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最上部にて…

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つながり ⑥

 「今からだと…今日はもう閉まってるし、明日は後日祭あるけど購買部は休みだし…。明後日は、高等部そのものが休みだ。」
 「明々後日…ですか。帰路についている予定です…。父の会社の人に、私用で動いて貰うワケにいきませんし…。」
 モトザネがガックリと肩を落とすと
 「俺達で買って送ってもいいけど、どうせ買うなら年度が変わってからのが良いのかな?最新版になるんだし。って、それなら夏休みにでももう一度来れば済むじゃん。確か、毎年夏に新しいのが出たハズだ。」
 「マーちゃんに期待!ちょっと古い年度分になるけど、ついでに内部進学者用の内容だけど、あると予習になるし。傾向が分かれば対策を練れるしね。」
 「兄ぃが使ってたヤツは…もぅ俺達が借りちゃってて。皆で使い回ししてるもんだから、結構傷んでるしねぇ…。」
 気の毒がったリョウとトシが、自分たちで可能な協力や知っている情報を慌てて伝える。
 「やはり…傾向ってありますか…?コレと言う科目を重視するとか。」
 「ウチは…一科目を重視すると言うより、どの科目も先生方がノリノリで作成するって言う傾向があります。」
 大真面目にトシが答える。
 「ノリノリ?」
 「ノリノリです。定期試験が近づくと、先生方がウキウキし始めるんです。」
 トシが取り付く島もない様子で肯定する。
 「それは…。」
 困惑しきりのモトザネ。
 「ペーパーテストも内申書も重視するって、まぁ当たり前の事だろうけど。重視しませんなんて、言うワケないからな。でも一番の問題は面接だって、キョウコ姉もマーちゃんも兄ぃも言ってたな。実際、中等部受験の時の面接も中々のシンドさだったから、高等部もきっと…。」
 「そういえば入学式後の教室で、一番最初に話題になったのが『内部進学でも面接ってあんななの?』だったわ。一番最初の話題がソレなのねって思っちゃったわよ。」
 ミヅキがンか月前を思い出しながらリョウの後押しをする。
 「『あんな』?って…一体どのような…?」
 モトザネが不安気な様子を見せると、カズキがあっけらかんと
 「『じゃぁ、やって見せてくれ』ってカズキは言われたよ。」
 あっさりと答える。
 「内部進学って受験時期が早いんだよね。発表は年明けだけど。カズキは中等部の試験、もう受けたよ。」
 「手応えは?」
 軽い驚きを感じているモトザネを余所に、イツキが期待を込めて尋ねる。
 「んー…それなり?個人面接のときに『やってみせて』って言われた。だから、やったワケだけど…アレで良かったのかなぁ?ウケてはいたけど。」
 「受験の面接で『ウケる』?」
 イツキが怪訝そうに尋ねると
 「べ…別にウケを狙ったワケじゃぁ無いしっ!やったらウケただけだしっ!」
 逆切れしたかの様なカズキ。
 「なんか、ね…感心させると良いって聞くんだけど…本当かどうかは分からないのよね。」
 「『感心させる』?面接担当の先生を?」
 「うん、俺もそう聞いた。」
 リョウが同意すると、トシも同様に頷いて応じる。
 「だから…迂闊に迂闊な自己アピールはしない方が良いって。口だけで答えちゃうと『やって』って言われた時に困っちゃうでしょ?ただでさえ『受験だ』『面接だ』って緊張してるんだし。しくじり易い状態の時に狼狽えちゃったらマズイし、そもそもウソついちゃうのはマズイよねぇ。」
 
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つながり ⑤

 「あははははっ。冗談なのは分かりますが、彼の前では言わない方が良いですよ。冗談が通じない堅物って事はありませんが、その手の冗談は好まないようなので。」
 モトザネが屈託なく笑い飛ばすと、オミもテヘっと笑いながら軽く頷き承諾の意を示す。
 「?んー…?『気に入る』事が『エッチな意味』に繋がる?」
 小学生のカズキが首をひねる。
 「オミさん…。」
 ミヅキが眉を顰めながら少々責めるような口調で呟くと、それを耳にしたカズキが『あっ』と顔を上げる。
 「…って、えぇーーーっ!?きゃ~~~~っ。オミさん、えちーぃぃ。」
 漸く察したらしく、自分の両頬に手を添えつつ軽口を叩く。
 「カズキ困っちゃぅ~。リアクションに…。」
 最後の一言だけは大真面目に口にする。そんなカズキの様子にイツキやオミがクスクス笑っていると、モトザネがフと真顔になり
 「困る…。」
 思い出したように小さくつぶやく。
 「?どうしたの?なんか困ったの?」
 お金持ちサンでもやっぱり困る事あるの?カズキが素直に尋ねる。
 「あ…いえ、『困る』では無いですね。気になるって言うべきでした。」
 モトザネが訂正すると、カズキが悪戯な表情をしながら問いかける。
 「エッチな意味で?」
 ―― 一瞬の間の後の大爆笑。
 イツキもオミもミヅキもモトザネも、大口を開けての大笑い。
 皆に受けたことに気を良くしたカズキは、大満足の表情を見せながら胸を張る。

 ひとしきり笑った後、モトザネが漸く口を開く。
 「いえ…そうではなく。先程の、帰りがけのお話しで。『お兄さん』のシンさんでしたか、お付き合いをなさっている方の事が話題になっていましたが、その事で少々。」
 モトザネが笑い過ぎで目に浮かんだ涙をぬぐいつつ説明すると、それを耳にしたオミとイツキが素早く目を合わせる。
 イツキとオミの、その様子に気付かないカズキとミヅキは
 「シンちゃんの彼女さん?」
 「が、どうかしたの?シンちゃんがベタ惚れだってマーちゃんが言ってたけど…?」
 モトザネが、この場にいない人の噂話になってしまう事を気にかけ、言葉尻を濁した事など全く意に介さず尋ねる。
 「ご本人が戻られたら、直接お尋ねします。」
 モトザネが内容を伏せると、『お姉ちゃん』のミヅキは大人しく引き下がる様子をみせるが、好奇心丸出しで興味津々なカズキは、気になって仕方のない様子を隠そうともせず、しかしだからと言って、モトザネ本人がはっきりと『後で』と言っているものをしつこく食い下がるワケにはいかないと、やきもきしている様が簡単に見て取れる。
 カズキが訊きたい・でも訊くわけにいかないと、一人悶々としていると、比較的家の近いトシとリョウが戻ってくる。
 「お待たぁ~。」
 「そう言えばモトちゃん、ウチのガッコの『過去問集』持ってる?」
 「あ、いえ、まだ必要無いかと思って…。」
 「そ・か、そ・か。マーちゃんと兄ぃが気にかけてたからさ。高校の過去問を手に入れようと思ったら、高校の購買部に行かないと無理だから。」
 「え?そうなんですか?大手の本屋さんでも扱ってないんですか?」
 「…購買部でしか扱っていないって、中等部の先生も言ってたよ?」
 モトザネが慌てた様子で尋ねると、気の毒そうにトシが応える。
 「あ~…、失敗した。大手の本屋さんなら扱っているかと思ってました。問い合わせて郵送してくれるようお願いしたら、応じて頂けると思います?」
 「無理だと思います。」
 いらぬ誤解や混乱を与えぬよう、簡潔に答えるトシ。

つながり ④

 「ねぇ、次代どの。ちょっとお伺いしたいんだけど…。」
 イツキが、カズキやミヅキと打ち解け始めたモトザネへ声をかける。
 「はい?なんでしょう?」
 モトザネが快活に返事をすると
 「ぅん。ぃゃ…シンタニさん、なんだけどね。あの方、お父様の秘書さんですよね?この間は珍しくお屋敷にいらしてた…。」
 立ち入った事を尋ねる為、少々歯切れ悪く尋ねるイツキ。
 「あぁ、はい。父から付けられました。」
 少々苦笑いしながら『付けられました』にアクセントをつける。
 「『お目付け役』って事?」
 零れ聞いたカズキが、一部声を潜めて尋ねる。
 「えぇ…まぁ…。ですが、父の傍らを固めている方たちの中では一番の若手ですし。それに以前は…一時期ですけどウチに居ましたしたしね。母の手伝いと言う名目で。父に言われたらしく雑用をこなしていました。ですからそれなりに気心が知れていますので、楽と言えばラクなんですよ。」
 にっこり笑いながら、皆に青年に対しての悪印象を抱かせぬよう注意して説明する。
 「それに…お目付け役兼後見役なんです、正確には。」
 「後見?」
 ミヅキとカズキが揃って首を傾げる。
 「えぇ。ウチの場合、父も母も忙しくしていますから…『保護者』としての時間があまり取れないんです。まぁ、それは致し方ない事なので自分は既に納得しているんですが、世間一般的にはやはりマズかろうと言う事で『保護者』代わりの『後見人』を付けた、って言う事です。『保護者代わり』って考えると、彼は若すぎるんですけどね。ま、『父兄』の『兄』役って考えれば妥当かな?と。」
 最後はクスクス笑いながらの説明となるが、聞いていたミヅキやカズキは
 「はぁ…保護者代わりの後見人…。父兄の兄役…へぇー…。」
 呆気にとられるばかりで、さっぱり理解不能。
 尤も、『保護者』や『後見人』や『父兄』という単語の意味位は、いくらカズキが小学生であろうと『理解』は出来る。当然中学生のミヅキだって意味ぐらい分かっている。が、世間的に如何なものかという理由で『あっさりと』大人を一人準備して傍につける、その考えと対応が既に、世間一般の代表(と自認している二人)から見たら『理解の範疇外』となる。
 あまりにも『当たり前』が違いすぎると、ヒトはその『違い』や『差』に圧倒されてしまい理解不能状態になるものなのだろう。
 今回の二人には『違い』や『差』が大き過ぎて、自分がナニに圧倒されているのかすら自覚できずに、ひたすら『圧倒』されているに過ぎないが…。
 「えー…と、変ですか…?」
 二人の呆けた様子に慌てたモトザネが声をかけると
 「変…?かなぁ…?」
 カズキが再び首を傾げる。
 「まぁ…確かに、『そこら辺』のご近所に遊びに出るワケじゃぁないんだし…?遠い所へ出かけるワケだから…『保護者』なり『父兄』なりの同行は必要よね。」
 うん、それはわかるのよ。当たり前よね。子供だけで出かけても良いってされている所なんて限られるんだし。とミヅキが呟く様に口にする。
 「でも…なんか…違うのよねぇ…。」
 「なんだろう?この…妙な感覚…。」
 二人が二人して首をひねる。その様子を目にしたモトザネも、ワケが分からない為やはり首を傾げる。
 「保護者や父兄が同行できないんだから、代わりの人を付けているだけなのに…で、それは当たり前の事だって分かるのに…。なぁんか…こぅ、納得していない自分がいるのよねぇ…?」
 ミヅキが改めて口に出し考えをまとめようとする様子を見て、モトザネもナニが引っかかっているんだと首を傾げる。
 そんな子供たちの様子を気にも留めず、イツキが再び声をかける。
 「彼さぁ…次代殿も仰ったとおり『若い』ですよね。で、確か社員サンじゃぁ無い。」
 「えぇ、そうです。」
 それが何か?と目で尋ねる。
 「いやぁ…もしかして、最初から次代殿に付けるつもりで雇ったのかな?と思ってね。」
 「それは…どうでしょう。彼を雇った頃は自分はまだ『婿入り』予定でしたし。アチラに彼を出そうとは思わないのでは?」
 モトザネは一旦言葉を切り、イツキの反応を見ながら先を続ける。
 「自分は、もしかして妹の婿候補ではと思ってましたよ。ちょっと年が離れますが、社会に出れば歳の差のある夫婦なんて、大して珍しくないだろうと思いまして。」
 「あー…成程。確かに10や20、歳の違う夫婦なんてごまんといますもんねぇ。」
 イツキが同意を示すと、脇からオミが口を挟む。
 「ってことは、自分の跡を継がせるつもりとか…?」
 「あー…いや、あの、あくまでも『僕』が『そう思った』だけです。父からも、母からも、彼に対して特には何も言われていません。ただ…父は、彼に結構期待しているみたいですが。気に入っている様ですし。」
 モトザネがオミの考えを訂正すると、オミも自身の考えに固執していたわけではないので素直に聞き入れ、且つ最後の一言を混ぜっ返す事で、慎重に対応すべき話題を続ける考えはないと暗に示す。
 「気に入っているって…エッチな意味で?」

つながり ③

 「オミさん、良かったらコレ使って。抱えているよりマシでしょう?」
 遅れて出てきたミヅキが大きなサイズの紙袋を差し出す。
 「あ、そだ、そだ。お勘定は済ませたんだけど、持ちっぱなしだったから袋詰め忘れてた。」
 タハハとカズキが笑ってごまかす傍らで、オミが差し出された紙袋を有り難く受取りパズルの箱をしまい込む。
 「そう言えば…皆さん、制服でしたよね?あの服装は。」
 女の子が着替えると印象が変わるようで、その変化した印象が刺激となったか、今更のようにモトザネが尋ねる。
 「自分も地元の学校の制服で訪れるべきだったでしょうか?」
 「進学相談?」
 カズキがキョトンとしながら確認を取る。
 「えぇ。華美でなければ良いかと思ったんですが。実際あの場でも制服の方と私服の方が半々でしたが。」
 「平気なんじゃないかしら…?離れた地域の方なんだし。私たちの場合は、学校から『行くなら制服着用』って言われているから。」
 ミヅキの返事の後半部分を、カズキがうんうんと頷いてダメ押しをする。
 「言われたとおりに素直に従ったからと言う事ですか?皆さんが制服らしき服装でらしたのは。」
 嫌味にならないよう気を付けて重ねて尋ねる。
 「えぇ。何しろ、しらばっくれるにも面割れしてますんで…。」
 少々口悪く卑下して応じる。
 「?中学生ですよね?カズキ君は小学生で。顔が知られているって事ですか?高等部に?なぜ?」
 「一貫校ですから。幼稚舎から通っていますし、シンちゃん達が初等部の時に私たちも初等部ですし。」
 「それは…情報がしっかり上がっているだろうと?」
 「『だろう』と言うより『上がっている』です。」
 ミヅキが笑いながら訂正すると、カズキが後を受ける様に補足する。
 「キョウコ姉ぇから始まって…ヒロちゃんが弟で、ヒロちゃんとヤスノリとトシとリョウちゃんが同い年で…リョウちゃんとシンちゃんが兄弟で、シンちゃんとマーちゃんが同い年。家がそこそこ近いのと両親同士で仲が良いっていうのもあるし。リョウちゃんが生まれた後に、お姉ちゃんがポロって生まれてカズキも後を追っかけるみたいにポロって生まれて、お兄ちゃん達に混ざったの。」
 「赤ん坊の頃から一緒にいるもんだから、学校だと当たり前に覚えられちゃってて…誤魔化せないの。」
 ミヅキがエヘヘと笑いながら付け足す。
 「迂闊に妙なことをすると、何故か次の日には高等部の先生までその話しを知ってたりする。」
 カズキが力説すると
 「迂闊なことができないですねぇ…。」
 同情交じりにモトザネが応える。
 「フッフッフ…。人間何事にもなれてしまうものなのですよ。」
 何故か自慢げに胸を張るカズキ。
 「あんたのはただの開き直りでしょうに。」
 『お姉ちゃん』のミヅキが笑いながら混ぜっ返す。

つながり ②

 カズキと店前でウダウダふざけている間に、店主が一枚の伝票を指し示し「見つけたよ」と声をかけてくる。
 「ココだね。パズルと言うより知育玩具系に強い問屋さんだ。小売りをしてくれるかどうかは分からないし、拠点がコチラ寄りだから…ソチラさんの地元でって言うのは難しいんじゃないかなぁ…。」
 店主が同情気味に渋い表情を浮かべ伝えると
 「では、もし仮に小売りをして頂けなかった場合、コチラで仕入れて頂くのは可能でしょうか?」
 少年は予めその可能性を考慮していたようで、素早く応じる。
 「当たり前ですが、手付として幾らか前金をお支払いしますし、地元への配送はコチラで手配しますけど。」
 少年の、年齢からは窺い知れない手慣れた様子に、虚を突かれた店主は一瞬呆けた表情を見せ
 「フム…。まぁ、可能ですけどね。ですが、この手のものに限りませんが…問屋から仕入れると言うのは、最低数量をまとめて買い付けないとならないワケで…。通常自分たちは、数がはけにくい物は同じような商売をしているモン同士で取りまとめて仕入れたりするんで…。単独でってなると結構な数量になりますし、お値段も結構かかりますから…物がモノだけに嵩張るでしょうし、あまりお勧めはできかねますよ?」
 流石に商売をしているだけあってすぐさま気を持ち直し、裏の都合や問題点を提示する。
 「だからと言って…コレを一緒に仕入れた他の商店サンをご紹介して頂いても、ソチラで残っているとも限りませんし…。」
 他所でこのパズルの話しを殆ど耳にしなかった上にこの店でも一点ずつしか置いていない、はけにくい商品は合同で仕入れる、伝票を探し出すのにも苦労した点から、仕入れてから時間が結構経っている、他の店では当の昔に売れている或いは売るのを諦めている、時間が結構経っている以上話しを持って行っても理解を得られるまでに手間がかかる等問題点が浮き上がる。ココに現物が実際にあり、話しも済ませ、仕入先も確認でき、尚且つ問屋から仕入れた伝票があると言う事は、当時この商品を代表で仕入れた店でもあれば、応じてもらえれば話しは早いと考えた少年は、渋る様子の店主に交渉する方を選ぶ。とは言え、実際は代理を立てるワケだが…。
 「シンタニ。頼むよ。ベースは問屋さんからの直接買い取り。断られた場合は、コチラの商店で仕入れて頂いて僕が買い取る。それで…何が問題で、それに対しコチラで対応可能か…ちょっと、話して。子供の自分じゃ…やっぱりマズイみたいだ。」
 シンタニと呼ばれた青年が、軽く会釈しながら進み出る。
 「はい、ですが、必要数量が仕入れの最低数量を大きく下回るような場合はいかがなさいますか?」
 「買う。」
 青年の確認に、即座に答える少年。
 「かしこまりました。では、その線で進めさせていただきます。」
 青年はもう一度会釈し店主へと向き直る。
 その様子を見ていたカズキはおぉと目を瞠り、言い付けた少年へそのまま驚きの目を向ける。
 「地元でしたら、自分が買うって言えば、それで済むんですけどね…。やはり他所では無理ですね。子供は子供って事ですよね。」
 苦笑しながら少年が口にすると、イツキがやはり苦笑しながら
 「そうでしょうねぇ。何度かやり取りがあれば、また…違うんでしょうが。初取引なわけですしね。大人同士でも『警戒』は有って当たり前ですよ。」
 「『初取引』成程、そうですね、ある程度まとまったお金も動くんですしね。実績も無ければ面識もない、子供の僕ではダメで当たり前ですね。」
 少年があっさりと納得し引き下がる。
 「…もしかして、単なる『まとめ買い』のつもりでいらした?」
 カズキが恐る恐る尋ねる。
 「えぇ、まぁ…。」
 少年 ― モトザネが苦笑しながら答えると、それを聞いたカズキが難しい表情を見せる。
 ひと箱だってそこそこのお値段するのに…まとめ買い?仕入れ=まとめ買い?まぁ確かにある意味まとめ買いではあるけれど…。幾らかかると思ってるんだろう…?って言うか、もしかして値段気にしてない?
 カズキが無自覚に自然と問いかけるような目を向けると、察したモトザネが軽く微笑みながら答える。
 「自分の小遣いの範囲で済めばいいんですけど…無理な場合は父にでも泣きついて前借するとか。コレは自分の我儘ですから、足りなかったらやっぱり前借りでしょうね、小遣いの。」
 お小遣いで『仕入れ』が可能。つぅか、お金が足りない可能性をあんまり心配してない。前借りすれば済むと考えている上に前借りも問題なく出来ると考えている。イコール…
 「本物のお金持ちぃ~。なんかスゴイー。」
 半泣きになってイツキにへばり付くカズキ。へばり付かれたイツキは、イヤ…スゴイって言ったよね?俺。今更?と困惑する。

 

つながり ①

 ミヅキ・カズキ姉弟の自宅である雑貨屋前。
 モトザネ一行やイツキ・オミを残し、他の少年達は一旦自宅へ制服を着替えに戻る事に。
 イツキやオミがモトザネ一行と共に店舗前へ行くと、中では既に店主である二人の父親が伝票をひっくり返している。
 「いやぁ、ごめんネ。ちょっと…随分前の仕入れなもんだから、中々出てこなくて。帳簿だと品名を書かないから…社名だけだと特定出来ないし…ねぇ。」
 客商売故か、懐こい話し方をする。どことなくミヅキやカズキの面影を残す優し気な顔立ちの中年男性が、手元の伝票の束を手繰りながら事情説明をする。
 「で、えーと、パズルはねぇ…悪いんだけど、そっちの奥に…上の方なんだけど、三つ積んであるんで…。買う方、えーとオミさん?悪いんだけども…ご自分で取ってもらえるかな。済みませんねぇ、伝票ひっくり返すのに手間取るとは思わなくて…。」
 店主の済まなそうな声と表情に軽く頷き、いそいそと取りに向かおうとするオミを、店主が座る脇部屋(暇な時間に店先を見ながらの休憩用、帳簿付け用の小部屋)の奥からの声が止める。
 「あーーーーっ!オミさんっ。タイガー連れてたらマズイよっ。タイガーの好きなのが…っ!」
 部屋の中を走って移動するのがデフォルトの小学生、カズキが大慌てで顔を出し店先を確認する。
 「あ、やっぱりあった。ルートの途中に…。」
 行儀が悪いと渋い表情をする父親を無視し、理由が分からないモトザネやイツキ・オミの困惑気な表情を脇へ置き、大き目な袋状の布を持って脇部屋から小走りに店の一角へと向かう。
 「ハタキはタイガーが大好きで…ヤル気満々になっちゃうから…。」
 言いながら手に持っていた布(座布団カバー)で、ハタキの布部分を覆い隠す。
 「これでOK。ホントならカズキが取るべきなんだろうけど…届かないから…。オミさんお願い。」
 大事な商品を守りながら、渡すべき商品を自分では下ろせないのを申し訳なさげに伝える。
 タイガーがハタキにヤル気満々になるのも、店側が商品を大切に扱うのも重々承知している一同は、カズキの行動に納得の笑みを浮かべ、本来店側が行うべき商品の上げ下ろしに対し済まなさそうに届かないと自己申告をするカズキに免じ、オミが改めていそいそと取りに向かう。
 イツキに比べたら少し背の低いオミではあっても少々背伸びをすれば危なげなく届くので、目当ての箱三個を手元にし満足の笑みを浮かべる。いつもの場所であるオミの肩に乗っているタイガーは、オミが手を上に伸ばせば、首の付け根辺りから背にかけての位置へ、腕を下ろせば再び定位置へと危なげなく移動し、オミが手にした箱を不思議そうに首を傾げながら覗き込む。
 「これこれ。フフフー。キーちゃん、よろしくー。」
 嬉しそうに笑みを浮かべ、イツキへ支払いは任せたと声をかける。モトザネが興味深げな様子を見せたので、外箱のパッケージを見易いように傾け
 「『春』みたいですね。コレも綺麗だ。」
 声をかけると、モトザネが照れくさそうな表情を見せながらも嬉気に微笑む。
 その様子を見ていたカズキが不思議そうに尋ねる。
 「地元が大好きみたいなのに、コッチの学校受験するの?離れちゃうの寂しくない?」
 「んー…離れるからこそ執着しているのかもしれません。」
 カズキの問いに少し考えて、矛盾しているかのような返事をする。当然の様に理解不能なカズキは、キョトンとしながら首を傾げる。
 「えー…とぉ…離れなければ良いんじゃない?」
 来るなと言って居るかのようにならないよう気を付けながら尋ねると
 「あー…いえ、いつかは離れないとなりませんから。早いうちに他所を知るのは必要ですし、早い方が習慣の違いなどにも合わせ易いでしょうから。」
 「離れないといけないの?決まっちゃってるの?」
 「えぇ。父の跡を継ぐでしょうから、そうなると地元へはあまり帰らないかと思われます。」
 「???」
 増々首を傾げるカズキ。カズキにとっては別居が当たり前の家族と言うのが理解不能なようで、困惑を隠すことができずにいる。
 「父がそうなんですよねぇ。年に数回、短い日数しか帰ってこないんです。」
 モトザネの屈託のない話し振りを見つつ、カズキは『踏み込んではいけない大人の事情』に足を突っ込んだかと緊張の色を見せる。
 「仕事の中心が、地元ではないものですから。どうしてもそういった形になってしまうようで…。自分もそういった形の生活になるんでしょう。」
 「び…びっくりしたぁぁっ!カズキは…カズキは聞いちゃいけないことを訊いちゃったかと…っ!焦ったぁーっ。」
 カズキが少々大げさに安堵を伝えると、モトザネは悪戯っぽい笑顔を浮かべる。
 「やっぱり慌てます?ウチではこの状態が当たり前なものだし、地元の人も親戚もその状態を知っていますから、当たり前すぎるぐらいに当たり前の事として育ったもので、疑問らしい疑問も抱かなかったのですが。他所からいらした方にこの話しをすると、やはり、なんとも複雑な表情をなさるんで…。面白くてつい。」
 モトザネの口にした理由に、新たに呆気にとられるカズキ。 ―― 面白くて云々…。理解するとそこは素早いカズキ。
 「『お坊ちゃま』が…っ。お坊ちゃまが真顔で悪ふざけするんですけどーっ。」
 イツキに訴える。訴えられたイツキも、カズキが『お坊ちゃん』でもなく『坊っちゃん』でもなく『お坊ちゃま』と表現した点から、本気で怒っているわけではないと理解し、クスクス笑いながら宥める様にカズキの頭を軽く叩く。
 「まぁまぁ…落ち着いて…。歴代で使っている冗談だから。」
 「歴代って…冗談にまで歴史と伝統が…。」
 宥められたことで満足しつつも呆気にとられるカズキ。

このブログの各カテゴリ記事は1ヶ月~数ヶ月遅れでお送りしております

採用担当!
仕事しろっ!
仕事っっ!!

新人が二人ほど辞めました
『派遣さん』なんですけどね
一人はとても年齢からは考えられないほど
ちょっとどぉなの?
な方でしたが

30代後半男性で
それかよっ!
な人って…

雇ってんじゃねぇよ
そんなのっ!
見抜けよっ!!


ま、辞めて頂いて大助かりなんですがね
頭数居ると新しい人募集するわけに行かないですからね
定員ってのがありましてね
埋まっちゃってると募集できないんですワ

だから考えようによっては
さっさと辞めていただく方が楽っちゃぁ楽
長居されると無駄に時間を割かないとならないしね
居る以上教育しないとならないでしょ
新人教育って結構莫迦にできない時間必要なのよ
やる気も憶える気もない人に教えるのが
どれ程苦痛か
他に自分の作業あるんだしね

で、今回話題の方は最初から
ヤル気は無いわ憶える気もないワ態度悪いワ
(態度の悪さはあっという間にフロア中に『自分で』周知徹底していました)
(堂々とした態度の悪さってある意味凄いw)
その上、出来ないワ
(出来ないって結果を出しまくってたんだよぉっ!当たり前だが、楽な作業で…)
なのに毎日朝からきちんと来てるワ
(ここは勤めている以上当たり前ですが)

この人に対し、全員の目がとある単語を言っていたワケで



流石にこの方が辞めた後
採用担当(ちょっぴり偉い人)が
「ほんとすまん」
って言ってたんで
相当な苦情が入ったんでしょうねぇw

入るわそりゃ
アレじゃぁ…

もうお一方に関しては
全く分かりません
作業内容が少しも絡まないので…
ただ、お休みが多くて
愛想の無い方ではありました
つーか、あっちが酷すぎて話題を掻っ攫ってたものだから
ノーチェクでしたっ


今度はどんな人が来るんだろ…

むかぁ~し昔の事じゃったぁー… ①

  「ねぇ、あの子どうしたの?なんで一人なの?」
 森よりも深い翠の髪と日の光を映したような金色の瞳をした、年の頃17・8歳ぐらいの整った顔立ちの少年が尋ねる。
 「なんでって言われてもねぇ…。」
 問われた女性、いかにも返答に困ると、額に手を当てスミレ色の瞳に困惑の影を纏わせながら言葉を濁す。
 「?」
 少年は自身の金色の瞳に、相手の女性の悩んでいる姿を映しながら軽く首をかしげる。
 妙なことを聞いただろうか?触れてはいけないことだったか?少年が気にかけ、ふと視線を外すと同時に女性が口を開く。
 「あの子はちょっと…じゃないわね、色々と大変で…。」
 苦笑いを浮かべながら一旦言葉を切り
 「幼い子供の姿をしているけれど、実際はあなたよりずぅーーっと年上よ。ま、あなたも私も、実際の年齢とは違う姿で過ごしているからお互い様ね。」
 すぐに悪戯っぽく微笑みながら続ける。
 「育った環境が特殊だったらしくて、中々…その、心の内を見せてくれないって言うか表してくれないって言うか…表情に表すのが苦手みたいでね。」
 言葉を選びながら話しているようで、初めの方は口ごもりがちではあったが、最後の一言は一気に言葉にする。
 「やっぱり目を引く?他の人達も最初は興味を示すのよね、で、離れていくの。」
 あなたもそう?ならちょっかいを出さないで。言外にそう聞こえるような響きを持たせて、スミレ色の瞳を持つ女性が言う。
 コチラで自身の超能力とやらのコントロール法の指導を受けている間、あれこれと身の回りの世話は当たり前、巧く行えれば褒められ、中々思うようにいかず落ち込んでいれば慰め、時には気分転換にと遠くの街へと素性を隠し連れ出し…等々、親代わりの様に世話を焼いてくれた女性が相手を庇うように言うので、少年は増々興味を感じ、部屋内で一人で過ごす幼児姿の子に視線を戻す。
 年上ねぇ…目は引くよな、見事な銀髪ロングだし瞳はデカくて赤いし、まつ毛ばっさばっさで可愛い顔立ちしてるし…って、えー?随分古めかしい服装だなぁ…随分前に教科書?で見た様な…? ―― 少年の頭の中を過去に学んだアレコレと、今しがた女性が口にした一言が駆け巡る ―― ってぇ事はアレかい、生き残り?生粋の?移民しても征服されても、生活様式を中々変えない頑固な民族って書いてあったわけだけど…例え一人で居ても服装も髪型も変えないのか、スゴイな。って…ん?あ?じゃぁ…あの子って男?男の服装だよな?髪型は…上流階級出身?結ったり編んだりしないで、長く伸ばしてるのが上流ってあったよな、長ければ長いほど偉いとか…。女の方が偉いってトコだから、男は女に気を使って短めにするとかなんとか…。マジで?今、目の前にいるのがソウ?なんかスゲエ…。アレで男なのもスゴイし、こだわりっぷりもなんかスゲー。
 部屋内の一点を、目を真ん丸にし呆けた表情で眺める少年は、数瞬の内に、自身が目にしている対象と自分との間に流れた時間の長さに圧倒される。
 そして気付く。
 年上ってレベルじゃぁ済まなくない?


 

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