ひと段落が付いたところでイツキに勧められ、オミとルーヴは籠と収穫鋏を持ち散歩へ出る。
家の周りをグルッと一回りした後は、少々高い場所に作ったイチゴ畑へと足を向け…。
「イチゴの最盛期はもうすぐなんだけど…オミは農家サンじゃないから、採れたてを食べられたら良いよねーってカンジで始めたんで、適当なんだよねぇ。実はちゃんと付いてるから、熟してたら持って帰ろうね。」
オミが話しかけると、ルーヴは不思議そうな顔をして尋ねる。
「農家サンじゃないのに、果物とか育てるんですか?」
「野菜も育ててるよー。…でも、育ててるって言うか…育ってるって言うか…勝手に育ったと言うか…なんだけどね。」
オミの答えに首をかしげるルーヴ。
(勝手に育つモノだっけ?)
オミは少年の不思議そうな表情を目にし、慌てて言い繕う。
「あ…と、えーと…オミね、って言うかオミの血筋はね、植物育てるのに向いててね、時々、見て回ってちょこっと手入れしてってしていると、スクスク育ってもらえるの。」
ほへーと、分かっているのかいないのか感心した表情でオミを見上げるルーヴ。そのルーヴの表情を見て、一般的な説明もしなければ間違って理解してしまうかもしれない、とオミはやや真面目な表情を見せ
「えー…と、植物自体もね、自分が育つのに適した場所じゃ無かったら、普通は育たないからね。寒い所が好きな植物を、暖かい所で育てようとしたって育たないからね。オミがやっても、一旦は育っても、一日や二日で枯れたりもするからね。」
当たり前過ぎるぐらい当たり前の事を、ゆっくりと、少年の表情の変化を追いながら話して聞かせる。少年はと言うと、オミの話しを聞きながら、説明されている状況を思い描き
「寒い所が好きなノは、暖かい所を『暑い』って感じちゃうの?『茹っちゃうー』ってクターってなっちゃう?」
ジェスチャーを交えつつ、たどたどしい話し方で尋ねる。
「そうそう。逆に、暖かい所が好きな植物を寒い所に植えても…やっぱり枯れちゃう。」
「『寒いっ、凍っちゃう』?」
「うん。そう。」
少年のジェスチャー付きの問いに、『そのとおり、合ってるよ』と笑顔で肯定する。
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