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最上部にて…

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雨の日は静かで物憂げで… ①

 滝の周りでウロチョロと楽しんだ後 ―― 。
 朝が異様なぐらいに早かったので体調を崩す恐れがあるからと、日が赤みを帯びる頃にテレポでポンと帰宅。
 さっさと風呂を済ませ何時眠くなっても良いように早めに夕食を済ますと、まだ眠気が起こらない一同は、居間で日焼け肌のお手入れなどをしつつダラダラと過ごしている。
 そんな中、カズキは窓から外を眺め
 「あー…降って来た。」
 呟く。
 「ありゃ、思ってたより早かったねぇ…。」
 オミがちょっぴり失敗と、困り顔で呟く。
 「雨だとホタル飛ばないよねぇ?見たかったのに…。」
 「ぅー…ん…雨だとねぇ…虫だしねぇ…。星も楽しめないねぇ…。」
 「あー…そ・だねぇ。雲に隠れちゃうもんねぇ。ここの星空って、豪華で綺麗だから好きなのに。」
 つまんなーいとしょぼくれるカズキ。
 「ヒマなら、しゅい。」
 シンが、嫌ったらしくニッコリ笑って提案する。
 「ひぃーーっ!恐ろしやー!」
 「お前なぁ…。」
 丸めたノートでカズキの頭を軽くはたく。
 「勉強こわいーっ!
 カズキが恐れおののいていると、離れた場所からマサトが茶化すように声をかける。
 「『饅頭こわい』的な?」
 「違うしっ!」
 すかさず否定する。
 少年達がやいのやいのやっているところへ、イツキが全く意に介さずに割って入る。
 「カズキ君達寒くない?冷えない?平気?」
 突然全く違う話題を振られ一瞬戸惑い、掛けられた言葉を反芻する。
 「いえ、平気です。」
 その場の全員が、冷静に答える。
 「そぅ?ミヅキちゃんがちょっと冷える様な事言ってたからさ…。」
 考えもしなかったことを言われてしまったと少々慌てる一同。
 「お姉ちゃんが?」
 「うん、少し肌寒い程度らしいけどね。雨降っちゃうと冷え込む場合があるからねぇ…。」
 「あの…それで、ミヅキは…?」
 シンが慌てて訊ねると
 「うん、仕方ないから、上着のサイズを小さくして貸しといた。男物だし俺のだし、ちょっとアレかもしれないけど。風邪引かせるわけにいかないからね、かと言ってドライルームに篭れともいえないし。」
 「あ、あぁ…そうですか。ならいいんですけど…。」
 って、女居るじゃんっ!
 シンがチロッと目を向けると、残りの女性 = キョウコはプルプルと頭を振って
 「私は三枚しか長袖持ってきて無いの。で、一枚は湿ってて、今二枚着ちゃってるのっ!」
 そうじゃなきゃ貸してるわよ。
 「うん、まぁ…そうだよね。君達はこの季節、長袖を準備するのも心理的抵抗があっただろうからね。ミヅキちゃんは、二枚乾かしている最中だって。」
 イツキが取り成すように声を掛けると
 「お姉ちゃんが…イツキさんのを借りて…。」
 カズキが微妙に複雑そうな表情を見せる。
 「あ…の、カズキ君?あのね、別に…。」
 年頃の少年の年頃の姉に、微妙な対応をしてしまったかとイツキが焦っていると
 「カズキも着てみたいっ!貸して!カズキも着るっ!着たいっっ!」
 とんでもない勢いで言い出す。
 「そっち?」
 イツキの問いにコクコクと頷いて返すカズキ。
 「貸してぇーっ!」

 「えーと…取り敢えず、パ○ツ姿になってぇ…。」
 中で繋がっている男子部屋の片方の部屋。その部屋に併設されているバスルームからカズキの声がする。
 先程駄々を捏ね、ほとんど無理苦理準備して貰った、イツキの装束に着替えているところである。
 「まずズボンを穿き、腰まで引き上げたら留めないでおいて、その状態のまま薄手で裾の短い方の上着を羽織り、右側を先に左脇に挟み込む位に持っていって…。」
 着替えるところを見られたくない『お年頃』のカズキと、その様なはしたない格好は見たくないイツキなので、ドアを挟んでの指示となる。
 「右側を先に…。」
 イツキが出す指示を確認するように、復唱しながら従って着付けていくカズキ。
 「反対側も同じようにしたら、裾をズボンの中に入れて留める。」
 「反対側も同じよ・う・に…?ズボンが留められませんっ!って言うか、留めようとすると前がはだけるっ!」
 「んー?左側を持って行く時は、先に合わせた右側を押さえ込むように、きつめに持っていくんだよ?」
 「きつめ…に…。くぅー…。」
 悪戦苦闘している様子がいやでも伝わってくる。
 「右側の端を、左脇に巻き込む位にしたかい?」
 「右側の端をひだりわきにまきこ…む…っ…むっ…むっ…。」
 他にどのように表現したものかとイツキが悩み始めた横で、面白がって待機していたヤスノリが、ドアを隔てたカズキへと声を掛ける。
 「カズキー。お前、浴衣を一人で着る時どうしてる?帯するとき。」
 「浴衣?帯?……一人で浴衣…って、そっか!」
 カズキはヤスノリの問い掛けをきっかけに、なにやら思いついたらしく、いそいそとやり直す。
 「?」
 イツキが不思議そうな表情をヤスノリに向けると、ヤスノリは浴衣を着る真似をして見せる。
 「浴衣って、前を合わせたら、後は帯で留めるだけなんですよ。子供用のなら内側で止められるように、脇に紐が付いているんですけどね。」
 「あ…そういえばそういった形状の衣類があったね。普段あまり目にしないから忘れてたよ。」
 「ズボン留めた!前もはだけてない。で、次は、薄手で裾の長めのヤツだよね?」
 カズキの達成感を含んだ声が、ドアの向こうから聞こえてくる。
 「そうそう。それは羽織るだけね。そしたら直ぐに、ちょっと厚手の表着を羽織る。」
 「フムフム…。って事は…この二枚を一緒に合わせて、ベルトで留めるって事?」
 「そうだよ。」
 「へー…。『浴衣』とか『着物』に似てるねぇ。」
 ゴソゴソと羽織ながらカズキが言うと
 「下にズボン穿いていたり、表着の柄のモチーフが違ったり、袖が細かったり、ベルト留めだったり、下に来ている物の裾をワザと見せていたりで、受ける印象が違っちゃってたから見過ごしてたけど、表着のつくりって『着物』と似てるよな。」
 ヤスノリが同意する。
 「あっ!そ・か。なんか袖がモコモコすると思ったら…。出すんだったね、これ。後ろの襟ん所も変な感じがしてたんだけど…、コレも下に着てるやつをピッって立たせればいいのね。成程成程…。」
 ゴソゴソ…。
 暫らくするとドアの向こうから元気な声が聞こえる。
 「出来た!着れたー!」
 「おぉ。じゃぁ早速見せてみな。」
 ヤスノリが楽しそうに声を掛ける。
 が…ドアが開かない…。
 「カズキ?」
 ヤスノリが不審げに声を掛けると、中から囁くような頼りなげなカズキの返事が聞こえる。
 「……歩けない…。」

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○っぱー参上! ③

 引き続き、課長の『壮行会』ですが

 個人的に「飲み会」は困ってしまうワケです
 コミュ力低いモノで…。

 大抵の事は一人で完結してしまうというか
 『お一人様上等』なモノで

 ウチの会社ってば
 所属部署の事務所での作業とは別に
 「複数のクライアント様のところへ出向」
 というパターンもそれなりにありまして…。
 (自分も出向しています)
 で、そこにプラスして
 『複数の協力会社様からの、複数の出向者さん』
 も一緒に作業を行っていたりするんです。

 一出向先に複数人配置していますし
 協力会社の方も複数人づつ配置されています。

 で、流石に『課長の壮行会』だけはありまして
 普段顔を合わせない方々が多数参加なさっていまして
 知らない方多数・多少見知っている方少々・知っている方ホンの僅か、な状況…
 『お一人様上等』の私にどうしろと?
 (相手方から見ても状況としては同じでしょうけれどw)
 ましてや、禁煙者と喫煙者に分かれたり、少々遅れて出席された方もいたりするワケで…

 誰がどなたで、どこ勤務で、なに担当で、ウチの会社の方ですか?協力会社の方ですか?
 タバコ吸います?お酒が良い?ソフトドリンクにします?料理ちゃんとつまんでいらっしゃいますか?
 状態なワケですが…

 コミュ力の低いワタクシは
 話のきっかけがつかめないんだよぉっ!

 今更聞くに聞けない方もいらっしゃいますしね…(汗
 聞いた所で、次会った時に忘れていない自信もない
 何度も同じ事訊くのは気が引けますしねぇ…。
 
 まさか「ご趣味は?」なんて訊くわけにもいかないし…。
 (冗談が通じて笑い飛ばしてくださる方とは限らないし、
 アチラも笑い飛ばしていいのか判断に困るでしょうしね。)
 ノって頂いても、その先を繋げられるか自信ないですし
 (全く全然綺麗さっぱり知らない事で返答されても、訊ねる取っ掛かりが掴めません。)
 ましてや、お互いがお互いを余り知らないワケですから
 迂闊にイジルわけにも行かない…

 ゲームのキャラの様に、名前や所属等が表示されればいいのに…。
 だからって「ゼッケン付けて参加」っていうのも
 いかがなものかとは思いますが…。

 相手の方が話しを振ってくださった時や
 近くの席で、誰が混ざってても問題の無い話題などには
 極力混ざったり、愛想よく応じたりしていますが
 一人完結タイプなだけに話題を提供できない…(泣

 どなたか、
 アチラとコチラの関係が「他人よりちょっと近しい程度」でも
 問題なく振れて、尚且つ期間を空けて再び振っても失礼になら無い
 会話の弾む話題プリーズッ!

 取り敢えずは、『おしゃべり大好き』な方の近くに座ろうと思います。
 ↑後ろ向き解決法

 (酒が回ったのは多分別件。心当たり有りますので…。)

山も良いよね ⑳

 「あいつらはぁ、言いたい放題言っちまってぇ。」
 男子中学生四人組のおしゃべりを、少々離れた位置で眺めていた高校生組みと、混ざっているミヅキ。
 「滝の水音で、向こうまで届かないのが幸いだぁな。」
 「でも、アタシも不思議とは思う。今までずーっとあぁだったのかな?って。」
 「ミヅキィー。」
 シンが咎める様にいうと、
 「んー…そうねぇ…。」
 へ?
 キョウコの呟くような一言に、え!?キョウコも混ざっちゃうの?とシンが焦った表情を見せる。
 「?」
 ミヅキとマサトはシンをほったらかして、問いかけるような顔を向ける。
 「今までのオミさんは、『クールビューティー』で、ずーーーーっときてたんでしょ?」
 クールビューティー = どこぞのマスコミが、化け物や怪物を倒す際のオミの冷ややかな様子と、そこらの女性が裸足で逃げ出す美人振りから付けた渾名であるが…。
 「あのオミさんが、今までに一体どれ位の人に普段の姿を見せたかしら?ほんの一握りの人にしか見せなかったんじゃない?」
 「でも、例え一握りの人しか知らなくても、実態はアレで、知っている人が居ようが居まいが同じじゃね?」
 マサトが混ぜっ返すと、
 「同じだけどね。でも、知らない人にとっては『オミさん』イコール『クールビューティー』だし。」
 「見せなきゃ、そりゃ…。」
 「見せる気ないって思われているって事でしょ。見せるのはコレだけ、他は教えない、図々しく入り込もうとするなって。」
 「まぁ…確かに拒絶してる様子では有った。」
 話題を逸らす事を諦めたシンが、テレビなどで目にしたオミの様子を思い返しながら口にする。
 「実態はずーーっとあぁだっただろうけど、知らない人にとっては、今までも今もこれからも『クールビューティー』ってか。プライベートは全く分からなくて、生活感なくて、人目に触れるときは必ずイツキさんと一緒に居て。イツキさんと怪しい仲だって下世話な噂が流れるぐらいで…。」
 「そ・ゆ事。だからってオミさん達が、対部外者的に困るってワケでもないんだし。もしかすると、面倒がなくてラクなのかもしれないし、二人にとってはベストな在り様なのかも知れない。大体、必要ならその時にオミさんとイツキさんの二人で考えて、対応すれば良いことなんだし?」
 「私はそれとは別に、一体何がどうしてカズキなのか?ってところが気になるワ。」
 キョウコは一旦話しを切って、皆が気付かずにいた疑問を口にすると、シン、マサト、ミヅキの三人が一瞬固まる。
 「そーいえば…きっかけはカズキが二人に懐いたって所なのよね?」
 「カズキは以前から『テレビの超能力者』に興味を持ってたんじゃなかったか?詰め所の超能力者ではなく。だったら、見かければそりゃ懐くだろ。カズキの事だから。」
 ミヅキの疑問をマサトが確認を取るような形で修正する。
 「後、あの二人はそもそも何故、私たちの居る町に来たのか?って疑問が…。」
 「あー…そね。観光地ってワケでもないのにな…。」
 「詰め所の人が言ってたとか、聞いたな。泊まりに来た時に…。」
 シンがボソッと独り言のように口にする。
 「直接聞いたのか、話しているのを小耳に挟んだのか…。詳しくは知らんが、そんな様な事を言ってたな。」
 「聞いたって、何をどう聞いたんだ?」
 仮にも宿のスタッフが…例え家業の手伝いとは言え、泊まりに来た客の、泊まっている最中の事を外部に漏らすのは、憚るべき行為なので、シンが独り言のように口にしたにも拘らずマサトが食い下がる。
 「詳しくは知らんって言ったろ。詰め所の人がって言ってたから、超能力者同士相通じるものがあるのかなって思って、それ以上踏み込んで聞いたりはしてねぇよ。つか、知らない振りしろよっ。頭の片隅に押し込んどけっ。」

 お兄ちゃん達やお姉ちゃん達の様子など知ったこっちゃねぇと、カズキはイソイソと滝の裏側へと入り込んでいく。
 「滑りやすいとは言ってたけども…これは確かに危険な滑り具合で…。」
 オミが慌てて(カズキの服装を一瞬忘れて)声を掛けたのは、滝の裏側の、整備もしていない、絶えず水に濡れている状態の岩や落ちた場合の滝壺の危険性(この場所のはそれ程でもないが)を伝えようとしたからで、たとえ相手が同性であろうと、肌を目にするのを嫌がるオミが、カズキの生足姿をど忘れする程慌てて伝えようとした点をきちんと考慮し、細心の注意を払いつつ足を進める。
 「そーっと…そぉー…っと…。うひゃー…ぬるんぬるん…。外側の岩なんてメじゃない位、つるんつるん。でも…見たいから頑張るっ!」
 コケの一念に喩えるのは大袈裟だが、興味を持った事にはとにかく納得するまでチャレンジするカズキ。とは言え、今回は危険が伴うため、『危ない』とオミが判断したらその時点で強制的に安全圏へ移動させる、恨みっこ無しと約束させられているので、カズキとしては兎に角オミに『危ない』と思わせない事が、目的達成の為の最重要課題になる。
 「我儘言ってるのはカズキだしねー。あんまりオミさんに世話掛けちゃいけないよね、心配掛けるのもマズイけど。」
 普段のカズキの様子からは想像も出来ない集中力を見せ、両手両足を最大限に使用し安全確保に努めながら、じりじりと中央へと移動していく。
 オミは、カズキのその集中力とバランス感覚に驚きながらも、もしもの場合に間髪入れず対応できるよう、カズキに対して重点を置きながら辺りにも注意を払う。
 尤も、外側に居る一同は、先程まで何やら話し込んでいた様だが、今は無茶などもせずに、思い思い水遊び程度に戯れているだけで、危なっかしいのはタイガーのみであるが。

 「なぁ…。カズキが今移動してるあの岩場、俺が朝登った岩場より危ないんじゃないか?」
 「危なさそうではある…。」
 シンとマサトが心配気にカズキの様子を見守っていると
 「今、ソレ聞いて来たワ。」
 キョウコが声を掛けながら、少々急ぎ足で寄って来る。
 実の姉であるミヅキはオミの傍らに留まって、タイガーを抱っこしつつカズキの様子を心配気に見つめている。
 「オミさん判断で、危険と思ったら安全圏に強制移動させる約束だって。恨みっこ無しで。」
 「成程ね。だったら、まぁ、良いんだけど…。」
 言葉とは裏腹に、心配気な様子は晴れないシンとマサト。
 「あんた達…、結構カズキには甘いわよねぇ…。」
 キョウコが愉しげな様子で口にする。キョウコとしてはからかうつもりも莫迦にするつもりもなく、只単に感想を述べただけだが
 「甘くねぇし…。」
 「甘えさせたりしてないし。」
 二人は仏頂面で返し、そっぽを向く。
 「「つか、一番甘いのそっちじゃんっ。」」
 声を揃えて反論するが
 「あら、そうだったかしらぁ~?」
 あっさりとしらばっくれられる。
 

山も良いよね ⑲

 幾重にも重なる木々に囲まれた森の奥。
 ぽかりと穴が空いたように日の光が差し込み周囲を照らしている。
 その差し込む光の奥から涼やかな、だが大量の水が流れる音が聞こえる。
 崖を伝い、溢れ出した水が勢い良く流れ、落ちている。
 大量の水飛沫が、崖に沿って伝い垂れ下がっている葉を艶やかに濡らし、その水に濡れた葉が、差し込む日の光を流れる水に負けじと跳ね返している。

 オミが高度を下げ、樹木の間を縫うように流れる細い川に沿って移動し始めると、前方に件の滝が姿を表す。
 「ぅわぁ~いっ!」
 カズキが軽く飛び跳ねながら興奮した声を上げる。
 「おーすげえー。」
 「細いのが垂れるように流れてるのかなー?なんて思ってたのに…。」
 「あー…滝つぼ深くないって聞いたもんなぁ…。」
 『お兄ちゃん達』も、つられた様に感嘆の声を上げる。
 「滝の…落ちる水がカーテンみたくなってるっ!」
 大興奮のカズキ。きゃっきゃっ言いながら小さく跳ねていると
 「カズキ…カズキ。判ったから、落ち着きなさい…っ。」
 ミヅキに両肩を押さえられ言い聞かせられる。
 
 崖上部は緩やかな斜面になっているのか、流れ出す水が多量な割には周りに草花が咲き乱れ細い木も生えている。
 湧き出した水は、その草花や細い樹木の間を縫うように流れ、合流し水量を増しつつ流れ、突き出した岩にぶつかり分岐しを繰り返し、水量を増しつつ下へ下へと流れ落ちていく。
 崖の途中途中に、崖を構成している岩の一部が張り出し、ある所では屋根のように伝い流れ落ち、別のある所では深皿のように水を溜め、縁から溢れた水が零れ落ち、落ちた先で別の流れと合流し新たな流れとなって崖を伝い下っていく。
 上からの流れとは別に、岩の間から新たに僅かずつ湧き出る水もあり、その水が新たな流れを作ったり、或いは上からの流れと一つになり僅かとは言えその流れを勢いづかせる。又、新たに作られた流れも、途中で分岐合流を繰り返し、上部からの流れと混ざり合い区別が出来なくなる。
 水の流れは崖の下部へ向かう程その量を増やし、増えた水は勢いを増し、崖の岩肌を滑るように流れ落ちていく。
 そして再び、屋根のように突き出た岩のところではその表面を撫でる様に流れ、深皿か天然の石鉢のような場所では流れ込む水が細波を起こし、波紋が揺れ、水面に漂う水草や上から垂れ下がったつる草を揺らし、流れ込む水の勢いや量そのままに、その広い縁から流れ落ちていく。
 最下部では流れる水の量も多く、突き出す岩も大きく多くなるため、流れ落ちるその様は、先にカズキが表現したように、水のカーテンのようになる。

 「オミさん、オミさん。」
 カズキが、苔生した岩を跳ねるように飛び伝いながら、滝から少し離れた岩の上に座るオミへと声を掛ける。
 オミはと言えば、アラレもない姿の少年が自分の方へ向かってくると察知し、岩の上で素早く背を向け、そのはしたない姿を視界に納めまいとする。
 「ぇー…と…上着は着てるんだけど…?」
 カズキの声に首を横に振って返事の代わりとするオミ。
 「はぁ、左様で…。生足モロ出しだからダメ?」
 首を縦に振って答える。
 「足ぐらい…にはならないのね、オミさんには。」
 再び首を縦に振り肯定する。
 「フム、わかったー。でね、滝の…水がカーテンみたいになってるところ、あそこの裏側に行ってみてもいい?崖側のほうに。」
 頷いて許可するオミ。
 「やったじゃ、早速…。」
 カズキが喜んで滝へ向かうべく足を踏み出すと、何かに気付いたらしきオミが、慌てた様子で振り返る。
 「あ、ちょっと待っ…。ぅぁあーーーーーっ!!

 「今のはカズキのせいじゃないからね…?」
 オミの声に驚いて立ち止まると同時に、オミの大声の理由に思い至ったカズキが冷ややかに確認を取るように尋ねる。
 「カズキが生足モロ出しなのは、オミさん知ってたし?」
 更に確認。
 「振り返ったのオミさん自身だし?」
 ダメ押し。
 カズキの言うように、分かっていて自ら振り向き、カズキのはしたない姿(オミ基準)を間近で見てしまったオミは、耳まで赤くして恥ずかし気に、抱きかかえたタイガーの背に(全く隠れないが)顔を突っ伏する。
 「ナャー?」
 どーしましょ?とでも言っているかのように、タイガーはカズキへと困った顔を見せる。
 
 「オミさんは、アレで大丈夫なんだろーか?と失礼ながらつくづく思う…。」
 「あー…思わず心配しちゃうよな。相手の方がず~~~~っと年上なのに。」
 オミとカズキの様子を、滝壺を挟んだ対岸から眺めていた中学生男子四人組が、呟くように口にする。
 「イツキさんが居るからなんとかなっているのか、それとも逆に、いるからあーなのか?」
 「日常生活能力も低そうだもんなぁ。」
 揃いも揃って失礼な物言いをしている。
 「そーいやぁ、タイガーの餌の支度以外でキッチンにいるとこ見たこと無い様な…。」
 「風呂入って…頭乾かすの、イツキさんがやってたよな…。勿論、風呂の準備もイツキさん。」
 「洗濯機の使い方も教えてくれたのはイツキさんで、オミさんは一緒に聞いてただけだったような…。」
 「掃除しているところも、手伝っているところも見たことない。」
 「昼飯ん時も…皿を出して盛って貰ってたような?勿論イツキさんに…。」
 …えーと…?
 ((オミさんってば、一人じゃ生きていけないんじゃないのっ?))

山も良いよね ⑱

 『空中移動』状態に慣れてきた一同は、オミに注意された範囲内でそれぞれ思い思いにうろつき始める。
 「お?あれ?オミさん、高度あげた?いつの間にか木の天辺が下になってる…。」
 「うん。上げた。この先に背の高い木が群生してるから。オミだけなら急な移動も平気だけど、みんなは怖いだろうと思って。」
 「背の高い木ってアレ?」
 カズキが進行方向を指し示し尋ねる。
 「そうそう、それ。のっそりと上に飛び出してるでしょ?上を越えようと思ったら、予め高さを取っていないとL字で移動する事になるし、間を抜けるなら狭い範囲に集まって貰わないとならないから…。」
 「L字かぁ…あの高さを。」
 ぐぅぅぅっと見上げるカズキ。
 「うん、結構怖いと思うよ。L字移動は上がるときより下がるときの方が、ゥン十倍も怖いだろうけどね。」
 「あー…あぁ…はいはい。地面に激突か?って思っちゃいそう。」
 「でしょ?ま、ゆっくり下りれば良いでしょって話しでも有るんだけど。それでも、数経験して居て、よっぽど相手を信頼していないと怖いだろうなと…。」
 オミの話しを聞きながら『その状況』を頭に思い浮かべているカズキは、相槌を打って返事をする。
 「木の間を抜けないのはなんで?オミさんが大変?木を避けたり、木の枝避けたりで。」
 徐々に近づいてくる高木の群生を目にしつつ好奇心から尋ねる。
 「ぅー…ん。オミはそれ程でもないけど、みんなは怖いんじゃない?やっぱり上を移動するより、小刻みに方向を変えないとならないから。」
 「ウネウネって?」
 「そうそう。ま、急いでて邪魔で壊しても構わないなら、片っ端から壊して直進するけど、そういうワケでも無いんだし?一番穏便な移動を選んでみたの。」
 悪戯っぽく微笑みながら物騒な事を口にする。
 「大体、ソレするんなら、テレポでの移動を最初に考慮するし。テレポでの移動が出来ない、したらいけない、するワケに行かない、する気にならない時に浮かんで移動するんだし。今みたいに浮かんで移動したいって時とかね。その程度の時に破壊して進むのも、ソレはソレで如何なものかと思うしねぇ…。面倒臭いってのもあるけど。」
 ご希望なら木の間をすり抜けるけど、どうする?あそこの木はそれなりに密集しているけど?
 オミに、あっさりと続けて訊ねられる。
 「……その手のスリルは『今度』『機会があった時』でいいです…。」
 樹木の間を、横移動上下移動を繰り返して移動している様子を思い描いたカズキが、珍しく遠慮する。
 「そぉ?アレはアレで結構楽しめるけど?」
 自分はその状態に慣れているからか、珍しく遠慮するカズキを面白がって勧める。
 「ソレって、『遊園地』のジェットコースターみたいですね。スピードがあれば。」
 傍らで話しを聞いていたヤスノリが話しに混ざる。
 「ジェット…あぁ、そうだね。似ているね。」
 オミがケロッと同意する姿を見て、カズキが思わず意外そうな表情を見せる。
 「オミさん、そうゆうの平気なんだ。やっぱり超能力者サンはそうゆうの怖くないの?」
 「?オミ、ジェットコースターは乗らないよ?浮いている時平気なのは自分でコントロールしているからだよ。」
 「あ。あぁ、成程。」
 確かにジェットコースターは超能力で動かしたりはしないしな。
 カズキが納得していると、オミが続ける。
 「後は、キーちゃんに任せている時位かな。怖いとか感じないの。」
 合格対象者が随分と少ないんだねー。
 あっけに取られてしまう。
 「で、お前はなんで折角の申し出を辞退したの?」
 ヤスノリが判っているくせに意地悪そうな表情をしてわざと訊ねる。
 「あーゆーの苦手だからですっ。」
 カズキは悔し紛れに正直に答える。
 判ってるくせにー。ヤスノリのカバッ、いじめっ子ぉーっ!
 どう逆立ちしても勝てないカズキの、心の叫び。
 オミは先程のカズキの、カズキにしては珍しい遠慮や、ジェットコースターの例えの際のオミ自身の返事に対して見せた意外そうな表情から、なんとはなしにそうであろうと察していたので、むくれるカズキの面子を傷つけないよう注意し、慰めの意を込めつつ微笑みかける。
 「ジェットコースターと言えば。オミさんは賛成だったんですか?建設に。」
 幾分離れた位置からキョウコが訊ねる。
 女性としては背の高い部類に入るキョウコは、自分が立っていたら皆が景色を見て回るのに邪魔になるかと、先程までミヅキと同様に座った状態で、遠くを飛ぶ鳥の姿や流れ行く風景をボ~~~っと眺めていたが、話題に少々興味を惹かれ、方向性は違うが会話に参加する。
 「ううん、反対した。超能力者でアレに賛成したのは、近年比較的大規模な被害にあっていない地域の詰め所勤務者位じゃないかな。」
 「超能力者サンの『本部』は絶対反対って表明してたんですよねぇ。なんで強行したんだろ?」
 打算的に考えると、超能力者の反感を買い敵に廻す事になりかねない為、もしもの場合を考えたらマイナスばかりでプラスにはならないだろうにと首を傾げる。
 「うー…ん『反感』については、そうなんだけどねぇ。でも、『本部』の意見って強制力ないしねぇ。」
 「強制力ないの?」
 既に建設され稼動している大型建造物の建設計画時の話しでは、幼すぎた為に世間でその様な話があったとは判らずにすごしていたので、話しに加われずにいたカズキが『混ざれるポイント発見!』とばかりに参加する。
 「平時の事柄に関しては無いねぇ。非常時で要請が来たら、その場合は強制力が認められるけど。」
 オミの説明に目を丸くして理解を示すカズキ。
 「というのが本来の基本原則。」
 オミが悪戯っぽく笑いながら付け足すと「ん?」と顔しかめる。
 「実際は、さっき出たように『反感』を買いたく無いからって本部の意向に従っちゃうみたいね。やっぱり、超能力者のご機嫌は損ねたくないらしい…。」
 「じゃぁ、ホントのホントに反対を押し切って造ったって事ですか?」
 「ぅん、まぁ…そうなる。危ないからねぇ…なにかあった時の被害が比較にならないでしょ?人が多く集まるだろうし、状態としては不安定なんだし。休みの重なる時期で、高い位置にいるときに『騒ぎ』が起こったら、どれ程の被害が出るだろうって考えたら…ね。反対して当たり前だし、諦めて欲しかったんだけど…。」
 強行しちゃったねぇ。
 とヤスノリの問いに苦笑して答える。
 「タハー…。でも…俺、あれ乗りたいなーって思ってるんです…。」
 バツが悪そうに、でも正直に本音を口にするヤスノリ。
 それを聞いたカズキがどこまで本気か不明ながら
 「危ないよヤスノリ。落ちちゃったらどーすんの?ガーって行って、そのままどっかに飛んで行っちゃうかもしれないし…っ。」
 「んなワケあるか!阿呆っ!」
 それを聞いて、素早く返すヤスノリ。
 『阿呆』呼ばわりされたカズキが言い返すより早くオミが口を開く。
 「飛んで行っちゃうかは判らないけど…さっきも言ったとおり、危険な状態になり兼ねないのは事実だからねぇ…。」
 「「っ。」」
 カズキやヤスノリは勿論の事、二人のやり取りを何時もの事と受け流していたキョウコも、なにをそこまで神経質に気に掛けるかと不思議そうな顔を見せる。
 「忘れちゃった?ある程度の範囲に一定以上の人の思念や感情が集中するとモヤモヤが…。」
 あっ!そっちか!
 オミの言葉に刺激され、ケロっと忘れていた生活上の注意が思い出される。
 「ああいう場所だと、人が大勢集まるわけでしょう?乗るのに順番待ちしないとならないだろうし…。長時間待たされたらイライラするよね?お行儀や態度の悪い人もいるだろうし…、余計イライラしちゃうよね。」
 最悪の場合どうなるか…想像できるでしょ?
 「黒いヤツが…。」
 「そ・ゆ事。」
 カズキがうへーという表情をしながら答えると、オミが褒めるように微笑みかけ肯定する。
 「空から突然得体の知れないものが落ちてきたとか、地中から突然…とかの場合は、その直ぐ近くにいて初っ端に被害にあった場合はアレだけど、ちょっと離れていれば助かる場合が多いよね?でも、モヤモヤの場合って…ある程度濃くならないと誰も気付かないし、気付いた時には手遅れだったり、ね。モヤモヤの発生初期って近くにいないと気付きにくいし、でも近くにいると大抵、被害に合うし…。困りものなんだよね…。」
 「ジェットコースターは諦めるか…。」
 乗ったは良いが、上にいるときに地上でモヤモヤが発生しようものなら避けようもなく突っ込んで行く事になり、その先の事は考えたくもないと、ヤスノリが渋い表情をしつつ残念そうに呟く。
 「混んでなければ良いんだよ。人が少なめならイライラせずに済むし思念も溜まりにくい。」
 よっぽど超絶短気で自己中の我儘な人が混ざっていなければ安全安心だからね。

山も良いよね ⑰

 「「おぉ。良い眺め~~。」」
 感嘆の声が誰とも無く漏れる。
 「オミさん。後ろ向いてもいい?平気?落ちない?」
 おねだり大将カズキが訊ねる。
 「いいよ、落とさないから。」
 オミの返事を受け、では早速とばかりにカズキが後ろを向く。
 「ぅわ~い。光ってるの見える。あれ何?海?昨日のところ?」
 興奮状態のカズキから矢継ぎ早に問われる。
 「ううん、違う。昨日ところはもっと左。ここからじゃ浜は見えないけどね、影になっちゃうから。」
 「そっかー…、でもここから見える海も綺麗だね。凄いね。」
 「ここいら辺は浄化が早いんですか?一昨日の畑の作物や昨日の浜も、今日の沼や池や川も…。奇形種の影も形も見かけませんが…。」
 シンが不思議そうに訊ねる。
 「キーちゃんとタイガーとオミしか基本いないしねぇ…。あんまり汚れないし、自然には自然の浄化力があるしねぇ。」
 シンに限らず、同行の少年達共通の疑問であろうと思い、落ち着いた態度で答えるオミ。
 「場所が場所だから、溜まり難いんじゃないかな。それに、ある程度個体数があって世代を重ねられれば、汚染の影響は抜けていくんだよ。っていうか…汚染の影響が弱くて済んだ固体や、そもそも影響を受けなかった個体が、子孫をより多く残せたり、残せる可能性や機会をより多く持っているから、時間が経てば経つほど『影響を受けなかった個体』の子孫が増えるんだよ。今、君達『影響を受けた形跡の無い人』が沢山いるのも同じ理由だね。尤も『影響を受けた個体』だって、僅かずつとは言え子孫を残せるんだし…。」
 「でも、汚染の影響が強く残っている場所とかもありますよね…。」
 オミの話しが途切れた時に、今度はマサトが訊ねる。
 「地面だって表面は風に飛ばされたり…雨で流されたりするしね。流れるところがあれば溜まるところもあるワケで…。周りの汚染が一ヶ所に溜まったら、そりゃ強く影響するよ。」
 「吹き溜まりにゴミが溜まるように…?」
 カズキが、様子を想像しながら尋ねる。
 「まぁ…似たようなモノかな…。溜まるブツがブツなだけに困り物だよね。」
 「でもココって、やたら綺麗な気がするんですけど…。」
 キョウコがダメ押しに訊くと
 「超能力で浄化なんてしてないよ?オミ達がここを見つけたとき既に、ある程度の浄化はされていたし。」
 オミの返事になる程と頷く。
 「どうもねぇ…、バクテリア?だか何だかの菌が良いみたいよ…。オミは詳しくないし聞いたのも随分前だから、良く分からないんだけどね。環境の変化に対応できた固体が世代交代でどうのとか言ってたような気がする…。バクテリアとか菌類なら、まぁ世代交代は早いだろうし?生活環境を変えようとしたって移動可能距離なんてタカが知れてるからねぇ…、死滅するか耐えて自らを変えてソコで生きるかなんだろうねぇ。」
 「で、耐えて生きながらえた種が生命活動を行っていたら、結果として浄化が進んだ?って事か。」
 オミの説明を受けてシンが結ぶ。
 「そそ。ま、『合理的判断』だか『科学的考察』だかの一例ね。『こう考えるのが妥当』とか言ってたような…。オミは、面倒臭くなったから聞き流しちゃったんだよね…。今でも『浄化されてるんだから良いじゃん』って思ってるし。」
 テヘヘと無能ップリを笑って誤魔化す。
 と、難しい顔をしながら首を傾げていたカズキが口を開く。
 「ねぇねぇ。汚染された環境で耐えて生き永らえたバクテリアとかって、浄化された場所で生きていける?」
 「んー…無理じゃないかな。」
 「…した場合、せっかく環境に合わせたのに、又合わせ直さなきゃなら無いって事?」
 「ココでは…多分、そうだろうね…。或いは、両方に対応可能な種に変化するとか。」
 「『両方に対応可能』か…。」
 オミの返事を僅かに考えた後、ぴょこっと顔をあげて
 「なんか格好良いね。」
 嬉しそうな笑顔を見せる。


 「ねー。下に見えるところって、シンちゃんが辿って言った川だよね?釣りしてたところってどこ?」
 難しい話はお終い、とばかりにカズキが足下を流れて行く景色を眺めながら訊ねる。
 「んー、二股に分岐しているところだけど?片方が幅が広くて流れが急だったね。」
 一同はオミに空中へ浮かべて貰いながら、歩くよりは早く走るよりは遅い速度でゆっくりと移動している。
 「ほうほう。あ、あの辺か?って、上流の方が川幅が広くて水量が多いって変な気がする…。」
 腑に落ちないという表情をしてオミを見る。
 「水量が多くて川幅が広かったから無理やり分岐させたんだよ。」
 って事は、ここでも大型土木工事を行ったワケですか…。
 そうですか。成程ねー。
 ここもかい。
 オミの返事に冷ややかな雰囲気で応える。
 「あ。ねぇオミさん。動いたら落ちちゃう?」
 「え?いや、少しぐらいなら平気だけど?」
 微妙な空気が漂ったことに注意が向きかけていたオミへ、全く異なる種類の質問がカズキから発せられ少々戸惑う。
 「少しってどれ位?みんなが一斉に『少し』動いても平気?」
 安全確認を怠らないカズキ。
 早い話が『動きたい』って事ですが…。
 カズキの言外の希望に気づいたオミは、軽く微笑みながら
 「ちょっと待ってね。」
 声を掛ける。
 カズキが何を待てば良いのかと思案しかけた所へ
 「ok。足元見て。」
 オミが促す。
 言われたとおりに足元を確認すると、若干見え方が変わっているのに気付く。
 「「「????」」」
 「なんか…曇った…?」
 「薄~く白く濁ったっポイ?」
 口々に気付いた点を口にする。
 足元の変化に注意を向ける彼等の姿を微笑みながら眺め
 「その『色の変わっている範囲』なら、移動しても絶対に落とさないから。」
 キッパリと安全(確保)宣言を口にする。
 オミの宣言に『へー』と判ったんだか判っていないんだかな表情で返しつつ
 「じゃぁ、ここいら辺は勝手に歩いたりしても大丈夫って事で…。」
 自分に言い聞かせるように誰とも無く呟く。
 「って、事は。文字通りの『空中散歩』!?ヘヘー、歩いちゃろ。」
 誰かの呟きを耳にしたカズキは、言うが早いかさっさと歩き出す。
 カズキが歩いている姿を目にしたトシは、それが刺激となったか
 「あ、そーか。歩きまわっても平気って事は…寝っ転がっても平気なんだよな。」
 あっさりと寝っ転がり、空中のさらに上空を眺める。
 「空の上も、やっぱり空なんだねぇ。」
 当たり前です。
 「で、うつ伏せになると…遠くの地面が勝手に流れ去っていく、と…。」
 「トシィー、ちょっとお行儀悪いんじゃない?」
 「えーー。だって、立ってても座ってても寝転がっても、ひと一人分の負荷って同じじゃね?って、ミヅキはなんで座ってんの?高いのが怖かったか?」
 「ううん。怖いんじゃなくて、転びそうな気がしたから。座ってる方が安全かなって思って。」
 「ん?怖かった?もうちょっと低くする?遅くもできるよ。」
 ミヅキやトシの様子に気づいたオミが声を掛ける。
 「平気でーす。」
 「俺は空中ゴロゴロを満喫させてもらってまーす。」
 空中ゴロゴロ?
 オミは不思議に思ったが、トシの寝そべった様子を見て納得する。
 「寝っ転がってるだけで移動出来ちゃうなんてス

山も良いよね ⑯

 「なぜかしら…?カロリーを消費する為に必死に泳いだのに、それ以上を摂取している気になるのは…。」
 毎度毎度のキョウコの嘆き。
 「だってぇ…おいしぃんだもん
 カズキがシナを作り女言葉でふざけると、キョウコにこいつめと軽く拳固を貰う。
 「アタタ…。でも、だって、美味しいから止まらないじゃん?止まらないから目一杯突っ込んじゃうじゃん?食べ過ぎちゃうじゃん?で結果、大量摂取…。」
 ハフークルシー。
 大真面目な表情で大真面目に説く。が、内容は単なる食べ過ぎる言い訳だったりする。
 「君達、小気味良く食べてくれるからなんか張り合いがあって。良いんだよねー。」
 イツキが嬉しそうに口にする。
 「で…満腹のところアレなんだけど、一応聞いとく。『夕飯何が良い?』」
 「「「考えられませんっ!!」」」
 当たり前すぎる応えが返る。
 返事の内容もタイミングも力の籠め具合も完全一致で返って来た事に大笑いするイツキ。
 「き…君達って…。」
 息も絶え絶え、お腹を抱え目には薄っすら涙を浮かべながら
 「じゃ…適当に…準備しとくわ…。早めの…時間が良いね。」
 朝が早かったし。夜早目に寝れるようにね…。
 と続ける。
 笑いの止まらないイツキを眺めつつ、カズキが不思議そうに呟く。
 「イツキさんって笑い上戸?一昨日も確か…笑い過ぎて死にそうになってたような…?」


 「えーと…いいかな?じゃぁ、なるべく寄って…。」
 食休みの後、せっかくだから腹ごなしにもうひと泳ぎと、思い思いに泳ぎ回った後。
 綺麗に胃袋に収められた昼食に使用した、コンロや食器などドリンク以外をイツキが一足先に持ち帰り、落ち込んで考え込んでばかりいたオミが、皆が泳いでいる間に挽回せねばと、衣類やドリンクは脇へ避けつつ日除けテントを片付けてしまう。
 少年達は泳いで戻ってみたら、ドリンクや衣類以外は綺麗さっぱり片付けられていたので思わず不平を口にするが、オミの口にした理由を聞き大人しく口を噤む。
 「だって、朝は早かったし、沢山歩いてるし、知らず知らずの内に疲れが溜まってるんじゃないかなって思ったから…。そうゆう時ってケガしやすいし…。テントの骨組みを頭にぶつけたりしたら大変じゃん。」
 「それに、コンロの火とか…やらせちゃったし…。」
 オミが、続けて口にした内容と表情がアレでソレだった為、刺激してはマズイと、尚一層大人しく引き下がったようなものだが…。
 そんなこんなをやり過ごし、本日第三の目的地へ向かおうと、オミが少年達に声を掛けたところ…。
 「はい、はいっ。カズキお願いがあります。」
 次の目的地へとテレポでポンするつもりでいたオミへ、積極果敢なカズキの申し出。
 「な…なんでしょう?」
 「できれば…テレポじゃなくて…その…。」
 声を掛けたところまでは威勢が良かったが、後になると歯切れが悪くなる。
 勢いで声を掛けたは良いが後からなにやら気付き、ささやかに悔いた模様。
 「えーと…。ダメならダメって言ってね。あのね、カズキ、テレポじゃなくて、空に浮かびながら移動したいなー…って思って。」
 言いかけた以上最後まできちんと言いましょうと教え込まれているのか、バツが悪そうにしながらも最後まで続ける。
 「空に…浮かぶ…。」
 オミはカズキの言葉を反芻しながら上空を見上げ
 「?」
 目でカズキに問う。
 問われたカズキは勢い良く頷いて肯定し
 「ダメ?かな…?」
 顔色を伺うように、おずおずと再度訊ねる。
 「別に、良いけど。ちょっと時間掛かっちゃうよ?着くまでに。」
 「少しくらいなら気にしないしー。お空の散歩ってしてみたいなーって思ったり…。」
 エヘエヘエヘ、ダメ?
 ダメ押しに嘘くさい愛想笑いまで添えておねだり状態のカズキ。
 「フム。みんなは?」
 念の為、一同の意向を確認する。
 「「はぁ…。まぁ、別に…。」」
 「「空の散歩は…してみたいかも…。」」
 「「オミさんがしんどくなければ。」」
 消極的賛成8 ・ 反対0
 「じゃぁ、そうしよっか。」
 カズキは、オミの一言を聞き小躍りして喜ぶ。
 「ィヤッホーッ!やったぁーっ!空の散歩~~


山も良いよね ⑮

 「シンちゃん、火は付けたんだけど…広げないとマズイよね?」
 トシがバーベキューコンロを指し示し、コンロ内で火を均一に広げるべきかと、オミの様子を気にかけているシンへ声をかける。
 「あ…あぁ…。」
 とは言え、シンはオミを落ち込ませたのは自分な為、オミを放って置いては拙いだろうと、声を掛けられても気軽には応じられずに居る。
 「えーと…燃え立っちゃって…どうやればいい?」
 シンがコンロへと目を向けると、コンロの上部から炎の先が見え隠れしているのが分かる。
 「あー…分かった、今やるから…。」
 オミの様子を気にしつつも、コンロの火に関しては自分が任されている上に、火の取り扱いは年長の男子の役目であると思い直し、急ぎコンロへと向かう。
 「こっちの空いている方から…チョイチョイって、引っ張り出すようにすれば良いってのは…分かるんだけど…。」
 言いながらコンロ内部を覗き込もうとするトシ。
 「あ、ちょっと…トシ危ないよ、火に被さりかけてる…っ。」
 トシは斜めに身を乗り出して覗こうとしていたので、炎の直ぐ横に肩が寄ってしまっているのを、キョウコが見咎め声を掛ける。
 「お?おぉっ!」
 大慌てで離れるトシ。
 「やるやる、俺がやるから…。トシ、火傷しなかったか?」
 炭トングを受け取り、トシに声をかける。
 「うん、平気。」
 「なら良いんだけど…。」
 火をコンロ内に広げながら今度はカズキへと声を掛ける。
 「カズキ、鉄板と金網出しとけな。」
 「は~い。」
 言い付けられたカズキは、ササッと取り出しシンの元へ。
 「シンちゃん。オミさん、どーする…?」
 「んー…、困っちゃったな…。しくじった感いっぱいだ…。」

 オミは、というとしゃがみ込んだ状態で…。
 (どーして…オミが数百年掛けても気付かなかった事を、たった数時間で気付くかな…?オミが鈍いのかな?工夫が足りない?オミ、おバカ?タイガーの事ちゃんと見れてない?ぬいぐるみと同じ扱いしてる?)
 先程から同じ様な事をグルグルと思い悩んでいる。
 タイガーは、そんなオミの姿を首を傾げながら見上げ、ぐるるぐるるとノドを鳴らしつつ小さな額をオミの膝へと擦り付ける。
 スリスリと額を擦りつけると再びオミを見、今度は膝に廻された手を舐める。
 「…ーゥ…。」
 オミの顔を見つめ小さく一声鳴くと、今度は頬を足へと擦り付ける。
 「……タイガー、慰めてくれてるの?ありがとね。大丈夫だよ。」
 ふぅわりと微笑み、タイガーの耳の間を掻いてやる。

 「おまたー。ってシン、随分獲ったな。」
 「おー、入れ食い?なんか凄かったわ。」
 オミが落ち込んでいる間に、シンの釣った魚を捌きに行っていた二人が戻る。
 「この一つだけ小さいのは…?」
 イツキが小ぶりの魚を出してみせる。
 「他のはそこそこのサイズなのにコレだけ小さめなんだけど…?」
 「あー…それは、タイガーのです。」
 「?」
 シンが真顔で答えるが『の』の意味が伝わらない。
 敢えてタイガー『の』分として確保したのか?欲しがったら分ければ良いだけでは?
 皆がキョトンとする。
 「えー…とですねぇ…。大きめのだとタイガーが怖がってるみたいでして…。で、ソレを釣った時に見せたら怖がらなかったんで、じゃぁこれはタイガーのねって。ヤル気になったみたいなんで、針を外して傍に置いたら止めを刺したんです。」
 だからソレはタイガー『の』なんです。
 シンの大雑把な説明に一応納得する。
 「タイガー。これコレ、タイガーのなの?」
 カズキが小さいサイズの魚を軽く振りながらタイガーを呼ぶと、呼ばれたタイガーは振り返り、カズキの手元で揺れる魚を目にすると、なにやら『閃いた』顔をし小走りに走り寄る。
 「ニャー。」
 クレクレニャー ソレタイガーノーとカズキの足下でウロウロする。
 「『寄越せ』と…?」
 カズキがタイガーの顔の前に差し出してやると、大喜びで咥え、オミの元へと持っていく。
 
 タイガーは魚を誇らしげに咥え、オミの元へと歩み寄り、咥えた魚をオミの足下へと下ろすと、胸を張って座り自慢げに一声鳴いてオミの注意を引く。
 「?どうしたの?これ。」
 オミの問いかけにタイガーは自慢げに鳴いて答える。
 シンの話しを聞くとはなしに聞いていたので、褒めて欲しいのかと予想を付けつつ、自慢気にも見えるので
 「タイガーが捕まえたの?」
 と訊ねると、これまた自慢げに一声鳴く。
 「すごいねぇ。タイガー凄いよ。狩り上手だねぇ。」
 褒めると自慢げに胸を張り、一声鳴いて鼻先で魚を押しやってくる。
 「え?」
 オミが訳がわからず一瞬戸惑うと、タイガーは既に満足気な様子で、皆の居る方へと向かっている。
 「え?なに?くれるの?オミに?」
 歩き去るタイガーと足下の魚を交互に見やり困惑するオミ。
 タイガーの一連の行動を、チラチラと盗み見していたカズキは、戻ってきたタイガーへ小さく声を掛ける。
 「タイガー、優しいねぇ。自分の獲った獲物、オミさんに上げちゃうなんて…。」
 タイガーはそれを当然の賛辞として受け止めるように一声鳴いて応える。
 
 
 食欲には全く勝ち目の無いカズキが率先して、イツキの持ってきた肉や、シンの釣り上げた魚等を焼いてくれと騒ぎ始めたので、オミのことはイツキに放っておけと言われた事等も相まって一先ず脇へおき、バーベキューを楽しみ始めた一同。
 「お肉がトロうま
 「野菜があまーい
 「ニャフニャフ
 「美味しーぃ。太るぅ~
 「魚ホクホク。ぁまぁいっ
 「くれーくれー魚くれー。」
 「ニャワーナーナー。ナォー。」
 「もしかして…タイガー、今カズキの真似した?」
 「ナ?
 等々賑やかに談笑しつつ楽しんでいる。
 そんな中イツキが飲み物を口に運んでいると、軽く袖を引っ張られる。
 見ると、新たな悩みの元である(タイガーから差し出された)魚を前にグルグルと考え込んでいたはずのオミが、その魚を手に困惑しきった顔で立っている。
 「キーちゃん、オミはこれをどうしたらいいと思う?」
 対応に困っているとタイガーに悟られては、タイガーの心使いを無駄にしてしまうと考えてか、小声で訊ねる。
 テレパシーを使わないのは、使えば良いと考え付かないほど悩んでしまっているからか…。
 そんなオミにイツキはあっさりと
 「食べたくないなら別だけど…、そうじゃないなら、軽く洗って食べればいい。焼いてやるから洗ってきな。」
 と答え、それを聞いたオミは心底安心し、納得した表情を見せ
 「じゃ、洗ってくる。」
 と大急ぎで川へと向かっていく。
 (小さめの魚一匹を洗う程度なんだから、PKで水をこっちに取ってきたほうが早いんじゃ…?)
 とオミの後姿を見送りつつ思ったイツキだが
 (ま、どっちでも違いは無いんだし…。つーか…そんなに煮詰まってたのかぁ。そうかそうか、アホタレさんめ。)
 直ぐに思い直し、バーベキューの焼き網や鉄板へと注意を戻す。

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