イツキやオミが受け入れ態勢を整えるべく、普段自分達は1階部分をメインに使っているのだからと、預かりっ子の部屋として1階の空室を宛がう事とし、室内を掃除し仕舞い込んでいたベッド用マットレスを引っ張り出し虫干しを繰り返しシャワーやトイレの状態を確認し小振りの書き物机をこれまた引っ張り出して磨き上げ…etc…etc…。
普段ポヘーっと気ままに過ごしているオミまでもが、イツキの指示の下独楽鼠の様に働いている。また、日中過ごしているリビングに小さな本棚を設置し、未だ読み書きに不便のある少年用にと、幼い子向けの絵本であれば、絵で情景を表し簡易な言葉で表現されているので、楽しみながら言葉を覚えられるだろうと、物語を多めに、動物・昆虫・魚・身近な道具類などが書き記された図鑑等を並べ立て、ついでに、真似て絵をかきたがる可能性を考慮し画用紙やクレパス等も、気軽に使える様無造作に置いておく。
「…後…なんかする事あったっけ…?」
普段はここまで細々と動き回る事の無いオミが、疲れ果てた様を見せ尋ねる。
「んー…タイガーが本とかを引っ掻いたりしない様に言い聞かせるとか?」
「タイガーはそんな事しませんっ。読んでるのを邪魔したりはあるけど。」
自分が可愛がっているペットを侮辱されたと、不機嫌そうに応える。
「あー…泊まるんだから…着替え。」
こちらもオミ程では無いが疲れた表情をしつつ、ボーっとした頭で無理矢理引っ張り出した『支度』を口にする。
「幾つかは持って来るんでしょ?だったら、新しいのは買いに連れて出れば?」
幾分持ち直したオミが(面倒臭がっているだけかもしれないが)提案する。
「あー…そーねーぇ。好みがあるだろうしねー。サイズも分からないしねー。本人居た方が良いねー。」
ダルそうに投げやりに応えるイツキ。
「あーもぅ考えつかねぇ。埃落とすのに風呂入ってくるわ。お前も後で入れよ、埃臭いぞ、きっと。」
腰を上げながら声を掛けてくるイツキへとオミも
「んー…入れ替わりで入るー…。」
面倒臭さを声音にも表して応える。
湯船に湯を張る音が暫くの間微かに聞こえていたが、それも直に止まり、イツキが部屋内を移動している事を示すドアの開け閉めの音が聞こえ……。
「あーっ!オミッ!タオル!タオルが無いっ!」
脱衣室からイツキの声が響く。
疲れのせいでタオルも持たずに風呂へ向かったのかとオミが慌てて身を起こしたところへ、更にイツキの声が響いてくる。
「子供が喜んで使いそうなタオルが一つもないっ!目に沁みないシャンプー!やたらと泡立ちの良いボディソープもっっ!」
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