イツキやオミが、各注意点を呆気にとられながら聞いていると、カズキが少々頬を膨らませながら不貞腐れた様に言う。
「カズキなんて、小さい頃に…滑り台前は道路だと思えって教えられたよ。」
「道路?」
軽く興奮状態のル―ヴを落ち着かせつつ、教えられた事をキチンと覚えていた点を褒めていたオミが思わず聞き返す。
「うん、道路。滑り台の上に居る人は、台車とかで荷物を運んでいる大人の男性…お父さんとかが、荷物を一杯乗せた台車を力一杯押して走っているって思えって。」
「なぁるほどぉ。うかうかと歩いていたら、はね飛ばされるぞって事か。」
イツキが納得したように言うと、カズキが軽く頷いて肯定し
「ぶつかったら痛いなんてモンじゃ済まないぞ。病院行きになっちゃうかもしれないぞぉっ?って。怪我して病院行きになったら、注射イッパイだぞー?って脅かされた。だから気を付けなさいねって意味なんだけど。」
少々愚痴る。
「どうしても通らないとならない時は、上にいるお兄ちゃんやお姉ちゃんを見ながら、手を挙げて『通るーっ』って大きい声で言いなさいって。『早く行け行け』ってしてくれる筈だから、そうしたら手を挙げたまま急いで通るんだよって。」
今はそこまでする子もあんまり居ないみたいだけどねー。と、続けながら再び飲み物に口をつける。
「時々、飛び出して来ちゃう子とかいない?」
イツキが何かを思い出したような雰囲気で楽し気に尋ねる。
「いるいる。滑りだしちゃってから出て来ちゃう子。アレって冷や汗モンだよぉ。避けられそうにない時は抱きかかえて、止まるまでダッコしてたり、抱えると同時に寝っ転がって、自分を下にして…小さい子をお腹に乗っけて、止まるまで耐えるとかね。『退いてー』って声かけたって、小さい子だからビックリしちゃって動けなくなるみたいでさ…。」
以前は下に居て、他所の子にも気を配ってくれる小母さんとか、結構居たんだけどねー。
カズキの応えを聞きながら、何かしら記憶でも刺激されたかイツキがクスクスと笑いながら
「でも…カズキ君、そんなに色々覚えているなら安心だ。面倒だろうけど…度々注意しながら遊んでやって。繰り返していれば、その内ちゃんと自分で出来るようになるから。」
改めてカズキに頼む。
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