(『あの子』の保護は…コチラとしては当たり前の事だけど、勝手に連れて行く訳にいかないよねぇ。近隣に住んでいる人達は嫌がって妨害しそうだけど、親はどうなんだろ。まだ小さいから、父親か母親のどちらかだけでも同行させるべきなんだけど、父親がOKするかな?今じゃ一家の稼ぎ頭だろうしなぁ…。両親ともに連れて行く?オミはこの手の父親キライだけど…そう言う問題じゃァないんだろうしなぁ…。)
オミがつらつらと考えている頃タイガーは…。
小さな身体を低くして草の密林の根元から顔を出し、辺りの様子を伺ってそろ~っと踏み出す。根元に沿って数歩移動し、再び辺りの様子を伺い…としていると脇から蝶が飛んでくる。蝶の姿が視界に入るや否や、それまで辺りに警戒しまくりだったその表情が一瞬であっさり翻される。コソコソっと近寄って、そ~っと手を伸ばし…チャイチャイ、更にチャイ。…届かない。身体を少々伸ばして再びチャイ…チャイ。少し移動して、後ろ足で立ちつつ…チャイチャイ。蝶は知ってか知らずか、届きそうで届かない位置をからかうようにひらひらと舞う。
赤茶けた地面が少々なだらかな坂をゆるゆると形作っている、その麓側。斜面から少々離れた場所に数件、掘っ立て小屋と見紛うばかりの粗末な造りの家が建っている。周囲には細い木が申し訳程度に、又下草も木の生えている周囲に辛うじて生えている。
その様な場所のとある一軒の家の前では、近隣の者達であろうか、粗末な衣装に身を包んだ酷く痩せた人たちが、ある人は拝むような仕草をし別のある人は頼み込むように座り込み、又別のと或る人は家の壁へと縋る様に細い手を伸ばしている。
「今日はもう終いだ。帰っとくれナ。明日、また、な。」
人だかりのある家から出てきた、他の人よりかは幾分か肉付きの良い(とは言え痩せているのは変わらないが)男性が周りに集う人たちへと帰る様に声をかける。
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