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最上部にて…

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同時進行 ㉚

 粗末な家の前。大声が聞こえたらしく、近在の者達が様子を伺い、誘い合うように集まっている。
 家の入り口を囲むように恐る恐る近寄って行くと、突然中から戸が開かれ、その家の主が放り出された様に勢いよく転がり出てくる。
 集まってきていた人たちは、驚き慌てて後ろへと下がり、転がりだされた主の姿を目で追い、何が起こったかと改めて戸口へと顔を向ける。
 「ここいら一帯から引っ越しなさい。そこの崖から2・3日中に水が流れ出す。家から何から水浸しになるし、悪くすると家ごと流されてしまうから。」
 転がされた主の後を追うように戸口から姿を現した、銀色の髪をした男性がそう言うが、話しの内容が突然すぎて理解できず、集まった人達はお互い顔を見合わせてしまう。
 「水場に新たに水を引き入れた。アチラの水位が上がれば、低い位置にあるコチラへと水は染み出してくるだろう。染み出た水が集まれば、いずれ川になる。なけなしの財産を流されたくはないだろう?だから、引っ越しなさい。」
 銀色の髪の男性は、彼にしては珍しく丁寧に説明し安全を確保するよう繰り返し勧めるが、今迄食べ物は疎か飲み水にさえ事欠く生活をしていた近在の者達は、彼の話しを聞いても実感が伴わないせいか理解が及ばず、キョトンとしている。
 オミが話しの通じなさに溜め息を吐くと、近在の者達の中で幾分かオツムの巡りの良い者が、勇気を鼓舞して口を開く。
 「Эж:¥∀∂?」

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同時進行 ㉙

 驚き、慌てて辺りを見回すガラの悪い男達。一気に緊張が走るが、悪態を吐いている様子から想定外の事が起こり動揺している事が露わとなる。
 「なんだ?なにしやがった?」
 「なんでアイツだけ消えてんだ?」
 「まさかアイツ、嵌めたんじゃねぇだろうなぁ?」
 「ドコ行きゃぁがった!」
無理矢理か、騙されたかして集められた男女も何が起こったか分からないまま、周りの男たちの様子から徒ならぬ事態が起きていると察し、一層怯えた様子を見せつつ辺りに注意を払う。このガラの悪い男達とて質の良い存在ではないが、その彼等をも浮足立たせるような、更に質の悪い者達が物陰に隠れていて、今にもその姿を現し、自分達をより一層恐ろしい状況に立たせるのではないかと、不安に駆られながら辺りに目を配る。
 「テレポーターの彼なら、コチラで身柄を拘束したよ。」
 突然上空から声がかかる。
 「で、お前等の身柄も拘束させてもらう。」
 声が聞こえるや否や、ガラの悪い男達の身体が宙に浮かぶ。
 驚き騒ぎ立てる男たちの様子を呆気に取られて眺めていると、先に宙に浮いていた男が目の前にゆっくりと降りてくる。
 「その上で、あなた方は保護させて頂く。詳細をお聞きしたいからね。」
 目の前に降りて来た翠の髪の男が、安心させるように微笑みながらそう声を掛ける。

同時進行 ㉘

 国の中心とされている『水場』から、大きなどよめきが上がる。
 枯れかけた水場に、新たに水が注ぎこまれている。
 注ぎ込む水は、勢いよく噴き出している訳では無いが、水場の岸の比較的高い位置から一か所、細いとはいえ日を照り返しながら白い筋となって、一定の勢いを保ちつつ流れ込んでいる。又、水の流れ込んでいる側の、流出口から離れた場所の壁が複数個所、湿った様に色を変えているのも確認されている。水の流れとしては目に見えなくとも、確実に水が滲み出ている証であろう。
 期待と自信を溢れさせながらこの場に居た政府関係者達は、目の前で起きている現象に対し、期待通りにやってくれたと純粋に喜びを見せる者、何故か自慢げな表情を見せる者、安堵の表情を見せる者とそれぞれではあるが、不満げな様子を見せる者は居らず、皆一様に喜んでいるのが分かる。
 『水が流れ込んでいる』この事実が、水場周りに集まりつつも怪訝そうな様子を見せていた住民の心境を変えたようで、小さな囁きがが徐々に大きくざわめきとなり、どよめきとなり…。
 怪訝そうにしていた者も期待に胸膨らませていた者も、オミへと注意を向けて居らず、又、オミ自身も自分に注意が向かない様制御しつつ、こっそりとテレポで移動する。

 「これから、あなた方家族は、我々の、保護下に入る。勝手な行動は、一切、認めない。特に、貴方。」
 一言一言区切りながら宣言し、最後の部分で父親を睨みつけ後を続ける。
 「貴方の行動は、今から厳しく制限をかける。好きに動いたりしない事だな。」
あばら家と表現しても良い様な粗末な家の中。床に散らばる食器類の上、僅かに浮かぶようにオミが姿を見せ、この家の住人を一旦支配する。
 口にしている言葉は、昨夜の内にイツキが頭に叩き込んだこの国の言語を、堂々とカンニングしているにすぎないが…。
Ξ えー…と?それからなんだっけ?キーちゃん Ξ
 オミが困った様に尋ねると、苦笑しながらも呆れた様子が伝わってくる。
Ξ カンニングぐらい、自力でやんなさいヨ… Ξ


同時進行 ㉗

 Ξ ここは預かる。これ以降の勝手な行動は一切認めない Ξ
 頭の中に男性の声が聞こえる。
 と、次の瞬間大きな物音が辺りに響き渡る。
 母親が驚いて音のした方へ振り返ると、夫である男性が、彼女たちのいる側とは真逆の壁に背を預ける様にして、床に転がっている姿が見える。
母親が驚いて目を瞠ると同時に、床に転がっていたはずの夫の姿が横殴りに吹っ飛んで視界から消える。彼女が『消えた』と認識するより早く、家の外から重たいものが転がる音が続けて聞こえ、彼女は驚きつつも息子を庇おうと、反射的に抱きかかえるように覆いかぶさる。と、その動きに合わせたかの様に、外から男のうめき声が聞こえてくる。
 

 打ち捨てられたと思しき小屋の傍ら、寄り添うように集まる複数の男女。その多くは酷く痩せていて、身に着けている物も痛みが激しい。他には痩せた男女を取り囲むようにガラの悪そうな男性が数人と、荒地と同じような色をした髪の男性が立っている。
 つい今しがた『さっさと進もう』と声をかけられ、身を取り添わせる様に集ったが、全く動く気配が感じられない。酷く痩せた男女は一体どこへ向かえばいいのか、或いは何か起きるのか、ワケが分からずにお互い顔を見合わせている。
 彼らと共に居て見張りの立場であるガラの悪い男達も、今迄との進行の違いに気付き皆々怪訝そうな表情をして、やはりお互い顔を見合わせている。そんな中一人の男が突然声を上げる。
 「あ、アイツが居ねえっ!」

同時進行 ㉖

「あ…あ、いやいやイヤ嫌…。怒らせるつもりはねぇんだ。ただ、その…なんつゅーか、今迄はヨ…詰所に居るノ以外の超能力なんて居なかったろ?だから…そのぉ…ちょっと、心配になってよ。いつもと違うもんだから…。すまねぇな、気ぃ悪くしないでくれよ。」
 男が情けなさそうな表情を見せると、超能力の男性は承知したと軽く頷いて応え
 「心配は…そうですね、しても仕方ないかと。非合法行為に手を染めているんですし、『警戒』はしてもし過ぎと言うことは無いでしょう。」
 心配性らしい男性の『仲間内での立場』を慮るように理解を示す。
 「ですが。少なくとも『今は』心配しなくても平気でしょう。自分が合流してから僅かな間とはいえ、これと言ってなにも動きがありませんから。」
 安心させる様に言葉をつづけ
 「では、さっさと進みましょう。」
 連れてきた男女を一か所に集め、男達もその近くに集まるよう促す。


 掴みかかろうとした父親は、その態勢のまま動きを止めてしまう。息子を庇うように覆いかぶさった母親は、暫く経っても何の衝撃も受けないどころか物音ひとつしないのに気づき怪訝そうに自身の夫の姿を見やる。
 「???」
 掴みかかろうとした状態のまま固まった様に動かずにいる彼の姿を目にしても、すぐには理解できず、夫の不思議そうな表情に気付き、彼の本意では無いんだと察し、何か良くは分からないが、自分でも夫本人でもない他者のチカラなり意思なりが働いていると理解する。真っ先に考えられるのは、不思議な力を有する自身の息子であるが、振り返る様に彼を見ると、息子自身も目を見開き驚きの様を見せている。

同時進行 ㉕

「バカがっ!『出来なくなりました。ゴメンナサイ』で済むと思ってるのかっ!この先どうやって食っていくつもりだ?あぁ!?大体、お前がソイツを甘やかすから、そんな寝惚けたことを言い出すんだっ!こっちの苦労も考えろっ!!」
 怒りに満ちた目で睨め付ける。が、この夫、特にコレと言って何かをして家族を養っている訳でもないので、言われた方としてもどうしたって不満が表情に現れる。
 (あなた…何もしていないじゃない。偉そうな態度で、頼ってきた人達をふるいに掛けているだけで…。)
 嫁の怯えたような瞳に、微かに表れた非難するかの様な色。その責めるような目に気付いた夫は、今にも殴り掛からんと掴みかかる。

 「待たせたね。じゃぁさっさと行きましょうか。」
 先日オミ達を迎えに出ていた詰所勤務の男性が、崩れかけた小屋の傍らに集っていた人相・風体の悪い男達に朗らかに声をかける。
 「「おぅ。」」
 嬉し気に応える男達。嬉しいのは待機から解放されるからか、それとも直に金を手にできるからか。
 「あー…でもよぉ平気なのか?来てるんだろ?超能力者。バレねぇか?」
 先程と同じ男が再び警戒心を顕わにして尋ねる。
 「自分も超能力者です。」
 『も』を強調して答える。
 「あぁ、いや、あんたの力を疑っている訳じゃァねぇんだ…。ただよ、ナンカに気付いて、探り入れに来たんじゃァねぇだろうな?ってよ、ちょっと気になって…。その…大人数動かすだろ?超能力使ったら気付かれねぇかって。」
 バツが悪そうな表情をし機嫌を取る様に口にする。
 「ですが、自分は今、『その』超能力を使ってコチラへ来たんですよ?何か怪しい動きでもありましたか?」
 なにをそんなに心配しているんだ、と落ち着かせると同時に、抜けたきゃ抜ければいい、と言外に漂わせプレッシャーをかける。


同時進行 ㉔

 男達はお互い顔見知りらしく、親し気に、やや乱暴な挨拶を交わす。
 「真っ昼間にヤろうたぁ…。」
 後から来た方の男の一人が意味ありげに言うと
 「図太いやな。」
 ニヤニヤと笑いながら応える。
 「街でナンかヤってんだろ?アッチに注意が向いて浮足立つだろうからってよ、ホントかね?」
 「ヤってんのはホントだろ。人が集まってたぞ。」
 「超能力者がどーの、水がどーの、ってさ。」
 先に着いた方、後から来た方それぞれが知っている事を話し出す。
 「超能力者?ヤベェんじゃねぇのか?」
 中の一人が眉間に皺を寄せながら警戒するように口にすると
 「高々水を引くのに、二人掛かりじゃなきゃできないノータリンだとさ。」
 別の一人がおどける様に答え、安心させようと笑いかけると、その場に居た男達も大きな声を出して笑い合い、怯えた表情をしていた男女はより一層心細げな様子を見せる。
 
 「なにをふざけた事を言ってるんだっ!」
 響き渡る怒声。床に散らばる粗末な食器。
 朝食を済ませた後、妻から息子の状態を聞いた父親は、一気に頭に血が上った様に大声を張り上げ、自身の嫁や息子を威嚇する。
 「ふざけた事じゃ無く…。」
 「だまれっ!」
 説明を試みる妻の声を一言で遮ると同時に、振り上げた拳で力一杯テーブルを殴る。振動で音を立てる僅かな食器類。
 夫は怒りで目を血走らせ
 「チカラが使えないってどういう事だっ!?なにが『一旦預かる』だぁっ!?寝言をほざくなっ!」
 大声を張り上げ、あらん限りの悪態をつく。
 「あ…あなた、落ち着いて…。」
 

同時進行 ㉓

 朝、息子から思いもよらぬ事態を報告された母親は、その後夫が起きだしてからこの時間まで生きた心地もせずに過ごしている。
 結局、夫の怒りの矛先を他へ向ける術は思い付かず、しかし誤魔化しようのない事柄を如何に打ち明けるか頭の中ではその事が駆け巡るが、いい案が思い浮かばないまま朝餉の時間を迎えてしまう。
 怒らせない様に、怒っても荒れ狂ったりしない様に…出来れば殴られたりしない様に、無理でもせめて息子を殴らないで貰えたら…。時間が経つにつれ、母親の心臓は早鐘を打つように鼓動が増す。

 この小国の外縁部。周りには特にこれといった物も無く赤茶けた大地の中、崩れかけ打ち捨てられたらしい小屋状の建物がポツポツと建っている事で、辛うじて国内であろうと判別できる。
 その打ち捨てられたと思しき小屋付近を、数人の人相風体の悪い男と十数人の怯えた表情をした男女が歩いている。
 「よぉーし。この辺で一旦止まれぇーっ。」
 人相の悪い男達の中の一人が大声で指示を出すと、怯えた表情をした男女は尚一層身を竦ませる様にして足を止める。
 「ここで合流待ちだぁっ。いいか?大人しくしてろよ。」
 騒ぐとぶん殴るぞっ。と言外に匂わせ威嚇する。
 尤も大して待つ間もなく、小屋を挟んだ反対側から同じような集団が近寄ってくる。

同時進行 ㉒

 イツキが水場周りに集まった人達の様子に気を配っていると、一人の男性が時間を気にする素振りを見せる。
 先日、省庁街入り口の門の前で分かれた詰所勤務の男性が、時間を気にかけながら辺りの様子に目を配っているのがイツキの注意を引く。
 Ξ 動くタイミングを計ってるぞ。そっちはどんな様子だ?まだ時間が必要か? Ξ
 Ξ 後チョットだから…。やっぱり今度は騒ぎに乗じてヤるみたい? Ξ
 Ξ そのつもりらしいな。ま、水が湧けば辺りの注意はそちらへ向くからな Ξ
 Ξ ママの方は?こっちの動きが早すぎてもマズイんでしょ? Ξ
 Ξ スタンバってるって。お前のソレに合わせて動かすってさ Ξ
 Ξ 『別件』は?まだ時間的に平気そう? Ξ
 Ξ 母親が上手い事時間を稼いでるよ、朝飯を確保する為だろうけど。まぁ遅かれ早かれ怒り出すんだろうけどな Ξ
 Ξ そう‥。ん、良しOK。片方は高い位置へ、で、内緒のアッチは見えない位置に引っ張ったよ。噴き出させるから、タイミング合わせて『別件』の方を交代しよう Ξ
 Ξ OK。じゃ、3から行くから1の『チ』で噴き出させな。ママの方も合わせるってよ Ξ
 Ξ はーい Ξ
 Ξ じゃぁ…3…2… Ξ

同時進行 ㉑

 ―― いっそこのまま起きてこないでくれれば…。
 一瞬、心の中にヤミが芽生えるが、すぐさま否定する。
 大体において父権が強く男性社会であるこの国では、頼る相手の無い女や子供程軽く扱われる存在はいないのだから、父親を失った少年と夫を失った母親の二人では生きていくことが今以上に困難となる。例えその男が怠け者の乱暴者であろうとも、いないよりはマシである。
 では、この国を離れ他国へ逃れたらと考えるも、この国は荒地のど真ん中かと思われるような位置にある上、更に他国からこの国へと、(実際は枯れかけた)水場のうわさを聞き付けた人が流れてくるような国であれば、他国へ逃げる事等は簡単には選べない。
 ―― どうするか。
 実家を頼るか?ココと同じか一層貧しい暮らしをしているであろう実家を頼る?いや、無理だろう。必死になって帰っても、食い扶持が増えたと迷惑そうに追い出されるのが関の山だ。ココとて、少年の不思議な力を頼りとする近隣の住民が持ち寄る食物で、辛うじて飢えを凌いでいると言うのに…ココよりも稼ぐ当てのない実家では。
 少年の神妙な話し振りから、その話しの内容に一切の疑いを差し挟まず受け止めた母親は、乱暴者の夫が目覚めて事の次第を耳にした際、必ず噴き出すであろう怒りを如何に宥めるかと思い悩む。

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