ルーヴがイツキやオミ達の家へ訪れ、生活を共にするようになって20日程経っただろうか。オミと共に向日葵を育て、畑で収穫や手入れを手伝い、イツキに教わりながら家事全般を手伝ったり、合間合間の宿題に頭を悩ませ、タイガーと遊び…と、取り敢えず予め組んでいた予定を(結果的に)こなしながら過ごしていた。
そんなある日、オミは夕日に焼ける空を見つめながらイツキがふと呟いた言葉を耳にする。何かと思いチラリと横目で窺うと、なにやら少々気にかけている様子を見せる。
「どーしたの?」
ルーヴが寝た後の打ち合わせタイムに、オミが不思議そうに尋ねる。危惧していたルーヴのホームシックも軽く済み、コチラでの生活に慣れてきた事でアレやらコレやら沸き起こる種々雑多な疑問質問にも辛うじて対応し、苦手としていた書き取りや計算もある程度の速度で進められるようになっているにも関わらず、イツキが空の或る1点を見つめ眉間に皺を寄せ軽いため息をついていれば…疑問を感じて当たり前であろう。
「あのな…。」
言葉を選ぶように一旦間を空け
「ルーヴ、全然水遊びしていないだろ?此処には川も…湖って言うか池も、滝もあるし周りは全て海なのに。」
続けられた話しの内容に合点のいかないオミ。大体彼には『水遊び』なる選択肢等持ち合わせがないのだから、ある意味当たり前ではある。
「えー…と?『水遊びをさせなさい』って…言いたい?」
イツキの顔色を見る様に尋ねる…が、色良い反応は得られず。
「『浅瀬でチャプチャプ』で良かったら…。」
同じく、反応なし。
「波打ち際で…。」
全く変わらず。
「どーしろってのよ?」
逆切れ同然のオミに、イツキが重ねて言葉を選びながら応える。
「あの位の年の子が、川岸や波打ち際で大人しく遊んでいられるだろうか?」
オミに話しかけながら、自分でも考えを纏める様に途切れ途切れに言葉を続ける。
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