたらカズキに偉そうなこと言えねぇわな。」

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お邪魔します ④

 オミが開け放たれた窓の傍に立っていると、足元でなにやらコソコソと気配がする。
 タイガーは抱っこしているから違うし…、一体何が?と視線を下に向けると…。
 小柄な少年がオミの足下にしゃがみ込み、服の裾をコソっとたくし上げようとしているのが目に入る。
 「あ?バレちゃった。」
 えへへー。
 大して悪びれもせず、笑って誤魔化すカズキ。
 「ズボンとか穿いてるかなー?って。どんなズボンかなぁ?って。つい…。」
 「穿いてるしっ!カズキ君は男に興味ある子なの…?」
 「ありません!」
 どキッパリと答える。が、すぐさまヘロっと表情が変わって
 「でも、隠されると気になるし。見せるな・隠せとか言われちゃうとすっごく気になるし。オミさんってばキッチリ隠してるし…。表着の下はどーなってるのかなー?って、ズボン穿いてないのかなぁ?って…。」
 にへにへしながら言い訳する。
 「穿いてるけど、見せません!」
 「いーじゃぁん、ズボンくらい見せてくれたってー。」
 「ヤだし。ダーメ。」
 「えー…っ。」
 二人が軽く押し問答をしていると
 「ねね、そんなに見せちゃダメなら、泳ぐときとかどーするの?」
 ヤスノリがカズキ並の好奇心を表し訊ねる。
 「オミ、泳がないし。」
 あっさりと否定される。
 泳がない、左様でございますか…。
 「罷り間違って、水の中に落ちちゃった時とかは…?濡れた服とか。」 
 トシが食い下がる。
 「オミはすぐ乾かせるし。」
 そーねー。そー言えば超能力者サンでしたねー。大体そう簡単には落ちないねー。
 「んーー?あれ?そーしたら…、カズキは海と川と湖で遊ばしてもらうつもりで、お邪魔したワケだけど…?」
 どーなるんだ?
 「オミが見なければ良いだけだよ。」
 カズキが首を傾げていると、イツキが横から口を挟む。
 「で、だ。話はかわるけど、夕飯何が良い?好き嫌いあるか?」
 「特にはなにも…。って、手伝うよ。」
 『お兄ちゃん達』が答えると、
 「はいっ、はいはい。カズキ食べたいものありますっ!」
 お兄ちゃん達が少しは遠慮しろと止める間もなく、カズキが元気良く応える。
 「はい、カズキ君。何が食べたいね?」
 「カズキね、カレーライスとか言うヤツ食べたい。」
 「は?」
 カレーライス?
 「なんかー、香辛料とかいっぱい使って、野菜とか肉とか煮込んで、ご飯にかけて食べるの。」
 「えーと…?カズキ君も食べた事が無い、と?」
 「テレビで見たの。美味しそうなんだ、コレが。」
 まぁ、確かに香辛料は手に入りにくいモンだし、滅多にお目にかからないけど…、おねだりするかぁ?
 お兄ちゃん達が微妙に複雑な表情を見せるなか、オミが
 「あ、オミそれ知ってる。キーちゃんの本で見た。取ってくるから待ってて。」
 言い置いて、相変わらずしがみ付いているタイガーと共に部屋を出て行く。
 「イツキさぁん、無理なら無理って言っていいんですよ。カズキだってダメ元で言ってるんだろうから。」
 シンが見兼ねて声をかける。
 「あぁ、うん。無理なときは無理って言うから、安心して。知らない事はやり様が無いからねぇ。」
 「なら、いいんですけど…。カズキ、お前は我儘ばっかり言うんじゃないよ。」
 「わかってるしー。ダメなら諦めるしー。」
 負けずに減らず口を返す。
 「生意気じゃん?」
 シンが拳骨を見せ威嚇する。
 うきゃっ!
 カズキはそそくさとイツキの後ろへ回り込み、イツキを盾にし
 「おりこーするぅ。」
 「よろしい。」
 そう言えば世の中には『教育的指導』とか『鉄拳制裁』とかって言葉があったねぇ。
 二人のやり取りを眺めつつ、イツキが暢気に考えていると
 「あったあった。これ。」
 オミが料理本を片手に戻ってくる。
 「カズキ君が言ってたのってコレでしょう?」
 手に持った本のとある1ぺーじを開き、指し示す。
 「あ、うん、そうそう、これっ!美味しそうでしょ?出来るかな?」
 不安げにイツキを見上げるカズキ。
 「うーん…、ん?んんー…これは…。」
 とある一点を目にし、難しげな表情をするイツキ。
 「無理?」
 益々不安そうになるカズキ。
 「今日はちょっと無理かな…。」
 「?今日は?」
 「スープストックが無いんだよね…。肉も一晩寝かした方が良いみたいだし…。」
 イツキは苦笑いを浮かべる。
 「明日で良ければ出来るよ、多分。」
 「じゃ、じゃ、明日。明日カレーで。」
 カズキは目を期待でキラキラさせながらリクエストする。
 分かった、分かった。
 ひゃっほーい。
 喜びでじっとしていられないカズキは、そこらをピョンピョン跳ね回る。
 「イツキさん、無理してない?」
 マサトが気遣わしげに訊ねると
 「してない、してない。この香辛料なら一応、一揃いあるしね。それより…気になる事が1つ…。」
 「?」
 「カズキ君って、もしかして…動かないでいるとダメな子?」
 イツキのその科白で、ん?と振り返るカズキ。
 「あー、あいつはねぇ…、落ち着きが無くて…。」
 「カズキねぇ、大人しくしていると死んじゃうビョーキだから。」
 カズキは自分の事なのに全く気にせず、ケロっとした顔で言い放つ。
 「し…死んじゃうのぉ?」
 オミは真に受ける。
 「それぐらい、大人しくしていられないって事だろ。」
 あぁ、なる程。

お邪魔します ③

 ととととっと軽快な足音と共にカズキが姿を表す。
 「あ、オミさーん、お邪魔してまぁす。」
 と、まるでそれを合図としたかのようにワラワラと全員が顔を出す。
 「「「お邪魔してまーす。」」」
 上はキョウコから下はミヅキまで、で総勢8人が口を揃えての挨拶は中々の迫力。
 「い…いらっしゃい…。」
 少々気圧されるオミ。
 「ねねイツキさん、こんなカンジでどう?」
 カズキが荷物を手に下げつつ、上着の袖を摘みながら腕を伸ばして見せ、傍らに居るイツキに声をかける。
 「いちおー隠したけど…。」
 「「俺等も。長袖、長ズボンに。」」
 男子が揃って、腕と足を隠したよと見せる。
 「ごめーん、夏用のって七部丈パンツしか持ってなくて…。後は膝下スカートしか…。」
 「あたしもぉ…。」
 キョウコとミヅキはバツが悪そうな顔で言う、が、キョウコはあっさりと開き直って
 「ダメなら、なんか貸してください。」
 「ウチに女の子用の服があるワケないでしょっ!」
 えへへー、じゃ仕方無いからコレで…。
 全く悪びれる様子が無い女子二人。
 「で、ですねぇ、順番が前後しちゃったんですけど…。」
 雰囲気を丸っきり変えてキョウコが声をかけつつ、弟のヒロに目配せをする。
 「コレ、両親から預かってきました。」
 目配せを受けたヒロが、手に持っていた荷物を差し出すと同時にキョウコが言い添え、シン、マサト、ヤスノリ、トシ、カズキも、それぞれが両親に持たされたであろう手土産を差し出す。
 「ウチも。お世話をかけるんだから、せめてもの『気持ち』をって。」
 シンが合わせて言い添えると
 「「「改めて、お世話になります。」」」
 全員で一斉に頭を下げる。
 「え?え、え…?」
 イツキとオミがうろたえる。
 「いや…、そんな…、気を使わないで…。」
 イツキは辛うじて応えるが受け取ろうとはせず、オミは『え?』の表情のまま固まってしまう。
 「いえいえ。お受け取り頂きませんと…。親から『きちんとお渡しするように』と厳しく託っていますし、持って帰るわけにも行きませんので。」
 キョウコが科白も態度も改めつつ食い下がる。
 「『厳しく』…ね。」
 イツキが呟くと
 「「「はいっ!」」」
 全員が声をそろえて応え、手土産を捧げる様に押し出し、尚一層頭を下げる。
 「分かった、分かりました。有り難く頂戴します。ご両親にお礼を『有り難う御座います。お気遣い恐れ入ります』とお伝え下さい。」
 流石に断るわけにはいかないと、イツキが観念し応えるが
 「でも、ごめん、悪いんだけどソコのテーブルに持って行って貰えるかな?いくらなんでもそんなに持てないよ…。」
 バツが悪いのを笑顔でごまかしつつ
 「PKで受け取ったり、移動させたりじゃぁ失礼な気がするしね…。」
 言い訳する。

 「開けてみてもいいかな?」
 テーブルに乗せられた手土産を前に、イツキが気を取り直して訊ねると、全員が揃ってどうぞどうぞと勧める。
 「じゃ、お言葉に甘えて…。」
 イツキはいそいそと封を開けようとするが、オミはキョトンとした表情のまま、イツキの傍らから顔を覗かせている。
 どうもオミは、居合わせている顔触れとその場の流れの不一致感に対応しきれていないらしく、臆してしまったようで…。
 とはいえ興味はあるらしく、イツキの傍らからタイガーを抱えつつ覗き込む様子からは、好奇心が表れている。
 「まずはこちらから…。」
 手を伸ばしたのはキョウコ、ヒロ姉弟からの、いかにも感溢れる…、
 「あ、『酒』。」
 オミが思わず呟く。
 皆が首を縦に振り肯定を表す。
 「お二人とも結構強いし。オミさんはハマってたなって思って…。」
 それぞれの手土産は以下のとおり。
 シン、リョウ ⇒ 燻製品三種
 マサト ⇒ 自家製ミソ、出汁三種
 ヤスノリ ⇒ 自家製パン(定番四種と新作)
 トシ ⇒ 和菓子詰め合わせ
 ミヅキ、カズキ ⇒ 高級チョコ詰め合わせ
 「まさか駄菓子を詰め合わせるワケにもいかないよな、って父が。」
 とはトシ。
 「ウチもー。まさか鍋、釜、箒やハタキを持ってくるワケにも行かず…。」
 コレはミヅキ、カズキ。
 「ウチの自慢、って父が得意気に…。」
 「親戚から大量に送られてきまして…。」
 「気に入って頂けたみたいだから、って。で、自信の新作はお披露目もかねて。」
 とは、それぞれの弁。
 「「「いくらお金をかけても、稼いでいると思われるイツキさん達には珍しくもないだろうからさー。」」」
 「って、マーちゃん、ウチのお味噌、そろそろ切れそうなんだけど…。」
 カズキが思い出した様に言うと
 「ぃゃお前ソレ、今俺に言っても…。」
 「あ、そ・か。」
 テヘヘヘーと笑って誤魔化す。
 

お邪魔します ②

 「階段上がって、正面の2部屋が二段ベッドがある中で繋がってる部屋ね。」
 イツキが部屋を簡単に紹介しながら案内する。
 ドアを開け、中を目にした途端に
 「あ、カズキ上の段に寝たい!1回でいいから上がいいー。」
 「「俺だって上がいい。」」
 カズキに先を越されたとは言え、リョウ・トシ・ヒロ・ヤスノリの四人も負けじと希望を述べる。
 「自分たちで決めてね。」
 その件には関わりたく無いとばかりにイツキが応える。
 「あ、こっち側のが部屋が広い。」
 中で繋がった部屋の片方から、隣の部屋を覗いたカズキが部屋の僅かな違いを口にすると
 「じゃ、そっちを3人で使ってコッチは2人で使うって事で…。」
 トシが人数割りを提案…
 「お風呂はそっちのが広いー。」
 カズキがダメ押しをする。
 「いや、この二部屋の風呂の広さは同じハズだけど…。」
 「え?そなの?じゃぁ、広そうに見えるだけか。」

 「次は、階段を左に回り込んで…吹き抜けの隣。ここも男の子用ね。心持ち暗いけど、落ち着くんだよね、この部屋。」
 「あ、こっちの窓から下の部屋が覗ける。」
 ヒロが部屋に入って、右側にある窓を覗き込む。
 「お風呂は…せまめ?イツキさん、イツキさん、お風呂のコッチ側の部屋ってナニ?ちっちゃい部屋がある。」
 カズキパワー炸裂中。
 皆で見て回っているが、年齢的に好奇心を抑え切れないのはカズキってだけで…。
 「サウナだよ。」
 「それって、とんでもなく熱くて、汗ダラダラかく為の…?」
 「そ・そ。」
 「へー…。さっきの部屋には無かったよねぇ…?」
 「うん、あっちには付けてないね。あの部屋は元々子供用の部屋だったんだよ。だからバスルームも、元はバスタブ無しでシャワーしか付けてなかったんだ。子供用の部屋にサウナもバスタブも危険だからねぇ。」
 「子供部屋ねぇ…。あ、だから二段ベッドなのか。」
 トシが今気付いたと口にする。
 「そゆ事。」

 「で、こっちの奥が女の子部屋ね。コレが鍵。廊下側ドアとテラス側ドア分。」
 「「おー。こっち広ーい。」」
 男共が一斉に感想を述べる。
 「全体的にチョッピリ広いだけなんだけど…。窓の部分が多いから、少し落ち着かないかもしれないね。」
 「テラス良いなー、テラスー。」
 男共が羨ましがる。
 「遊び来ても良いよね。散らかさないから。」
 カズキがおねだりする様に訊ねる。
 「良いけど、お風呂タイムには帰って貰うわよ?」
 「はーい。」
 そんなスケベな下心なんて御座いません事よ…。
 カズキがわざとらしく、照れながら否定する。
 「あ、こっちの風呂にもサウナがある。」
 「元々、大人部屋って事かぁ。」
 風呂を見て居たのはヤスノリとトシ。
 「風呂も広めだね。」
 「じゃぁ、荷物片付けたら下のさっきの部屋へおいで。俺は先に降りてるから。あーーっと、言い忘れてた。」
 「「「?なに?」」」
 「下に来る時、腕や足は可能な限り隠してね。」
 「「「へ?」」」
 「そーいや、イツキさんもオミさんも隠してるねぇ。」
 「重ね着だねぇ。」
 「何故なのかは、わからないけど…。」
 「まぁ、涼しいし。」
 「「「はーい。隠すー。」」」
 
 少年少女達が二階でワヤワヤと賑やかにしていても、オミは一向に、全く気付かずパズルとの悪戦苦闘を繰り広げている。
 タイガーはオミの『お篭り部屋』のドアの外で、やっぱり入れない、と項垂れつつ座っている。
 オミの背中、リビング側から窓が軽く叩かれる。
 オミが不思議そうに振り向くと、イツキが立っていて、こちらへおいでと手招きしている。
 なんだか良くわからないけど…呼んでるし、行っておくか。とテーブルに広げたパズルをざっと片付け部屋を出る。
 と、足下から鳴き声が聞こえる。
 タイガーが情けない鳴き声を出しつつ、オミの足下へじゃれ付いてくる。
 「タイガー。いつからここに居たの?」
 タイガーを胸元へ抱き上げ、声をかける。
 ミーミーミーミー。
 頭を擦りつけながら甘え鳴きをするタイガー。
 オミはすっかり甘えん坊状態のタイガーを連れ、リビングへ戻る。
 リビングへ入ったところで、二階が賑やかなのに気付き、上へと目を向ける。
 「お前…今の今まで気付いてなかったのかよ…。」
 イツキが呆れた様にため息を漏らす。
 「だって…。いつ着いたの?」
 「んー…一時間は経ってないけど。」
 「呼び鈴とか鳴ってた?」
 「普通に鳴ってたさ。」
 「そ・そう?」
 全然聞こえませんでした…。
 

お邪魔します ①

 吹き抜けのサンルーム。
 開け放たれた大きな窓の外。
 葉の繁った枝を大きく左右に広げた太い木の根元で、タイガーが心地良さ気に昼寝をしている。
 実は不貞腐れからの昼寝ではあるが…。
 と、耳をパタつかせ顔を上げる。
 遠くに見えるオミの様子に目を向ける、が特に目立った動きが無いと確認できるのみ…。
 聞こえて来たのは、離れた場所での微かな呼び鈴の音。
 応じるイツキの声。
 タイガーは寝惚けながらも、開け放たれた窓から家の中へと戻る。

 「ひゃー、おっきぃ家ぇ。」
 荷物を抱えたカズキが目をまん丸にして口にする。
 「お邪魔しまーす。」
 とキョウコが言えば
 「お世話になります。」
 「図々しく便乗しちゃって済みません。」
 シンとマサトが軽く会釈しつつ挨拶する…が、
 「すぅ~ずしー♥」
 「二人と一匹でココ使ってンのぉ?」
 「広すぎね?」
 「涼しぃ~ねぇ、クーラーとかいうものがあるとか?」
 「でかーい。」
 「あっさり『いいよ』って言うと思ったら…。」
 「クーラーあるの?凄くない?電気どうしてるの?」
 他の六人は、口々に感想(?)を口にする。
 お行儀悪すぎ、とキョウコ・シン・マサトからゲンコツを貰う六人。
 「「「お、お邪魔しまぁ~す。」」」
 「ひとまずリビングで一息入れるといい。」
 ワヤワヤと騒ぐ彼らを、苦笑を堪えつつリビングへ案内するイツキ。

 タイガーが窓から家の中へ戻り、賑やかな声を頼りに部屋を通り過ぎ境まで辿り着くと、微かに聞き覚えが有り、僅かに記憶にある匂いが漂ってくる。
 「あ、タイガー。おーい、久しぶり、覚えてる?」
 エート?
 小首を傾げるタイガー。
 「忘れちゃった?」
 ウーンと…?
 より首を傾げる。
 「一緒に遊んだじゃーん。」
 ソ・ダッケ?
 「あんなに仲良く遊んだのに…あんまりだよ…。」
 ソレはドウモ失礼ヲ…。デ、ドチラ様デシタッケ?
 タイガーはおもむろにクンカクンカし始める。
 ナンカ知ってる…、エート…。
 クンカクンカ。
 楽シカッタ時ト同ジ。
 クンカクンカ。
 ウーント…ウーントぉ…。
 クンクンクンカ。
 「まだ思い出せないか…。コンニャロメ。」
 耳の間の頭のてっぺんをツンツン。
 ヤメテヨー。ナニスンノ、コイツー。
 タイガーがひょいっと顔をあげると、自分を覗き込んでいる悪戯っ子な表情をした顔と目が合う。
 知ッテル顔…。ダレダッケ?声モ知ッテル…。
 「カズキだよ。もー、ちゃんと憶えててよねー。」
 ア。ソ・ダ。かずきダ、かずき。
 ヨク来タネ。マ、コッチへ入リナサイ。広クテタップリ遊ベルシ、気持チ良イ風モ通ルカラ。
 「タイガーに案内されてしまった…。」
 「その様で…。」
 タイガーが一丁前に先導する様子に、可笑しさを堪え切れないイツキが微苦笑しながら応える。
 「そこらの椅子に適当に座って。今、何か飲み物持って来るから。」
 「「「はーい。でも、お構い無く。」」」
 全員が口を揃えて返事をする。

 「しかし…デカイな。」
 イツキが下がった後、大きく息をしてシンが一言漏らす。
 「こっち側、お前ンとこみたいに上迄吹抜けだわ。」
 部屋に入ってすぐの所で椅子に腰掛け、背もたれに頭を預けたマサトが応える。
 「天井高ぇー。」
 「窓デケェ。」
 「外に出れるね、この窓ンとこから。」
 「涼しいのって、風の通りが良いから?窓フルオープンになってるよ。」
 「外にデッカイ木がある。」
 「階段の横幅も広かったね。」
 「階段を通りきったところの反対側にテーブルと椅子が見えたけど…。」
 「あー、あそこ食堂?あの部屋も広そうだったねぇ。」
 「で、二人と一匹でしか住んでないんだよねぇ…。」
 「む、無駄に広いっ!」
 口々に感想を述べ合う。
 まぁ、他所様の家は興味の的になり易いし、お邪魔できる機会があればフル活用したくなるもので…。
 「あれ?テレビが無い…?」
 カズキがキョロキョロと辺りを見回し、確認し直しつつ気付いた点を口にする。
 「あ、本当だ。無いねぇ。」
 皆も見回して確認していると
 「おまちどう。って、どした?」
 飲み物と焼き菓子を載せたワゴンを押しながら、戻って来たイツキが声をかける。
 「あ、ありがとーデス。テレビが無いねって話してたの。」
 キョウコが礼を言いつつ、キョロキョロしていた理由を説明する。
 「あぁ、そ・ね。ウチじゃテレビ見ないから仕舞い込んじゃってるんだよね。」
 「えっ!テレビ見ないの?ってか、ここって日本でいいの?」
 カズキが素早く反応する。
 「日本領内だよ、一応は。テレビは見ても、二人ともすぐ飽きちゃうからねぇ。」
 「へぇ、テレビ面白いけどな、カズキは。」
 「ところで。オミさんだけど…、あそこでずーっとナニしてるの?」
 脇にある半独立型の部屋の中で、オミが一心不乱に集中している後ろ姿を指し示しつつヒロが訊ねる。
 「オミはパズル中。熱中しちゃうと、周りの音や声が耳に入らなくなるから…。タイガーは立入禁止食らったしね。」
 「タイガー、入っちゃダメって言われたか…。」
 トシが気の毒そうにタイガーへ声をかける。
 アッチ行ッテテッテ言ウノー。一緒ガ良イノニー。
 「ピースをペシペシってしちゃうから、ダメって言われちやうんだよ。」
 ぴーす?ナニソレ?
 「タイガーと会話が成り立っている様に見えるよ…。トシ君もそうだし、さっきのカズキ君も。」
 「タイガーって表情や仕草が豊富だから。」
 「パズルってこの間買って帰ったヤツ?」
 ミヅキが訊ねる。
 「そ・そ、あの大きいヤツ。タイガーにピースをペシペシペシーッってされて以来、パズルをする時はあそこの部屋に篭るようになったんだよ。あそこならこっちから見えるから、すぐに『居る』って分かるしね。」
 「あの部屋って、タイガー用の出入口が無いの?」
 「タイガー用の出入口に物を置いて、入れないようにしちゃってるんだ。」
 「ありゃま。それじゃぁ、淋しいねぇ、タイガー。」
 ソーナノ。サミシーノ。分カッテクレル?
 分かる分かる。
 うんうんと頷いて、タイガーを撫でるトシ。
 「それでー、部屋なんだけど、使って貰う部屋は一応準備できてるんだけど…、誰がどの部屋使うか決めて貰える?あ、女の子の部屋は二人一緒でね、中から鍵の掛けられる部屋使ってね。」
 「「はーい。」」
 二人の女子は気軽に返事をする。
 「中から鍵…。」
 「それは俺達への牽制だね。」
 「イツキさんやオミさんには、鍵なんて意味無いもんねぇ。」
 男子連中は複雑そうな表情を見せる。
 「『一応』ね。キョウコちゃんやミヅキちゃんのご両親、特にお父さんへ『女性として配慮していますよー』ってアピールにね。で、男子部屋は二人用を3部屋準備したから。そのウチ2部屋は二段ベッドで、エキストラベットもあるし、この2部屋は中で繋がってるよ。」
 「へー…。」
 良く分かってない返事。
 「じゃ、その繋がってる部屋をお前らが使わせて貰えば良い。俺とマサトでもう一つの部屋を使わせて貰うから。」
 「中で繋がってるんなら、四人部屋みたいなもんだしな。エキストラベッドいれたら六人部屋か。」
 リョウが想像しながら呟くと、ヤスノリが気になっている事を訊ねる。
 「ってさぁ、家自体もデカイし、部屋数多いし…、なんで?」
 「んーー、むかーし、ね。入用だったんだよ。今はちょこ・ちょこ、ね。あ、バスルームは注意してね、外から丸見えになるから。」
 「それって、鍵がついてても危険な気がする…。」
 ヒロが呟くと
 「あははー。夜ね、風呂入りながら外見るとスゴイよー、綺麗だよー。でもカーテン閉めるか、どーにかしないと外から丸見えなんだよねぇ…。ま、カーテンの下の方を閉めて、上だけ開けてるだけでも楽しめるよ。」
 「それ、男部屋も?」
 「残念ながら…。」
 悲痛そうな表情をしてみせ、僅かに首を振る。
 「「「えーーーーっ!!」」」
 途端に巻き起こるブーイング。
 「う・そ。バスルームからの眺めは男の子用の部屋の方が良いよ。でもその分、外に人がいたら丸見えだから気を付けてね。」
 

文化祭に招待された ⑪

 キョウコやシン、マサトの通っている高校の正門、人々が次々と通り、それぞれの方向へと歩き去っていく中、それらを見送るように門の脇にゆったりと纏まって立っている団体の姿。
 「お待ったせー。」
 リョウが元気に声をかける。
 カズキの家へパズルの仕入れ元を確認に行く為に待ち合わせていたワケだが…。
 「キョウコ姉は、片付けにも参加するから先に帰っててって。」
 「入試相談どうだった?入れそう?」
 「俺達と同じ2年でしょ?もう絞り込んでるの?」
 「地元の学校には進まないの?コッチって遠いんでしょ?」
 「ご家族は本当に良いって言ってるの?離れる事になるのに。」
 「寮に入るの?それともどこか借りるとか?」
 顔を合わせた途端に質問攻めに合う。
 イツキやオミがその様子を見て、思わず苦笑を漏らす。
 カズキがカズキなら、お兄ちゃん達もお兄ちゃん達なワケで。
 寧ろカズキは、お兄ちゃん達を見て育った面があるのだから…。
 「受かったら後輩じゃん。」
 「1年間は一緒か。」
 後片付けを免除されたシンやマサトも居る。
 「お土産あるよー。お菓子詰め合わせ。」
 はい、これ。預かったぶん。
 カズキが当たり前の態度でお菓子が詰め合わされた袋を渡す。
 「そーいや、名前なんて言うの?『次代』って本名?」
 「いえ、モトザネと言います。」
 『次代』と呼ばれた少年が名乗ると
 「おぉ。なんか格好いぃー。」
 「むかぁしのサムライみたいだねぇ。」
 「じゃぁ、『次代』ってナニ?なんでそうゆう風に呼ぶの?」
 「それは通称と思って下さい。ウチでは、跡取りをその様に呼ぶんです。」
 へぇー、そーなんだぁ。あ、お菓子ネ、残っちゃったヤツだって。色んなクラスの人から貰っちゃった。残り物ヤダ?
 カズキは感心はしても実感が伴わないらしい。
 「じゃ、もし何かあって、跡取りが変わった場合、呼び名はどうなるの?」
 ヤスノリが不思議そうに訊ねる。
 「新たな跡取りが『次代』と呼ばれます。それまで跡取りだった者は、以後名前で呼ばれます。」
 「へぇ。でも、それって跡取りじゃなくなった人は辛いねぇ…。」

 わいわいガヤガヤと連れ立って歩いている団体。
 次代と呼ばれ、モトザネと名乗った少年には当然、護衛が同行しているがシンを始め誰も気にかけない。
 そんな、モトザネが混ざっている事に馴染みきった少年達の、少し後を行く超能力者二人は、二人ともが微妙な表情を見せている。
 「ね、キーちゃん。もしかして…もしかするんだよねぇ…。」
 「する、ねぇ。」
 「恐ろしい引きっぷりだよね。」
 「もしそうなら、だけどな。」
 「カズキ君になら、その気になれば、いつかは辿り着いたんだろうけどねぇ。金に物を言わせて調査しまくれば、店を特定するくらいできるもんねぇ。」
 「差別の少ない町の実地見聞と、『偶然に』パズルの売り主と…ってのがな。」
 「『もしそうなら』、もぅ一つ増えるかも、だし?」
 超能力者二人がヒソヒソやっているとカズキの声が聞こえてくる。
 「やっぱり歩き食べって抵抗ある?あんまり食べてないみたいだけど…?」
 「はぁ…少々。ですが、それより不思議で。地元ではこんなに色々な種類は見かけないものですから。」
 「もしかして、ご家庭オリジナルのお菓子?これ。」
 普通に店で売っているモノを、真似したんだと思ってた…。
 カズキがまじまじっと手にしているお菓子を凝視し、勢い良く口へ放り込む。
 「おいしーよね。」
 モトザネへと、にこにこと無邪気に笑顔を向ける。
 「えぇ、美味しいですね。女の子が好きそうな食べ物って思います。」
 野郎ばかりで食べてますが…?
 そっかー、女の子の好きそうな食べ物だったのか…。
 複雑な心情が溢れた、微妙な雰囲気が漂う。
 モトザネが表現が悪かったか?と焦り気味になる中、ミヅキが唐突にシンに訊ねる。
 「そういえば、シンちゃん。なんで彼女サン招待しなかったの?」
 イツキとオミが一瞬固まる。
 「なんでって…、あの人混みだし。」
 イツキやオミの様子に気付いていないシンは、至って当たり前の事といった態度で答える。
 冷やかしに向かうと分かっているだけに、余りその話しには触れて欲しくないようだ…。
 「杖使ってたら歩きにくいか…。」
 リョウが飄々と口にし、
 「杖で歩けるぐらいになったんだぁ。リハビリ頑張ってるんだね。」
 トシが述べる。
 幼馴染み組み全員がシンの彼女と面識はあるが、イツキやオミは話しだけで、当の相手との面識はない。
 とは言え、二人は仕事絡みで色々耳にする事も多く、とある話題Aと話題Bを個別ルートで耳にし、共通点に気付く事が多々あるワケで…、今回に限って言えば、思い過ごしとは言えない状況となりつつある。
 「まだ、あんまり長時間や長距離は無理らしいけど…。」
 シンが、しょうがないなとばかりに説明をする。
 「一旦は諦めたリハビリを、又頑張り始めたって…凄いねぇ。」
 ミヅキが意味ありげに、ニマニマしながら言い出す。
 冷やかしに入るなと察したシンが、機先を制しようと口を開く。
 が、どうやら自爆した模様…。
 「ちょっと考えれば、車椅子より杖を使ってでも歩いた方が便利だ、って分かるんだから…そりゃ、頑張るだろ。」
 「そんなの、最初から分かってたハズじゃん。」
 「しんどくて諦めちゃってたんだろ?」
 「リハビリって、時間が経ってからだと何倍も大変になっちゃうんでしょ?」
 「踏ん張りが効かないし、身体を庇うとかも殆ど出来ないから、コケると叩き付けられるみたいになっちゃうんだろ?」
 「青痣まみれになっちゃうねぇ。」
 「「「でも、又頑張り始めたんだよねぇ。シンちゃん?」」」
 中学生組みプラスカズキにニマニマされながら、尚且つ口を揃えて言われる。
 開き直って惚気られないあたりは、まだまだか。
 幼馴染み組みが、シン『を』彼女『で』冷やかしている間、聞くともなく聞いていたモトザネが不思議そうな表情をし始める。
 そんなモトザネの様子と、話題を考慮した超能力者二人の微妙な表情に拍車がかかる。
 「ミヅキと同い年だっけか?根性あるよな。」
 「同い年、同い年。」
 ウンウンとミヅキが頷く。
 モトザネの表情に気付かないのはまだしも、超能力者二人の表情にすら気付かず、『シンの彼女』ネタで盛り上がる。
 「いくらなんでも、もう土産渡したんだろ?」
 マサトまでが参加する。
 「え?お土産って?なに?」
 カズキが食いつく。
 「夏の…。」
 「夏の?シンちゃんどっか行ったっけ?」
 「お邪魔したろ?お前が騒いだのに便乗して。」
 「えーっ。だって店なんて無いじゃん。なにあげたの?どこで手に入れたの?どんなのあげたの?」
 カズキが凄い勢いで食い下がる。
 モトザネの不思議そうな表情と、超能力者二人の表情が益々……。
 「だーーーーっ。ぅっせーぇなっ!いいだろっ!なんでも!」
 冷やかされまくったシンがキレるが、
 「いーじゃん、教えてくれてもっ!」
 カズキ負けない。

 「キーちゃん、オミつらい…この状況…。」
 オミが半ばベソをかきつつ、小声でイツキに訴える。
 「耐えろ。俺も耐えてる。それにまだはっきりとした答えは出ていない。」

文化祭に招待された ⑩

 イツキの発言により、一帯がどよめく。
 「えー。」
 「ちょ…。」
 「なんでぇ。」
 「まじ?」
 「そーなの?そーなるの?」
 「なんでよ?」
 「そんなんじゃないし。」
 「そんな意味あるの?」
 「そんなつもりないしー。」
 「まってよ、なんで?」
 等々、口々に否定的な意見が小声で発せられる。
 「だ・か・ら。『アチラの俺達の地域では』って言ってるでしょ。」
 騒ぎを抑えるためにイツキが声をかけるが…、
 「じゃなきゃ、食べるのにも事欠く人…。」
 オミが小声でダメ押しする。
 「えー?それって…っ。」
 「ひでー。」
 「違うしぃ。」
 「食べられるもん。困ってないもん。」
 「そんな風に見えてたの?見えるの?」
 「ちょっとショックー。」
 「ぃやーぁ、違うから。事欠いたりしてないから。」
 「売ってないし。食べられるし。」
 「そゆんじゃ無いからぁ。」
 ワイワイガヤガヤやいのやいのと、声量を抑えているとは言え騒ぎ出す。
 「分かってるから、知ってるし。」
 イツキが違うと認識していると声をかけても騒ぎは収まらない。
 と、そこへ
 「なに?なに?なんの騒ぎ?どーしたの?」
 マサトが暢気に声をかける。
 「やっと解放されたから、ソースとは違う匂いを嗅ぎに来て見たら…。」
 シンが半ば呆れ口調で零すと、二人の声が聞こえたカズキが嬉々として、報告しようと傍に寄る。
 「マーちゃん、シンちゃん。聞いて聞いて。」
 「こら、カズキ。お前声デカすぎ。」
 ヒロが慌ててカズキを止める。

 「なーる程ねぇ。」
 「だから時々怒った感じになるのか…。」
 マサトとシンは、リョウやヒロ達から経緯を聞くと納得の表情を見せる。
 「なんであんな、怒ったみたいな言い方されたのかが分からない。」
 憮然として不満を口にするカズキ。
 「だって、カズキ達がそうじゃないって、イツキさんもオミさんも分かってるし、知ってるのに…。」
 カズキが言い募ると
 「でも、そうゆう格好の人を軽んじるタイプの人っているからな…。」
 「『そういった格好』をしていると『そういう人』と思われる可能性があるから、いやなら少しは考えなさいって事だと理解してた。」
 でも、まさか『売ってる人』とか『事欠く人』って見られるとは思わなかったけど…。
 シンやマサトが、自身の考えを口にすると
 「でもでも、怒られてるみたいな言われ方されるのが、わかんないのっ。」
 カズキが粘る。
 ミヅキは流石に女の子なので、『はしたないから止めなさい』と言われるのは一応は納得できるので、引き下がっている。
 「じゃぁ、お父さんやお母さんに言われたって考えてみな。」
 「お父さんやお母さん?」
 カズキは不思議がりながらも考え始める。
 「お父さんやお母さんがそういう言い方をする時は、ナニをどう考えての事なのか、いくらなんでも分かるだろ?」
 「『自分の子が他人からそういう風に見られるなんて、全く持って不本意です。侮辱だ。ガマン出来ません。』って事?」
 カズキが目を丸くして訊ねる。
 「そゆ事。言ってる人が、イツキさんやオミさんに変わったってダケだろ。」
 「なーる程ぉ…。お父さん達みたいな気分になっちゃってるワケね。」
 せめて『お兄さん』にして下さい。ぃゃ確かに、実年齢はお爺さんより遥かにお爺ちゃんだけどさ…。
 イツキの心の呟き。

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