自分たちで考えるのは早々に諦め、多分きっと『標準的』家庭で生活しているに違いないと思われるとある少年に、通信手段が限られるため事情を記した手紙にて問い合わせる。と、早速返事が届く。
助かったとばかりに喜んで封を切ると、少々子供らしさが残るとはいえ普段ジッとしていられない子の字とは思えない、伸びやかな文字が目に入る。宿題に励んでいた姿を見るとは無しに見ていたとはいえ、ノートを埋める文字の一つ一つを事細かに見てはいなかったので、彼がこのような伸びやかな字を書くとは思ってもいなかった二人は(失礼にも)思わず感心する。
「へぇ、丁寧な字を書くねぇ。」
「読みやすい字だねぇ。」
二人共…本っ当ーに失礼な感想を漏らす。
内容は…一日の生活の具体例が学校のある日と休みの日。学校や家庭でのイベントの種類や内容。イベントとは言い難いが、季節による遊行等、アドバイスを受けながらであろうか中々に分かりやすく書かれている。
「へぇー。じゃぁ、泊まりに来た時に山やら川やら海やらに連れて行ったのは『当ってた』って事ね。」
リクエストに応えただけだけどねー。
オミが感想を述べると、イツキが少々悩みながら口を開く。
「あの子の誕生日ってイツだ?」
預かる期間に誕生日が合致するのならパーティーをすべきだろうと、大慌てで『総本部』へと確認を取るイツキ。
帰ってきた返事は「雨季が終わったと思われる数日後」。
だから、ソレって『いつ』?
疑問の溶けないイツキは、現地へ派遣されている担当に問い合わせる。
「大体…総本部暦で4月の終わりから5月の頭が雨季の終わり。」
だから『イツ』なんだよっ!
「日にちの概念を必要としないで生きてきた人に『イツ』なんて求めたって無理でしょー。」
イライラを隠す事無く態度に表すイツキに、オミがボソッと呟く。
的確に指摘されウッと詰まるイツキに意味ありげに微笑みかけるオミ。そんなオミの表情に思い当たる節のあるイツキは、ゆっくりと一つ深い息を吐き
「そうだな…。該当しそうな日を両親や本人と話し合わせて『誕生日』にする様、掛け合うか。で、決まったら連絡を貰う、と。性格と病歴と…学習深度も付けて貰うか…。」
自分に言い聞かせるように呟き、総本部の担当者へと依頼書の作成に取り掛かる。
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