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山も良いよね ⑥

 「凄かったねー。沼って綺麗なんだねぇ。びっくりさ。」
 興奮冷めやらぬカズキ。
 流石のカズキも朝靄立ち込める沼地では、眼前に広がる光景にただただ息を呑むばかりで、瞬きどころか微動だにせず、その光景に見入っていたのだが。
 「泥んこまみれで、虫とかいっぱいいて、近寄らない方が良さそうな場所ってイメージしてたんだけど。そのイメージがぶっ飛んじゃったよ。」
 目をくりっくりにして感想を述べる。
 「いや…普通は居るよ。」
 「居るの?やっぱり?」
 オミの応えに少々落ち込むカズキ。
 「ヒルなんていう迷惑この上ないヤツが居たりする。」
 「血ぃ吸うやつ?」
 カズキの悲鳴にも似た問いかけに、重々しく頷いて返すオミ。
 「おたまじゃくしとかも居るけどね。」
 尤も直ぐに、雰囲気が暗くならないようにと愛嬌のある生き物の名を上げる。
 「おた…。」
 カズキは途端にきゃっきゃと喜び出す。
 朝靄が薄れる頃オミが皆に声をかけ、水遊びの出来そうな場所であるオミ造成の池へと移動し、休憩を取っている所である。
 皆、それぞれ好き勝手に座り込み、ある者は足を池の水へ浸し、別のある者は大きな石の上に足を投げ出して寛いでいる。
 池の水面をボーっと眺めていたマサトが、ふと思い出した様にオミへ声をかける。
 「そういえば、オミさん。」
 「?」
 「沼の中央?に棒状の物が幾つも見えたんですけど、あれってなんです?なんかが枯れたとかですか?」
 「棒?…あー、あれ。あそこね、ヤゴがいるんだよ。」
 「へ?ヤゴ?ってトンボの?」
 「そうそう。そのヤゴ。トンボに羽化する時にね、水の上に出てから羽化するらしいんだけど、棒をよじ登んないとならないんだって。無いと溺れて死んじゃうって聞いたな。で、棒を差しておけば登るかなって思って。」
 「はぁ、トンボの為ですか…。って言う事は…あの下の方の池にある棒も…?」
 「うん、そう。ヤゴの為。あそこは入らないでおいてね。小さい魚がいるからね。カエルやトンボがタマゴを産みに来るだろうし。」
 「なる程、トンボも育てている、と。分かりました、入らないようにします。」
 「小さい魚って?」
 見当の付かないカズキが、不思議そうに尋ねる。
 「めだかとか。」
 「メダカ居るの?見て良い?」
 「良いけど…取り敢えず休憩しようね?」
 「あ…ぅ。はーい。」
 返事をして座ったは良いが、メダカが気になってウズウズしてしまうので、結局大人しくはしていられない。
 貧乏ゆすりをしていたり、ごろごろ転がってみたり、うつ伏せになって足をばたつかせて見たり、起き上がったら尻を基点にずりずりと回って見たり。
 「だーっ!お前はぁっ!!少しはじっとしてろっ!」
 結局ヤスノリに叱られるまでジタバタと…。
 ヤスノリに叱られ、しょぼくれているカズキ。
 あー……、先に見るだけ見せれば良かったのかな…?そうすれば、少なくとも叱ったり叱られたりしないで済んだはずだし…。
 カズキの僅かにうな垂れた後姿を目にし、少々気に病むオミ。
 「結構な距離歩いて移動してるし跳ねたりもしてたんだから、休む時に休まないとケガすんだろ。」
 ヤスノリはヤスノリで、きつく言いすぎたかと声の調子を弱めて注意する。
 「はーい…。」
 ヤスノリのおこりんぼー。
 返事だけしておいて、悪態は心の中で吐くカズキ。
 「お前、今、返事の他になんか言ったか?」
 ヤスノリは眼光鋭く問いただす。
 「ううんっ!なんにも言ってない!」
 首をぷるぷると勢いよく振って否定する。
 焦ったぁ~…。
 心の呟き。
 二人のやり取りを眺めていたオミは
 ぅーん、やっぱり役割分担?各自の性格に合わせて?きつめの注意は、大抵ヤスノリ君がしてるねぇ…。
 と考えつつ、ではカズキの落ち込みぶりは?と改めて目を向けると。
 「ねーねー、ヤスノリィー。めだかって生で見たことある?カズキ無いんだよねぇ。小さいって事しか知らないんだけど…。」
 既に立ち直っている。
 流石に、叱られた直後なだけに大人しく座っては居るが、後姿からは今にも飛び跳ねそうな元気が伝わってくる。
 「俺も『生』では見たこと無い。前ぇ~にテレビでちょっぴりやってたのを見たけど…。」
 ヤスノリも、もう既に怒ってはいない。
 「小さそうだった?」
 「あー…、うん。5cm無いんじゃないかな?ってカンジだった。」
 「ご…?ちっせー…。」
 カズキ君、もしかして打たれ強い?叱られ慣れしてる?確かに感情がコロコロと良く変わるとは思ったけど…。もしかしてもしかすると…オミが気にし過ぎてるだけ?むかーしキーちゃんが言ってたのってこの事?こんな短時間にケロっとしちゃって良いの?
 オミが軽く混乱を起こしているとシンから声がかかる。
 「オミさん。もしかして、そこの川の上流で魚釣れちゃったりします?」
 「え?あ、うん。でも、途中ちょっと急なところがあるから危ないけど…。」
 「行けそうだったら、良いですかね?後で行って、釣っても。」
 「良いけど…。」
 止めたら過保護だろうか?でも高校生とは言えまだ16歳程度だし…、山でも海でも、大の大人だって危険は危険なんだし…。
 オミが行かせるべきか止めるべきか逡巡していると、その様子を見かねたシンが遠慮しようと口を開く。
 「あー…の、無理に行こうとは思わないんで、止めときますね。」
 この一言がオミに決断させる。
 「いや、いいよ。途中の急な所を見て、無理そうって思ったら諦めてくれるなら。」
 シンの普段の様子等と今しがたの態度を思い浮かべ、思い切ってOKを出す。
 「へ?」
 予想とは真逆の返事に戸惑うシン。
 「いや…でも、心配かけてまでとは思わないんで…。無理してOKしなくて良いんですよ?」
 カズキ達の手前、年長の自分が我儘を無理に通すわけには行かないと、念の為再考を求める。
 「うん。でもね、シン君は周りに注意を払えるでしょう?そうゆう人はあんまり無茶しないかなって思って。」
 「シンちゃんって結構ムキになる人だけど…?」
 カズキが、こちらも一応念の為とダメ押しをする。
 決して、羨ましがって足を引っ張ろうとしているワケじゃぁありません。
 「目的達成のために?」
 ムキになるポイントを確認するオミ。
 「もく…?あ、うんそう。『コレをやる。』ってなったらソレに熱中しちゃう人。」
 「じゃぁ、大丈夫。今回の『コレ』は釣りだから。『急な所だろうが構わず登る』じゃぁないからね。ね?シン君。」
 「えぇ、まぁ、そうですね…。」
 いいのか?と少々不安になるシン。
 「だったら、良いよ。その代わり、さっき言ったように、急な所を見て『無理だ』って思ったらそこで諦めてね。」
 オミが再確認をする。
 「はい。じゃぁ、行かせて貰います。川に沿って登るんで戻りも迷わないと思いますし。」
 「うん。もし戻りのルートで不安を感じたら、全身全霊を込めてオミを呼んでね。多分気付けるから。で、無茶して下りようとか、しないでね。」
 「はい。俺もケガはしたくないんで…。」
 「じゃぁ、キーちゃんが持たせてくれたお稲荷さん食べようか。」
 オミが、自分の持ってきた荷物からタッパーを取り出しつつ、
 「朝食べてから昼迄長いから持たないだろうって持たされたんだよね。」
 と続け、幾つかあるタッパーを並べていくと
 「遠慮なく頂きます。」
 カズキが素早く応じる。

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山も良いよね ⑤

 濃紺から紺青、紺色へと空の色が変わる頃、目的の沼地へと辿り着く。
 途中あーだこーだと時間が掛かりはしたが、健脚揃いが幸いし、予定より少々遅れたとはいえ朝靄が立ち込める前に到着する。
 「おぉ、開けた場所に出たー。」
 カズキが嬉しそうに声を上げる。
 「ここ?ここが言ってた沼でいい?」
 「うん、そう、ここ。ここら辺からの眺めがお勧め。」
 はしゃぐカズキに応えるオミと…、
 「踏み外して落ちるなよぉ。」
 冷ややかに注意するヤスノリ。
 大人と子供。どちらが?と一瞬戸惑う対応の違い。
 「あぅあぅあぅ…。だって、着いたら嬉しいじゃんっ。」
 言い訳するカズキ。
 「それに跳ねて無いもんっ。」
 「分かったから、もうちょい進めー。俺等んとこ木と草しか見えねぇから。」
 喧嘩になりかけているのを仲裁するかのように、殿役をしていたシンが、やや離れた後方から声をかけ気を逸らす。
 「はーい。」
 素直に進むカズキと、彼等のやり取りを不思議そうな表情で見つめるオミ。
 役割分担?昨日もしてたよねぇ?彼等にとってはこれが普通?『いつもの事』?
 本来、大人の自分が注意を促すべきところを、お兄ちゃんとは言え子供の側のヤスノリに取って代わられたという事を、気にする余裕を持てないオミ。
 キーちゃんも気にしてたけど、阿吽の呼吸?スゴイな…。って今頃気付くし…。昨日の海でもしてたって事だよね、オミが気付く余裕を持ってなかったって事?片付けの時なんかは、予め打ち合わせがあったのでは、ってキーちゃんが疑う位の分担をしてたけど…。
 オミの頭の中では、様々な疑問がぐ~るぐ~ると…。
 一方の少年達はというと
 「おぉ、随分と広そうだねぇ…。」
 「すごいな、この辺だけ開けて見通しがいい。」
 「お日様あっちから上る?なんか少し明るくなってきた感じがするけど…。」
 「朝靄ってすぐ消えちゃうんでしょ?」
 「夏だしなぁ、日が昇りきったら消えちゃうんじゃね?」
 至って暢気。

 少年達がワイワイと、オミがオツムをぐ~るぐ~るさせている間に、白いものが薄く、あちらこちらから湧き立ち漂い始める。
 薄明かりの中、徐々に濃く、又薄く広がりだし、辺りが白いものの濃淡に覆われ始める。
 「お?」
 誰かが気付き声を上げる。
 「あれ?いつの間に?ずーっと見てたのに…。」
 その声で改めて目を向け、不思議そうな声を上げたのはカズキ。
 「スゲーな…、立ち始めるとスグなんだな。覆われるの。」
 あっと言う間に、辺りが白い靄の濃淡に覆われる。
 「日が昇ってきてるハズなのに『なんか白い』としかわからん。」
 トシが呟く。
 「あ、色あった。靄が動いて薄くなると分かる、花の色。」
 こちらはミズキ。
 「って事は、やっぱ日は昇り始めてるって事だよな…。」
 
 薄明かりの中、白い靄が濃く薄く漂い、景色をぼんやりと遮る。
 遮られた中、靄の薄い部分からは沼地に咲く花々の色が霞みがかったように視界に入る。
 沼地の水面や水際、岸辺。
 湿地を好む草花が、薄明かりの中朝靄に烟るようにその姿をみせる。
 蓮の白やピンク、コオニユリの黄色や赤、コバキボウシやサワギキョウの紫、イワショウブの白、他にも昨夜オミが名を上げなかった様々な花々が。
 それぞれが適した場所で群れ、或いは入り交ざり、とりどりに咲き乱れている姿が朝靄の中に霞みながら見え隠れする。
 草の緑の濃淡、各花のそれぞれの色、朝霧の濃淡。
 入り交ざり、時には覆い隠す朝靄。
 近くの花は白く霞み、なのに遠くの花は小さくとも色ははっきりと見て取れたりもする。
 薄明かり差す朝靄の中、微睡みから覚めたばかりか、或いは未だ夢うつつであるかのような、輪郭の曖昧な光景から感じられる妖しさが、幻想を思わせる。

 遠くに聞こえる、鳥の声
 ― しなやかで優美に
 微かに聞こえる水の音
 ― 嫋やかで風雅に
 草の葉ズレの音
 ― 可憐で愛らしく
 白く静かに漂う朝靄
 ― 華やかで艶やかに
 色どころか音まで飲み込んだかのように
 ― 閑やかに

山も良いよね ④

 子供だって子供なりに気を使うものではあるが、正面切って気を使われてしまうと、対象となる大人は当然落ち込むわけで…。
 オミも当然の如く ―― と言うよりも遥かに酷く ―― 落ち込み呆然とする。
 呆然としながらも、目的地へと案内を続けるが
 「あの…オミさん…?」
 トシが、オミの後ろからでも分かる、心ここに有らずの様を呈している姿を気にかけ声をかける。
 「……オミ、もしかして頼りない…?」
 ボソッと呟くように口にする。
 「へ?頼りないって何がです?」
 「オミが頼りないから皆が気を使ってくれるのかな…って。」
 様々に考えているようで、受け答えが若干ボーっとしているオミ。
 「は?」
 どことどこをどう繋げばそうなるのか考えが及ばないトシは絶句してしまう。
 「?オミさんだって、俺たちに気を使ってくれてるのに?」
 ヤスノリが至極当然の確認をする。
 「俺たちがオミさん達に、ある程度気を使うのは当たり前だとおもうんですけど…。」
 ヒロも当然の事と口調で示す。
 「オミは一応大人なんだから、大人として気を回すのは当たり前でしょう?」
 自分が気を回し、気を使い、気を利かすのは、大人ならば当然の事なのだから子供である彼等が気にかけることは無いと、オミは言外に匂わす。
 「でも俺達、オミさん達の厚意に甘えてるんだから、可能な限り迷惑掛けないように注意するのは当然の事って思うんです。」
 双方若干の、優しい食い違い。
 「迷惑ってなに?ダメならダメって、キーちゃんは言うじゃない。」
 「イツキさんは言ってくれるけど、オミさんは言ってくれませんし。」
 リョウの尤もな指摘。
 大体ダメ出ししたのは、カズキの『髪の毛触りたい』に対してや『らっきょう』程度であるし、なにより『イヤ』だの『ダメ』だのの意味が違う。
 「オミは…イヤならキーちゃんに伝えるし…。キーちゃんから伝わるでしょ。」
 「『オミさんがイヤがってた。』なんて聞いた事は一つもありません。」
 リョウが粘る。
 「そもそも『ダメ』も聞いた覚えは無いんですが…。」
 ヒロがダメ押しすると
 「あのぉー。俺達半ば無理言って、厚意に甘えて図々しくお邪魔してるワケですから…。幼児ならまだしも、この歳で甘えっぱなしは出来ないワケで…、矢張り出来ることはしませんと格好が付かないと言うか、自分で自分が情けなくなったりする場合もありますし。大体、甘えっぱなしをしてたなんて…親にばれたら泣かれます…。」
 だから気を使って当たり前だと、シンが取り敢えず、自分達が理解している自分たちの状況等を織り交ぜて伝える。
 「カズキだってチビッ子じゃぁ無いから、迷惑をかけないように注意するくらいできるよ?」
 カズキがオミを見上げて訴える。
 「迷惑なんて…。」
 否定するようにオミが言うと
 「もし仮に、迷惑だと感じた場合どのように対応なさいます?」
 マサトが訊ねる。
 「そもそも招かないよ…。」
 ため息をつきながらオミが答える。
 「来たいって駄々捏ねたって、キーちゃんから断ってもらう。オミは、イヤだと感じた人とは少しだって一緒には過ごせないから…。」
 「じゃぁ、迷惑ではない、と。気を使ってくださるのは招いた側だからって事で良いですか?」
 キョウコが確認を取る。
 「当たり前でしょう。」
 きっぱりとオミが答えると
 「私達も招いて頂いた側ですから、招いて下さった方に相応の気遣いぐらいして当たり前なんです。」
 キョウコも負けじときっぱり答える。
 「常識の範囲内で、迷惑をかけないように気をつける。自分たちの事で、不必要な心配はかけないように注意する。これって当たり前の事だと思います。」
 オミが驚いていてもキョウコは構わず続ける。
 「やり過ぎると他人行儀になってしまいますが…。オミさんの先程のお話ですと、私たちを好意的に受け入れて下さっているのは充分わかりますので、だったら私たちとしては、オミさんを困らせないように注意するのは至極当然の事になります。止めて置けば良かったなんて、思われたくないですから。」
 「我儘も言ってますし、厚意にも甘えています。心配させないように気をつけるのは当然かなって思います。」
 こちらはミヅキ。
 「怪我したら心配かけちゃうし、困らせちゃうでしょ?コケて作った擦り傷ぐらいで、お父さん達が文句付けたりはしないけど、そういう問題じゃぁないんだよね?だからカズキ、困らせないように気をつけるよ。そいで…それって当たり前だって思うのね。だってね、カズキはオミさんもイツキさんも好きだから、困らせちゃうのイヤなんだ。」
 心配をかけているのも、困らせるようなことをしでかしているのも自覚のあるカズキは、誤解をさせないよう拙いながらも必死に自分の考えを伝える。
 「だからね、オミさんもイヤなのはイヤって、ダメなのはダメって言っちゃっていいんだよ。言って貰えないと分からないし、分からないとヤっちゃうだろうし。それじゃぁ、カズキは分からないままオミさんを困らせちゃうから。で、それってカズキはイヤなんだよね。カズキがチビッ子なら仕方無いのかもしれないけど、カズキはそんな小さい子じゃぁないんだから。」
 カズキの必死の訴えに呆然とするオミ。
 「オミさん、イツキさんには言うんでしょ?じゃぁカズキにも言ってよ。カズキの事ならカズキ自身に言ってよ。気をつけるから、カズキちゃんと出来るから。」
 カズキはカズキで、自分では考えが至らない可能性を考慮し注意を求める。
 「ぅ…うん、分かった。言うから、ちゃんと直接。」
 カズキの必死さを重々理解できるオミは、勢いに圧倒されながらも辛うじて同意の返事をする。
 「絶対だよ?」
 「うん。言うから。」
 以前に『イヤ』も『ダメ』も言ってなかったか?とオミは見当外れな事を考えつつ答える。
 カズキ達の言っている『イヤ』や『ダメ』と、オミの考える『イヤ』や『ダメ』に微妙な隔たりがあるが、そもそも自分の感情をマトモに伝える事に不器用な面のあるオミにとっては、相手からの要望に応える形であれば気が楽になるのは事実である。
 悪ふざけをしたり、知り合って以降のイツキの真似をしたり、タイガーを拾ってからはタイガーの真似をしたりで誤魔化しつつ、辛うじて表しているのがオミの感情表現の一面でもある。
 「えへへー、じゃ約束ね。」
 オミの返事に気を良くしたカズキは、つい今し方迄とは打って変わってあっけらかんとした表情をみせる。
 当然だが、あまりの変化の早さにオミの理解は追いつかないわけだが…。
 「自分達にも言ってくださいね。当然、重々気を付けはしますが、分からない場合も多々ありますので。」
 シンに畳み掛けられる。
 他の子達も、当然と頷いて見せる。
 「う……うん。言います。」
 圧倒される激強よ超能力者。

山も良いよね ③

 オミがつらつらと、やっぱり足下を照らした方が良いんだろうか等と考えながら歩いていると
 「ねーねー、オミさん。あのさぁ…。」
 直ぐ後ろを歩いているカズキから声が掛かる。
 「?」
 「オミさんは、どーしてその格好で、山道を普通に歩けるの?」
 数日前にも似た様なことを訊ねたかもしれないが、そんな事は綺麗さっぱり忘れている。
 「慣れ?ずーっとこの格好だしねぇ…。」
 「慣れるとそんなに長い裾でも段差とかで困らないの?」
 「コツがあるんだよ。後はやっぱり慣れだね。それに段差が大き過ぎる時は、裾を摘まみ上げるしね。」
 「へぇー…。じゃぁ、髪の毛伸ばしてるのってなんか意味あるの?」
 次から次へと質問が溢れ出るカズキ。
 「髪型や服装や身に付けるものなんかで、身分とか立場とかを分かるようにしてた名残だけど…。」
 「じゃぁ、短い人とかも居た?」
 「居たよー。奴隷とかだけど…。」
 最後の一言を耳にして、軽く落ち込むカズキ。
 「長い方が身分が上で、短くなればなる程身分が下がるの。後、纏めてたりね。」
 じゃぁ、○げちゃった人は…?
 とは訊けない。
 「寒かったり、暑かったりしてない?日が出てないから気温下がってるワケだけど、動いてるし…どっちかなって分かんないだけど…?」
 「分からない?超能力あるのに?」
 不思議なことを聞いたぞ、とカズキは首を傾げる。
 「使って覗いちゃってもいい?どう感じているかは、その人それぞれだから覗かないと分からないんだよね。」
 覗く…?
 「だめっ!覗いちゃダメ。カズキは別に平気だから。暑くもないし寒くも無い。」
 「そ?ならいいんだけど…。」
 「あ、ねね。あのさ…、ココって虫いないの?」
 とにかく訊くカズキ。
 「え?いるよ。なんで?」
 オミはカズキが何故こんなにも色々と尋ねるのか不思議ではあるが、訊かれて困る話しでもない上に、以前から質問を連発されているので大して気にするワケもなく、淡々と応えている。
 「だって、オミさん達の家でもそうだけど…虫が来ないから。部屋に居るときとか、夜、部屋を明るくして窓も開けてるのに、蚊もハエも入って来ないし。今だって山の中を歩いているのに羽虫すらいないじゃん。ちょっとぐらい居ると思ってたのに…。」
 「あぁ…それは、オミもキーちゃんも虫キライだから。来ないようにしてるの。」
 「超能力で?」
 「そ・そ。」
 「今も?」
 「うん、そう。」
 「ふ~ん…。じゃぁ、ソレ止めたらガッツリ来る?」
 「うー…ん…今はどうだろう?日が出たら、確実にガッツリ来るだろうけどね。もしかして、虫いる方が良い?」
 「お断りします。」
 キッパリと断るカズキ。
 カズキが何故アレコレと質問攻めにしているかというと…、辺りが真っ暗だから。
 大人しく黙々と歩くのに飽きて、じゃぁ景色でも楽しもうかと思っても、周りは未だ闇の中。
 影絵の背景のように、辛うじて影の濃淡から奥行きを感じられる程度の闇の中、気を紛らわせられるのは会話のみという状態だからである。
 「あはは、カズキ君も虫キライかぁ。オミ達と同じだぁ。」
 オミが珍しく声を上げて笑う。
 「…オミさんも、そうゆう笑い方するんだねぇ。」
 カズキが思わず、しみじみと口にする。
 「え?するよぉ。当たり前じゃない。しないって思ってた?」
 オミが可笑しげに訊ねる。
 「しないのかなぁって思ってた。にっこり微笑んでたりしてるのは知ってたけど…。」
 キョトンとしながらカズキが応えると。
 「そうかぁ…。もしかして、今まで、オミがしなかったのかな?」
 「んー…とぉ、フフフって感じで笑ってる所は見たことある。タイガーに、そうやって笑いかけてた。後は微笑んでるのばっかりかな…。」
 「フム。オミ、他の人に慣れるまで時間掛かるから…。そのせいかな。笑いたくないとか、笑う気がないとかじゃぁないんだけどね。」
 無意識に距離を取ってしまうようだ、と言外に仄めかす。
 「ふ~ん。じゃぁ、慣れるのに必要な時間が経ったって事だね。ここのとこ、ずっと一緒に居るしね。」
 楽しげに、嬉しげにカズキが言うと
 「あ…、あぁ、そうか。そうだね。一緒に過ごす時間が長いものね。いくらなんでも慣れるよね、そりゃ。」
 齢12歳の少年が、なんの屈託も無く相手の性格を好意的に受け入れているとオミが気付く。
 場合によっては大人の方が、悪い方へと拘る事が多いというのに…。
 「オミさん、知らない人とか、親しくない人とか苦手っぽいよね。特に相手の人が大人だと。」
 オミに驚かれているなどカズキは全く気付かず、話を続ける。
 「でも、初めて会った時、直接話し…したよね…?カズキが子どもだから?大人の人に比べて話し易い?」
 当時のことを思い出しつつ首をひねる。
 「あぁ、それ。キーちゃんに確か言われた。『珍しいこともある』って。」
 「イツキさんが言っちゃうくらい珍しい事なのぉ?」
 目を真ん丸にして訊ねるカズキ。
 「う…うん…。」
 オミは、拙い事を言ってしまったかと少々悔やむが、
 「それって…カズキすげー。」
 当の本人は喜んでいる。
 喜びに溢れた為、歩き方が跳ねるような状態に変わる。
 「快挙じゃん。イツキさんにそんな事言わせちゃうような事を、オミさんにさせちゃうなんて。カズキってば凄い!」
 ピョコピョコ跳ねるように歩きながら、自画自賛する。
 夜明け前だと言うのに、やたらと元気なカズキの様子に、少々心配になるオミ。
 寝不足でテンション上がってる?大丈夫かな?後で、具合悪くなったりしないかな?
 オミの杞憂を知ってか知らずか、当のカズキは相変わらず跳ねる様に歩いている。
 と、そこに声が掛かる。
 「こ~ら、カズキ、ちゃんと歩け。そんな歩き方してたらまた躓くぞ。」
 ヒロが注意を促す。
 「だぁ~ってさぁ…。」
 嬉しいから、つい体が勝手に…。
 「コケてケガでもしたら、オミさんが気に病むしイツキさんが心配するぞ。」
 引率しているのがオミなのだから、なにかあったら責任を問われかねないと、浮かれているカズキに釘を刺す。
 「あー…そっかぁ、そうだよねぇ。」
 一気にカズキのテンションが下がる。
 「…ぃゃ…あの…酷い怪我とかじゃなければ…。」
 カズキのテンションの下がり具合が大きかったので、思わず甘いことを口にしてしまうオミ。
 カズキはピョコっと頭を上げて
 「うん。気をつける。気をつけてちゃんと歩く。だからオミさんは、あんまり気にしないで。」
 12歳の子に正面切って気を使われるオミ。



山も良いよね ②

 「のぁぁぁ~~…っとっとっと…。」
 後ろから聞こえたカズキの妙な叫びに、オミが警戒が甘かったかと慌てて振り返ると、とんでもない姿勢をカズキが保っている。
 「え?えー…と、大丈夫?」
 困惑したオミは、取り急ぎ安否を確認するしか思いつかない。
 カズキの体勢は、身体全体を低くして片足は前に膝部分で曲げ、もう片足は後ろへ伸ばせる限り伸ばしている。そして上半身は前に出した足に沿うように前方に伸ばされ…。
 要は躓いて転びそうになった瞬間に素早く足を前に付き、ぎりぎりのところでバランスを保ち転ばずに済んだ、その直後の姿勢である。
 「だ…だいじょぶ…。」
 オミの言葉に応えながら体勢を戻すカズキ。
 「カズキ君、体柔らかいねぇ…。」
 反射神経と伝達速度も速そうだ。
 とは思っても言わないオミ。
 「カーズゥキー…。」
 「こっちがお前ぇに躓くだろー。」
 「ちゃんと足上げて歩かないから…。」
 お兄ちゃん達はだぁれも心配せず…。
 「ぅっぅっぅっ…オミさんしか気にかけてくれないぃ~…。」
 お兄ちゃん達の非情さに、泣いた振りをしながら不満を述べる。
 「だってお前、なんで躓いてんのよ?疲れるほど歩いたわけでもないのに…。」
 これはリョウ。
 「結局、ちゃんと足を上げて歩いていなかったお前が悪いだろ。」
 これはトシ。
 「オミさんが足下でこぼこしてるからって言ってたし、シンちゃんだって足をいつもより上げて歩けって言ってたろ。やってなかったお前が悪いんじゃん。」
 で、これはヤスノリ。
 「躓いたはずみで崖から落ちなくて良かったなー。」
 これはヒロ。貶さなくても、物騒な例えをされる。
 「シクシクシク…優しさを欠片も感じられなひ…。」
 「「だって、お前すぐ調子に乗って、結果、悪い方へ転がるじゃぁ~ん。」」
 「~~~~…っ。」
 言われっぱなしのカズキは言葉にならない感情をオミへ訴える。
 「怪我は無い?爪やっちゃったとか…。平気?」
 カズキの気持ちが判らないでもないオミは、苦笑を堪えつつ無事を確認する声をかける。
 「へ…平気。大丈夫。」
 優しさがこそばゆいカズキはエヘヘと笑いながら答える。
 「で、なんで躓いたんだ?確かに石が頭を覗かせているけど…そんなに思いっきり出っ張ったりしてないぞ?」
 「…あ…えー…とぉ、そのー…。」
 まさかその点を再確認されるとは思ってもみなかったカズキは、動揺しうろたえ、思い出したその時の状況に照れ、誤魔化すにも誤魔化せない今の状況に恥じ…挙動不審となる。
 「ぅーんとぉ…。」
 そんなカズキの様子を興味津々と注視するお兄ちゃん達。
 (なんでコイツこんな困ってんの?)
 (なんかマズイ事聞いたか?)
 (もしかして照れてる?)
 (ぜ~んぶ表情に出てるのは構わないのか?)
 因みに後ろに居る女子組やシン・マサト達は、声が聞こえているので、状況を一応は把握している。
 「オミさんの髪の毛がね、光りながら揺れて、揺れながら光ってて…。えーと…だから、それ見てたら…。」
 観念して理由を述べるが、内容から妙な誤解を受けるのではと気まずく感じ、語尾を濁すカズキ。
 「カズキぃ…お前さぁ…。」
 カズキが何を避けようとしているのかをあっさりと察し、判ってて悪乗りするお兄ちゃん達。
 「個人の好みの範疇だから口挟むのもどうかとは思うけど…。」
 「オミさん、確かに綺麗だけど男だぞ?」
 「そっかぁ、見とれちゃったかー。」
 「「男性にっ!」」
 「そーじゃ無いし!違うしっ!髪の動きにだしっ!」
 悪乗りして弄られていると分かってはいても、否定しないことには認めたことになりかねないので、必死に違うと訴える。
 「もしかして眠くなっちゃった?今日はいつもより随分と早く起きたから。」
 オミは真面目に気にかける。
 「眠くなると、目を惹く方へ注意が向かって、他が疎かになりやすいんだよね。大丈夫?起きていられる?」
 オミの気遣いと、お兄ちゃん達の粗雑な扱いの温度差にカズキが思わず感激し
 「オミさぁ~ん、兄ちゃん達が酷いんだよー…。」
 泣きつく。
 「こら。甘えてんなっ。」
 「カズキ。気遣いに甘えちゃぁダメだろぅ?」
 「それでなくても俺達は甘えまくってるんだから…。」
 「必要以上に世話かけちゃダメだろ。」
 お兄ちゃん達の大真面目な指摘に
 「必要だし。四対一だし。味方欲しいし。」
 反抗するカズキ。
 「カ・ズ・キッ!」
 「起きてる!眠くない!大丈夫でっす!」
 カズキが素早く返すと、後ろの方から
 「判ったから、そろそろ進んでくれー。」
 「大して進んで無くね?」
 「沼までまだあるんでしょう?」
 「疲れてから急ぐと、余計に転びやすいんじゃ?」
 タイミングを計ったように先へと促す声が掛かる。
 

山も良いよね ①

 「あの…今更訊くのもアレなんだけど…。本当に歩きで行くの?」
 オミが様子を伺うように訊ねると、
 「行く!行きます。」
 即座にキョウコが答える。
 「歩いて歩いて歩きますっ!そして…。」
 オミがキョウコの勢いに押されて目を丸くするが、キョウコは構わずに続ける。
 「そして、一昨日から過剰摂取しているカロリーを消費するんですっ!」
 堂々の宣言。
 キョウコの堂々たる宣言を聞き、歩きに拘る理由が分かると、オミはうっすらと苦笑し
 「消費しても…再摂取しちゃうんじゃない?キーちゃん、気合入れてたし、動いた後のご飯って特に美味しいから…。」
 「 ―― っ。」
 絶句する。
 「…沢山動いて沢山食べる分には、良いと思うんだけどね。健康的で。」
 オミはフォローにならないフォローをいれ
 「じゃぁ、山道の入り口前までテレポにして、その先歩こうね。まだ暫らくは暗いから山道は足元が危ないけど、歩き優先のカロリー消費優先で移動するなら見慣れた所は端折らないと、日が昇る前までに沼に着けなくなっちゃうから。」
 「「「はーい。」」」
 オミの提案に素直に従う一同。
 「じゃ、一応目を閉じてー…。」

 「は~い、あけて良いよ。」
 オミは一同に声をかけ
 「ここら辺から歩こうか。木が月の明かりを遮っちゃうだろうから、足下気を付けてね。デコボコしてるからね。」
 と、続けて声をかける。
 皆は注意するよう声をかけられたは良いが、月明かりに照らされた場所ですら足元が暗く、心許無くなる。
 「僅かな街灯も、有ると無いとでは大違いだったんだねぇ…。」
 トシが感慨深げに呟くと
 「すげえ暗い…。夜明け前の木陰近くだから…?」
 「足を、意識して普段より高く上げて歩かないと、蹴っ躓くぞ。」
 「「はーい。」」
 シンが、安全確保のための具体的な対応を口にすると、揃って返事をする。
 「…絆創膏持ったし、消毒液と消毒軟膏も持ったし…。うん、大丈夫。」
 コケる前提で、持った荷物を思い返しながら確認をするカズキ。
 「コケるだけで済めばいいんだけど…。」
 オミは物騒な事を言い出す。
 「へ?」
 穏当とは言えない発言内容に思わず見返すカズキ。と、そのカズキの目にオミの姿が映る。
 「所々狭くなってる場所があってね、崖みたいになってたりするから油断すると…。段差の大きいところもあって、ルートをちゃんと辿っていても、踏み外したみたいになったりするから、予め声をかけるけど、前に注意しててね。前を歩いている人の肩や頭の位置が、突然ガクッて下がるからね。」 
 自身の目に映ったオミの姿を不思議そうに見つめるカズキの様子に、全く注意を向けず道中の危険を上げるオミ。
 「後、もしかすると枝が飛び出してたりするから、やっぱり前に注意しててね。前の人が枝を避けるしぐさをしたら、枝が出てるって事だからね。なるべくオミが切っておくけど…。」
 カズキは、オミの姿を目を真ん丸にして見つめているうちに、自身の『なんだこれアンテナ』を微かに刺激したものの正体に、具体的な形で気付く。
 「オミさん…光ってるっ!」
 カズキの言葉に、その場の時が一瞬止まる。
 「?いくらなんでも、オミは発光人間じゃないよ?」
 「でも…。ぼんやりと、だけど光ってるみたいに見えるんだもん。」
 自分でもアホな事を口にしたと思いはしても、見えたものは見えたもの、誤魔化しようがない。
 「日が昇る前に山を歩くなら懐中電灯でも持って来るんだった、とか考えている時に…っ!」
 ヤスノリにキツく言われる。
 「あー…懐中電灯云々は俺も考えた。オミさんもイツキさんもタイガーも必要ないんだろうな、って。」
 ヒロがのんびり口にする。
 「んー…いやぁ…でも、光ってるように見えるよ、俺にも…。」
 言葉を濁らせながらもカズキに同意するリョウ。
 「でも…オミ、光るような事してないんだけど…。」
 不思議なことを言い出した人が二人に増えた為、無自覚にやらかしていたかと僅かながら動揺するオミ。
 「だって、光ってるみたいに見える。」
 カズキも、自分が見えている事柄を否定することになるのでは、と考えてしまうため翻さない。
 「あーあーあー。分かった。」
 マサトやキョウコと、カズキやリョウとオミの主張を検討していたシンが、唐突に口を開く。
 「自分で光ってるワケじゃぁなくて、月の光を反射してるか何かで、纏っているみたいになってるんだ。」
 纏う?光を?
 シンの指摘にオミ以外の全員が、オミの姿を再確認すると…。
 闇の中に、輪郭が少々ぼやけたオミの姿が浮かび上がる。
 輪郭はぼやけているが、その姿は逆に暗闇の中に浮かび上がり、そこに何某かが居ると見て取れる。
 「光ってるんじゃないの?」
 カズキが意外そうに声を上げる。
 「自分で発光してるんじゃなくて、月の光を反射してるんだと思うぞ。お前は、その反射を『光っている』って感じたんだろ。」
 「なんだ、そうかぁー。って、じゃぁ何がどうなると、月の光を反射できるのさ??」
 鏡を仕込んでいるわけでもないのに…。
 カズキが新たな疑問を口にすると、シンはあっさりと説明する。
 「髪の毛だろ。オミさんの髪の色が白って言うか銀って言うかって色に見えるのは、他の色は素通りしちゃうけど、その色は撥ね返すからだろ。で、夜で辺りが暗い分、跳ね返しっぷりが光っているように、光を纏っているように見え易いワケで…。」
 カズキには半分以上ワケが分からない説明であるが
 「あー…だから昼、砂浜に居るオミさんの姿が烟って見えたのか…。昼だし、日の光が強いから、光っている様には見えなかったってワケね。」
 ヒロが今気付いた、分かったと納得の様子を見せるので、説明自体は知られた事なのだと理解する。
 「てっきり疲れ目かと…。日の光が眩しすぎたから。」
 ヒロ同様、日中のオミの姿の見え様に気付いていたトシが、軽く落ち込む。
 「知らない人が見てたら、幽霊かと思っちゃいそうだな。髪の毛の部分しか光を跳ね返してないんだし…。」
 リョウが軽く笑いながら言うとマサトが笑いながら同意する。
 「確かにねぇ…。オミさんの近くに居れば姿も見えるから、オミさんだって分かるけど。遠く離れた所に長いものの固まりがボンヤリと浮き上がって見えたら、そりゃもぉ大騒ぎだわな。タイガー連れてて、肩に乗せていたら、タイガーの目も光って見えるだろうし…。」
 うん、それは怖い。
 暗い中遠くに浮かび上がる、魔女の巨大な『壊れた帚』と、妙な位置で光る二つの丸。
 どんだけデッカイ魔女がいる事になるんだろう?
 カズキはその様な想像をして、うんうんと頷く。
 「えー…っと、オミが光っているワケじゃぁ無いって事でいい?」
 説明を理解したのかしていないのか…、オミが暢気に確認を取る。
 「「は~い。オミさんが発光しているわけじゃありません。」」

○っぱー参上! ②

 先日の、課長の『壮行会』からの帰り道ですが。

 自宅最寄り駅から
 のたくらのたくらあるいていましたら
 後ろから息遣いが聞こえてきまして

 なんだろな?と思いつつも
 のたのたしていましたら
 そのうち
 「ハッハッハ…。」
 と、軽い息遣いですがはっきりと聞こえてきて

 それでも『なに』か分かっていなかったワケですが…。
 (久々の○っぱー状態なものですから、酒はまわっても頭はまわらんデス)

 後ろから聞こえていた息遣いが
 じきに、斜め後ろからになり
 それがすぐに、横からになり

 気になったのでチラ見してみましたら
 プードルのお散歩でした

 あれは『トイ』であろうか『ティーカップ』であろうか…
 小さかったです。

 トットットと早歩き(?)で、飼い主さんを引き連れて歩いていました

 で、サクっと追い越されました。
 プードルは決して走ってはいませんでした。
 せいぜい「早歩き程度」に見えました。
 なのに……
 追い越される自分。

 プードルはえぇー
 ○っぱーの自分、歩くの遅すぎじゃね?

海で遊んだその後は… ⑥

 「オミさんオミさん、明日晴れると思う?」
 ドライルームで洗濯物を干し終わったカズキが、居間でボーっと過ごしていたオミへとピョコピョコと跳ねるように近づきながら訊ねる。
 「明日は晴れるけど…夜遅くなってから雨になるね。で、明後日が一日中雨になりそう。やんでも夕方か夜だろうねぇ…。」
 「明後日雨かぁ…って、分かるの?予知?」
 テレビもラジオも使っていない家であっさりと天候を口にされたので、驚いたカズキが勢い良く訊ねる。
 「んーーー…?予知?じゃぁ無いねぇ…。オミそこまで天気を気にしないし。」
 自分の行った事を問われているにも係わらず、イマイチ自覚の無いオミ。
 「じゃぁなんで分かるの?それともあてずっぽう?」
 「あー、雲見てたから。昨日、カズキ君達来てすぐと、今日、海で遊んでいる時に。ちょっとずつ大きく厚くなりながら近付いてきてるけど、明日は保つでしょ。」
 「なぁるほどぉー、遠見か。便利だねぇ。」
 カズキが素直な感想を正直に口にすると、オミは可笑しそうにクスクスと笑う。
 「そうだね、便利だよね。オミには当たり前なんだけどね。」
 「あぅ。前にも『便利』って言ったっけ?便利ップリが羨ましいもんだから…。」
 オミは、超能力を単に『便利な道具』扱いしていると思われるカズキの反応が可笑しかったダケだが、カズキは自分の反応が子供っぽく、又以前にも同じ事を口にしていたのを忘れていて同じ事を言ってしまったのでそれを笑われたかと少々恥かしげにする。
 「便利は便利だよね。ちゃんとコントロール出来ていればね。」
 物騒な一言が付属している…。
 「えー…っと、コントロール出来ていなかったら…どうなるのかな…?」
 顔を引きつらせながら訊ねるカズキ。
 「そりゃもぉ『大惨事』。」
 オミの返事に、カズキは益々顔を引きつらせる。
 「まぁ、当人の能力の強さにもよるけどね。でも、周りに居る人にとっては迷惑以外の何物でも無いよね。」
 オミはカズキの表情に気付き、一応のフォローをする。
 「例え遠見でも迷惑かなぁ?」
 「本人が、自分は今とんでもなく遠くを見ていると自覚していないのなら、迷惑だろうし、お互い不幸だろうねぇ。」
 単純に今の様に、遠くの雲の様子を見ただけでも『大きくて分厚い雲がある』と認識してしまうのだから、周りの認識との不一致により相互の理解が得られない状態になるのは、お互い『不幸』であるし、数日後に辺りの空がその雲に覆われたら、双方共に『迷惑』であろう。大体見えている側は、その時点で既に、数日後に訪れるであろう空の様子を見ているのだから『不一致』は是正されないままになる、と合点がいくカズキ。
 「あー……確かに…。せめて『見ている』って自覚くらいないとねぇ…困っちゃうねぇ。」
 「何が『困っちゃう』んだ?俺は今、タイガーに『困って』いるが…。」
 カズキの呟きを、ドライルームから戻ったシンが問いかける。
 見るとシンの手の内でタイガーが…暴れている。
 前足と後ろ足の間に片手を通され、尻の部分をもう片手で支えられたタイガーが、離せーーとばかりに抗議の鳴き声を上げつつジタバタ、カジカジと抵抗している。
 「タイガー…、なにしてるの?ダメじゃん、そんな事しちゃぁ。」
 タイガーの暴れっぷりに、驚きながら声をかけるオミ。
 「ドライルームで、干してる洗濯物に興奮しちゃって…。で、いくらなんでも場所がマズイだろうと連れ出して来たんですけど…ね。」
 ドライルーム = 乾燥室。部屋ごと丸々乾燥しちゃう(させちゃう)機能付き。
 「あ…。」
 うん、そりゃぁ興奮するね。洗濯物のひらひらは猫大好きだもんね。で、干物になっちゃうね、その部屋で暴れてたら…。
 「タイガーっ。シン君に乱暴するのはお門違いだよ。助けて貰ったんだからね。ありがとうってするんでしょう?」
 受け取ったタイガーを諭すオミ。
 「?」
 楽しい事から無理やり引き離されたと思っているタイガーに、通じるわけも無く…。
 
 カジカジとペシペシで負傷したシンの手指に手当てをしつつ
 「明日は晴れるけど明後日は雨だって。で、明日、海と山どっちが良いと思う?」
 カズキが真剣に問う。
 「んー…山?雨の後の山は、崩れたりする可能性があるから危険だろ?俺達みたいな町育ちは特に。なら、雨が降る前に山に行く方が良いんじゃね?」
 指に絆創膏を貼りながら答えるシン。
 「山…に、何ありますか?湖とかある?」
 シンの危険云々に納得したカズキがオミに尋ねる。
 「湖は…無いけど、広めの池なら…。後、沼?比較的浅くて泥んこの。後は…滝。小さめだけど。って、そもそも山って言うより丘だと思うんだけど…。」
 「丘に沼だの広い池だの滝だのって、普通あるの?って言うか、山と丘の違いってなんだ?沼と池と湖の違いって?」
 尤もな疑問を呈するカズキに対し
 「さぁ?」
 あっさり一言で返すオミ。
 「『言葉』の方が先にあるからねぇ、定義より。ところでプリン片すの手伝わない?」
 「手伝いますっ。って、甘い匂いがするから何かと思ったら…。」
 キリリっと前向きに協力に応じるカズキ。
 「ニャ~ァゥ。」
 タイガーも応える。
 「いやいや、タイガーはダメでしょう?砂糖たっぷり使ってるだろうし…。」
 カズキが大真面目に止めようとする。
 「ンナァゥッ!」
 タイガーの異議申し立て。
 「だって人間用のは猫とかにあげちゃダメって…。」
 大弱りなカズキ。
 「タイガー。」
 イツキが声をかけてタイガーの注意を引く。
 「タイガーのはコッチ。ほら、お猫様用に作ったから。」
 『お猫様』…正に…。
 カズキやシンの手当て中に戻った一同が、堪えきれずにプププとふく。
 「で、明日なんだけどぉ、泳げる?」
 「んー…川や池の方なら泳げる…って言うか水遊びできるね。浅くて良いなら滝の下のところも…。」
 「普通、滝の下の方が深いんじゃないの?」
 大真面目に問うカズキ。
 「あそこの滝は段々になっててね、一番下の部分が池みたいになってるんだけど深さは無いんだよね…。」
 「段になってるから、水の落下の圧が弱いって事ですかね?だから底が抉れない、なので浅いって。」
 「た…多分…?」
 心許無い返事をするオミ。
 「俺達、そう言った事気にしないからねぇ…。まぁ、多分そういう事なんだろうけどね。」
 「沼のところは、上手くすれば朝もやの中に群生して咲き乱れる花とか見られるけど…、どうする?見る?」
 「見るっ!」
 女性二人が素早く希望する。
 「で、どんなのが咲いているんです?」
 「蓮と睡蓮と…、キスゲとトキソウは終わっちゃったし…あとコオニユリとか、紫色の小さいコバギボウシとか、サワギキョウとか…。後、ツリガネなんとかって言う可愛いのや、イワショウブっていう花菖蒲とは全然似てないのや、ヤナギランとかが上の方の…離れた開けた草地に生えてる。」
 「あの…、もしかして沼って結構広い?」
 キョウコが怪訝そうに訊ねると
 「ぅー…ん、ちょっと広め?滝のところや池に比べたら広いね、池も広めなんだけどね。ここって地下水が豊富みたいだし、沼のところは水はけが悪いんだろうねぇ…。でも、あそこはアレで綺麗だから。」
 「池って、人工の物を池って呼ぶって聞いた事があるんですけど…、もしかして造成しちゃったり…?」
 シンがもしやといった様子で訊ねる。
 「あー…うん、オミが掘っちゃった。」
 テヘっと答えるオミ。
 「なんかアッチもコッチも水浸しになってて…だったらいっそ深くしてしまえって、一ヶ所に集まれば良いでしょって思って…その辺り一帯を…。で、崩れてくるんじゃないかって思って岩で底や周りを補強して…エヘヘ。」
 大して悪びれるでもなく応える。
 「した場合、その掘り返された土は…?」
 カズキが事の大きさに目を真ん丸にして訊ねると
 「土は、今日遊んだ浜の沖に…ペイって。草や花は他の沼地にエイって。」
 ペイ…って、エイって…そうですか、そんなお手軽に。
 「岩はぁ…どこから…?」
 カズキが出方を探る様に訊ねる。
 「えー…と、海に面して岩まみれの崖になってる所があって、ソコから貰った。」
 裏の畑からキュウリを頂戴してくる位の気楽さで答えるオミ。
 岩ってそんなお気楽極楽に持ってこれるんだっけ?
 真剣に悩むカズキ。
 大体、持ってくるだけじゃぁ無くて、造成してるワケでしょ?崩れたりしないようにって…。形を整えたり、積み上げたりしてるって事だよね…。って、なんて事を平然と言ってるんだ?この人は…。
 只でさえ真ん丸になっていたカズキの目が尚一層大きく見開かれる。
 「えー…と…オミ、なんかマズイ事したかな…?」

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